第63話 ポーション精製
「私達は王都まで行かなくてはならないんだ、ここには食事の為に寄っただけでゆっくりはしていられないから期待に応えられるかどうかわからないよ」
冒険者の1人に話しかけられたガブリエルは意外にもあっさりした対応をした。
ガブリエルに話しかけたという事はさっき魔法で水を出したところを見たからだと思う、何か魔法が必要の困り事だろうか?
「ああ、あんたさっき魔法使ってただろ? 仲間が倒れちまって動かせずに困っていたんだ、ポーションも持っていなくて…治癒魔法が使えるなら治してやってくれないか? 報酬はちゃんと払うから!」
「ガブリエル、治癒魔法って病気にも使えるものなの?」
「いや、病気によっては治癒魔法で悪化するものもあるんだ。賢者サブローが言うには病原菌まで元気にしてしまうからだろうと言っていたよ。それ以前に残念ながら私は治癒魔法の適性を持っていないんだ」
「そんな…」
声を掛けて来た冒険者が絶望的な顔をした、どうやら怪我ではなく病気で倒れた様だ。
「材料さえあればすぐポーションは作れるんだけどねぇ…」
「普通の薬草はあるが病気用の薬草が…」
冒険者は悔しそうにギュッと拳を握った。
ん? もしかして必要なポーションって疫病の発生を疑われた時と同じ物?
あの後ポーションが間に合ったのかすぐにレデュ草の需要が無くなったから余分に採取した分が余ってたりする、皆も気付いたのか私に視線を向けていた。
「あの、レデュ草だったら私持ってるよ?」
「「えっ!?」」
ガブリエルと冒険者が驚いてこちらを見た、鞄から出すフリでストレージからレデュ草をひと束取り出して2人に見せる。
あとはポーションが効くかどうかだね。
「じゃあポーションが効く症状なのか確認してくるよ」
「すまないな、助かる。昨日いきなり力が入らないと言って倒れたんだ」
ガブリエルが立ち上がると冒険者が礼を言った、今後の為に私も見学させて貰おうっと。
「私もついてっていい? ガブリエルの頼りになるとこ見た「もちろんだよ! さぁ、一緒に行こう」
喰い気味に答えるガブリエルに冒険者がちょっと引いている、頼りになるところを見せたら友人に近付くと思ってるのかもしれない。
利害関係が無いからこそ友人と呼ぶという事をまだ理解していない様だ、これまで友人が居なかった弊害なのかと思うと涙が出そうになるよ。
テントの中には寝込んでいる意識の無い男性と看病している女性が居た、男性の肌には軽い火傷をした様に斑にほんのり赤く染まっている。
ガブリエルはひと目で何の病気かわかった様だ。
「コレはこの前流行った疫病と同じだね、ここに来るまでにレデュ草の依頼を見たんじゃないかな?」
「あ…っ、そういえば3日前寄った町に1件だけ採取依頼が出ていたわ」
看病していた女性が少し考えてから思い出した様だ。
「きっとその町で感染したんだね、ここで会って良かったかもしれない、トレラーガ方面は流行る前に治まってるから今度こそ疫病を拡げるところだったよ。空のポーション瓶は持ってるかい?」
「あ、ああ、3本だけなら…」
「ん、『
「これを使ってくれ」
「はい、コレでいい?」
「うん、『
ガブリエルは水球を創り出すと、手際良く薬草の葉っぱの部分を毟って水球に放り込んで呪文を唱えた。
呪文を唱えた途端に水球の中を漂っていた薬草から青緑の液体が溶け出す様に分離してポーション瓶に吸い込まれていった。
「「「凄い…」」ポーションってこうやって作るんだね」
「ふふふ、今の人族が作るなら専用の魔導具を使わないと出来ないけどね。さぁ、1本はそこの病人に、君達も移ってるかもしれないから予防にひと口ずつ飲んでおくと良いよ」
ポーションを作るところなんて初めて見たから感心して言うと、ドヤ顔で冒険者達にポーション瓶を差し出した。
ポーションを飲ませるとあっという間に斑だった肌は元通りになり、荒かった呼吸も落ち着いている。
「良かった…! ありがとう!! 何てお礼を言ったらいいか…!」
「本当だよ、あと1日遅ければ死んでいたかもしれないからね。斑だった肌が全身赤く染まったら手遅れなんだよ、この疫病を知らなかったって事は他所の国から来たんだろう? 他国の者には免疫が全く無いから早く死んでしまうんだ。彼は夕方には普通に動けるだろうけど、移動は明日からにした方がいいだろうね」
ポロポロと泣きながらお礼を言う女性冒険者はガブリエルの言葉に顔色を変えた。
このポーションの相場は1本銀貨1枚らしいが、ガブリエルは銀貨5枚を受け取っていた、引き留めたお詫び込みらしい。
「「おまたせ」」
「お、その顔は無事に解決したみてぇだな」
「うん、前に出た疫病と同じだったみたい」
説明しつつ食事の片付けをして出発準備を済ませた。
ポーションを精製してる時に鑑定して見てたけど、どうやらレデュ草というのは抗生物質的な役割をするらしい。
「アイル、この報酬は君にあげるよ。レデュ草はアイルが出したし、いつも美味しい食事を用意してくれてるからその足しにして」
「いいの? じゃあ次の大きな街で奮発して美味しいもの食べようね!」
「ふふ、期待しておくよ。それじゃあ出発しようか」
ガブリエルからさっきの銀貨5枚を受け取り出発した。
余談だがストレージに死蔵していたレデュ草の殆どはこの野営地の先にある村や町で売れ、凄く感謝されて色んな店でサービスしてもらえたので屋台で沢山買ってしまった。
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