第10話 見ちゃった
結局あの後、宴会状態は深夜まで続き、お風呂に入りたかったが皆が酔っ払ってまともに歩けなかったせいで設備の説明してもらえないし場所もよくわからず、何とかトイレと客間の位置を受け答えだけは比較的まともだったリカルドから聞き出して先に
寝る前にお風呂に入りたかった私は、洗浄の魔法を使う時にお風呂上がりをイメージしてたら出来てしまった。
何が出来てしまったかというと洗浄魔法が出来るのはわかっていた、掛けた後が私の愛用ボディソープやシャンプーとトリートメントを使った後の状態だったのだ。
魔法の知識でイメージが大切なのはわかる、だけど香りまで再現出来てる謎現象の解明が出来なかった。
もしかしたら元々出来る事だったけど香り付きの洗浄魔法を使おうとした人が居なかったからそれに関する知識が存在しないのかもしれない。
森歩きと大量の食事作りで疲れた事もあって、さっぱりしたとたん睡魔に襲われた。
そして今、ドキドキしながらリビングのドアを開けて膝から崩れ落ちたところである。
一体いつまで飲んでいたのか、死屍累々ってこういう事かなって思う様な有り様。
絨毯の上で服を脱いで獣化したまま寝ているホセ、ソファの背凭れに身体を預けて眠っているエリアス、そのエリアスの膝枕で寝ているビビアナ、グラスを握ったままテーブルに突っ伏しているリカルド。
何とか心を立て直し、運べる食器をキッチンに運び込んで(リカルドのグラスは離さなかったので諦めた)『
食器棚が無かったので重ねて布を被せておいただけだが。
「やっぱり二日酔いの朝は味噌汁がいいよね! あの様子じゃ食べられるか怪しいし、キャベツと卵の味噌汁とご飯だけにして~、食欲ありそうなら追加で作ろう、うん」
お米を研いで水に浸している間に味噌汁を後は卵を回し入れるだけの状態まで作っておいた。
味噌汁の出汁は鰹節は無かったけど、魚と昆布を粉末にした出汁の素があったのでそれを使っている。
浸す時間がちょっと短いけどコンロでお鍋を使ってご飯を炊き始める、鍋でご飯を炊くなんて家庭科の授業以来だから上手く出来るか心配だ。
だけどいつまでいるか分からないのに魔導炊飯器買ってなんて言えないしなぁ…。
というか、毎日1人であの4人の食事を作るのはキツイ!
ぶっちゃけ宿屋に泊まった方が凄く楽だと思う、食費とか私の分も納めるから材料切るだけでも手伝って貰わないと大変過ぎて無理って言おう。
昨夜はリビングでの酒盛りになったが、今朝はキッチンの横の食堂にお箸を運んだ。
どうやら買って来た物を食べる事はあったらしく、客間の数だけ余分に椅子がある大きいテーブルだ。
リビングと食堂を繋ぐドアを開けてから味噌汁を完成させ、ご飯が炊ける頃には1人、また1人と匂いに釣られて起きて来た。
「おはよう、軽い朝食作ったから顔洗ったら食べてね」
そのままテーブルに着こうとしていたビビアナとエリアスに釘を刺すと、ノロノロとした動きで食堂から出て行った。
そして足元には獣化したまま尻尾を振るホセが、さては顔洗いに行くのが面倒だからこのまま食べたいとおねだりしてると見た。
「ダメよ、ホセ。ちゃんと顔洗ってきてからね」
「ちぇ~、わかったよ…」
ドアを指差してキッパリ言うと、人型に戻って食堂から出て行った。
「バカバカバカッ!! 何で服着てないのに人型になるのよ!!」
み、見てしまった、彫刻の様に引き締まった筋肉質な身体と弟だったら二度見しそうな立派なイチモツを…。
いや、処女でもないから初めて見た訳じゃないしそれなりに耐性はあると思うけど、………今まで見た誰よりも立派でした。
廊下の方からビビアナがホセを叱る声が聞こえた、もしかして常習犯なのだろうか。
動揺して赤くなった顔を手で扇ぎながらご飯をよそってテーブルに並べる頃にはエリアスに引き摺られたリカルドも姿を見せた。
「アイル、ホセが変なモノ見せてごめんなさいね。獣化してる時には服が要らないせいで寒くない時期はたまにやらかすのよ。それでもチビの頃に比べたら頻度は減ったんだけどね…」
共に育ったせいか出来の悪い弟をフォローする様なビビアナに思わず笑ってしまった、赤い顔で説得力は無いだろうけど気にしてないと答えて食事を勧めた。
「うめぇ…、身体に染み渡るみてぇだ…」
「ああ、二日酔いに味噌汁ってこんなに美味いんだな…」
ホセとリカルドが味噌汁を飲んで噛み締める様に感想を漏らし、エリアスとビビアナも咀嚼しながら同意する様に頷いた。
私は昨日お酒を飲んでいないけど、その気持ちはわかる。
二日酔いの頭痛を抱える4人は追加のおかずは要らないと言って各自部屋へと戻って行った、朝食の片付けが終わったら建前用の暗器を職人街へ行って注文してこよう。
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