~第11話 再会〜
死刑隊"銃爆管轄"シャーネルを退けることができた。
男は剣をしまってその場に座り込む。
『ふぅ…、なんとか…。(アイツが引いてくれて良かった・・・)』
一息ついたが今はそれどころではない。
外は戦争のように激しい戦いが繰り広げられている。男は収容所の案内マップを確認する。
2階に"制御室"と記された部屋があるを見つけた。おそらくここに独房を解放する装置があると予想した。
男は急いで階段を駆け上がり2階に向かった。
2階は一直線の長い廊下。両側に独房の扉が並んでいる。その数は20程度。
『このどれかにアランのお父さんが…。』
男は制御室への扉を破壊して中に入る。
そこには独房の数と同等の液晶画面とレバーがあった。液晶画面には独房内の様子が映し出され、
レバーには「施錠⇔解除」の表記がされてあり、"施錠中"にレバーが傾いていた。
男は全てのレバーを"解除"に倒した。
すると、独房の扉がゆっくりと動き出し開放されたのであった。
独房から飛び出す者もいれば、用心なのか独房に身を潜めている者もいた。
男も制御室から出て大きな声を出す。
『アランのお父さんはいますか!?』
その言葉に1人の男が動きを止め、男の方に顔を向けた。
「アラン・・・!?お前、アランを知ってるのか!?俺が父親だ。」
男は今にも泣きそうな顔で男に近づく。
『良かった…、安心してください。アランは無事ですよ。今は収容所の外にいるはずです。一緒に出ましょう。』
「本当か…!ありがとう…、本当にありがとう…。」
アランの父親はその場で泣き崩れた。男はアランの父親の肩を摩った。
長居をする時間は無かった。シャーネルとの戦闘で放たれた爆弾の影響が凄まじかったせいか、収容所全体が大きく揺れていた。
"もしかしたら崩れるかもしれない"。男はそんな予感がした。
『とにかく、ここから脱出しましょう。ここはもう危なそうです。』
他の囚人たちはいつの間にか脱出していた。
2人も後に続き長い廊下を渡り階段に向かう。その時、収容所全体が大きく揺れ始めた。
階段が崩れてしまい、下の階に行くことができなくなってしまった。
飛び降りるにも危険すぎる。エレベーターも危険を感知し緊急停止状態になっていた。
「屋上に行きましょう。ここにいたら上からの瓦礫でいつ押しつぶされるかわかりません。」
アランの父親の案で、2人は下るのを諦めて3階屋上を目指した。
上への階段は幸いにも崩れていなかった。
2人は慎重に、かつ急ぎ目で階段を上る。屋上の方は何やら騒がしかった。
魔獣の声、人が戦い、やられ傷つく声など、聞きたくない音ばかり聞こえてくる。
ようやく屋上にたどり着いた。人の気配や魔獣はいなかった。
そこには巨大な迫撃砲が置かれていた。デスペラードを焼き尽くしたあの爆弾を放った兵器がおそらくこれだ。
『こんな兵器が・・・。』
すると、上空から巨大な鳥が屋上に向かって迫ってきた。
収容所突撃前に森の茂みから確認できた"大きい鷲のような鳥"だった。
徐々に近づいてくる。
空を飛んでいる時は距離が離れていたからそこまで大きく感じていなかったが、とてつもなく大きかった。
全長10mはある。両翼を広げると、30mはあるだろう。とにかく巨大だった。
そんな巨大な鷲が凄まじいスピードで向かってくる。アランの父親は慌てる。
「な、なんだあれはーーー!?こっちに来るぞぉおおお!?」
男は何も言わず剣を出現させて構えた。
巨大な鷲は猛スピードで収容所の屋上を通り過ぎた。時間差で強烈な突風が吹き荒れる。
