第3話 ふたたび決勝戦

 そして昨日――

 フェンシングの練習を終えた帰り道のことだった。帰る方向が一緒の同級生の佐藤から、ぼくは釘を刺された。

「トモヤ、明日は消えるなよ。試合中に消えたら、即失格だぞ」

 佐藤はいつになく大真面目な顔をして言った。


 そして今日――

 ぼくはまれにみる快進撃をつづけた。それなのに、またもややってしまったのだ。


”やられる!”


そう思った瞬間、ぼくは眩い光の中で、別の相手と闘っていた。


 ここ、どこだ?

『にっぽん!』

『にっぽん!』

 日本コールの大歓声だ。

 対戦相手の剣先を避けながら、ぼくは辺りを窺った。見えたのは五輪マーク。そしてFINALの文字だった。


 もしかして……

 ぼくは未来の自分にテレポートしたのか?

 それも金メダルをかけた決勝戦だ。

 図体のでかい相手はUSAのマークを付けている。


 『トモヤー』

 ぼくは我に返った。必死のジャンピング。敵の背中めがけ、剣を振り下ろす。敵のの剣はぼくの脇腹をついている。

 十五点目のファイナルポイントは赤と青の双方の判定ライトが点滅している。

 はたして審判のジャッジは?

 


 気づくとぼくは、一点差で明石高校の主将に負けていた。

 ついさっき、USAの野郎と互角に戦っていたはずなのに。たかだか地方大会の高校生に負けるとはーー。


「トモヤ!取れたメダルを落とした。違うか? 肝心な時に集中力を切らす。しっかりしろ! おまえならオリンピックも夢じゃない」

 鬼コーチが自分のことのように悔しがる。


 この先、ぼくが……


 夢の舞台でメダル争いをするどころか、憧れのオリンピックコートにも立てないだろう。

 

 今日から必死にしかない。

 オリンピック選手になるために。


 最後の最後、強敵アメリカにで勝つのはぼくなのだから。


( 了 )








 

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瞬間移動/テレポーテーション 武藤 径(むとうけい) @kmuto9

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