第4話 序章・国で一番お姉さまに至るまでの色々 その4
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姉上様、お心遣いをありがとうございます。
試験後の自由登校を勝ち取りましたので、こうしてお手紙を差し上げることの幸いをかみしめております。
陣中見舞いに頂いたお菓子は、皆で分けました。誰の『ご用心』も反応しなかったので、僕は胸を張って姉上様を自慢できます。僕と姉上様は仲良しですから。
学年が上がるに従って、つける指輪の数が増えて困るとみんな嘆いています。印章が必要ない者でも、『ご用心』は付けていないとどこでとばっちりが来るかわからないので、風呂でも外せません。殿下は指輪は数が多くて面倒だと、腕輪になさっておられました。 君はそうもいかないので大変そうだ。と、ねぎらいのお言葉を賜りました。恐悦至極です。嫌味ではないのです。そういう方ではないのだと重ねて姉上様にお伝えします。でも、もうお分かりいただけてますよね。
この次の年度から僕も一人部屋に移ることになり、おそば回りの下級生が付く事になります。
僕自身、ついこの間、おそば回りになった気がしているのに、とても変な気分です。
殿下に申し上げましたら、大層面白がっておられました。僕はなんだか初めから肝が据わっているように見えたそうです。さすが辺境伯家のしつけは違うと思ったと仰せ頂きました。本当にそうだったらよかったのですが、実のところおろおろしていたのは、姉上様にお手紙を差し上げた通りです。ご助言、最後まで僕の支えでした。
朝から晩までご一緒させていただいていたので、殿下が、宿舎にいらっしゃらないのが、うまく想像できなくて困っています。
いえ、殿下はとっくにご卒業なさっていて、それ以前に退寮なさっておられるのですが、どうしても慣れません。
単に僕がお部屋に伺っていないだけで、ドアをノックしたら、「お入り、スヴェンデル」と返事をいただけるような気がするのです。恐れ多くも一緒にお片付けさせていただいたのは僕なのに!
殿下のように下級生に接することができるようになろうと思っています。
その辺りのお話をご相談いたしたく、姉上様が王都にいらっしゃるのを心待ちにしております。
この手紙がご出立前に届くとよいのですが。万が一にも入れ違いにならないように、ようよう郵便使に言づけるように言いおこうと思っております。
辺境伯家の行列を見過ごすことはないと思うのですが、念のため。念のためは、大事です。殿下がよくおっしゃっておられました。
姉上様がいらしたら、あれもしたい、これもしたいということがたくさん浮かんできてしまい、今のうちに前倒しで課題を済ませてしまおうと図書室通いの毎日です。
姉上様がいらっしゃる頃には、僕も学校から本邸に戻ります。
手合わせもしたいし、馬にも乗りたいです。いい遠乗り場所を殿下に教えていただきました。
今期は、先の休みでの姉上様の教えに従い、よく鍛錬できたと思います。
殿下の防御術式を一枚破ることができて、特別評定をいただきました。バッジをお見せしますね。
セドンテックの養殖場はどうなっていますか? ロボステンの新種の栽培結果も気になります。
王都は、今が一番過ごしやすいです。一番美しい季節というのだと聞きました。お持ちになる外套を減らして、薄物を追加することをお勧めいたします。いっそ、こちらで誂えるのもいいかと存じます。山越えがありますから、外套はいらないとは申しません。減らして下さい。少なくとも王都では使いません。
殿下に、おねだりと注意は便せん一枚につき一回が効果的と承りましたので、この辺にしておきます。便せんが封筒に入りきらなくなりそうです。
それでは王都でお待ちしております。お気をつけて、おいで下さいませ。
最愛の姉上様へ
あなたの小さな弟のスヴェンデル
国で一番お姉さまに婿入りする殿下に励ましのお便りを。 @shugokoukyou
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