突風は屋上にある迫撃砲を横転させ、それ以外のあらゆる物を一瞬で吹き飛ばした。
男は咄嗟に剣を地面に突き刺し、しがみ付く。アランの父親も剣にしがみ付いて必死に堪えた。
風が静まり、すぐさま2人は立ち上がる。
鷲はUターンして今度はゆっくりしたスピードで屋上周囲を旋回して飛び回る。
『今度は何を仕掛けてくる…!?』
大きな翼を振り払った。すると翼から鋭く尖った羽が矢のように飛んできた。
男は見切り羽を弾き落とす。
鷲は攻撃の手を止めず、旋回しながら先ほどの羽を連続して飛ばす。
攻撃を弾くことで精一杯だった。何と言っても"反撃の術"が無い。飛び回っている敵は剣では斬ることができない。
(どうする・・・。このままじゃ持たない・・・。)
「あれを使いましょう!」
アランの父親は横転した迫撃砲を指差した。
確かにこの状況で飛んでいる敵に唯一対抗できる手段はそれしかなかった。
しかし、まずは横転した迫撃砲を起こす必要があった。
迫撃砲は5mほど。かなり重い素材が使われており、男とアランの父親2人がかりでも起こすことができないように見えた。
「私がなんとかします!あなたはあの鳥を引きつけてください!」
何か策があるようだ。
男はアランの父親を信じ、鷲をできるだけ引きつける。
『こっちだぁ!鳥野郎!!』
男は目立つように剣を振り回す。鷲は両翼を一斉に羽ばたく。先ほどよりもスピードがある羽を複数飛ばしてきた。
(速い…!!)
弾くことができず、体をそらして回避した。
男は床を見て唖然とする。床に穴が開いていた。羽が床を貫通したのだ。
直撃したらひとたまりも無い。男は恐怖を感じる。
しかし、戦わないとやられてしまうことは分かっていた。男は覚悟を決め再度剣を構えた。
その頃アランの父親は迫撃砲の前に立ち、目を瞑り深呼吸した。
「すぅ……、ふぅ……。」
そして相撲取りのように四股を踏み始めた。
「はぁぁあああああああ!!!!」
すると全身の筋肉が膨張、硬化し始めた。
男は鷲の攻撃をかわしてる最中、横で物凄い”力”を感じ横目でアランの父親を見る。
『………なっ!?』
アランの父親の体格は一回り、二回りも大きくなっていた。腕や足は凄まじく太い。
5mはある迫撃砲を片手で、まるでおもちゃのように持ち上げたのだ。そして銃身を鷲に向ける。
男はただただ唖然とする。
大きな鷲に照準を定め、迫撃砲の発射スイッチを押した。しかし、爆弾の弾速は遅く簡単に避けられてしまった。その時だった。
“何か”が物凄いスピードで男の後ろをよぎった。そして”何か”が鷲に直撃したのだ。
“何か”、、、それは”迫撃砲そのもの”だった。
アランの父親が持ち上げた迫撃砲を鷲に投げ飛ばしたのだ。
鷲は意識を失ったかのように羽ばたくのをやめて、そのまま地上に落下した。
『…メチャクチャすぎる…。』
大きな落下音が周囲に響く。
それにより周りで戦っていたものたちの手が止まった。兵の1人が叫ぶ。
「グリフォンがやられた…!!!誰が倒したんだ…!?」
あの鷲はグリフォンという魔獣のようだ。
兵たちや囚人達、シリスとアランは収容所の屋上を見上げる。
そこには、剣を肩にかつぐ男とアランの父親が立っていた。
「グリフォンを倒しただと…化け物どもめ!収容所も崩れる!ここは退くぞ!!」
兵の1人が全体に指示を出す。すると戦いをやめ、命令通りに一斉にその場から退却し始める。
囚人達は、退却する兵を追いかける者もいれば、どこかに消えてしまう者もいた。
シリスとアランは屋上にいる2人の姿を見て安堵した。そしてアランの目から涙が流れ、叫ぶ。
「「「おとうさーーーーーーん!!!」」」
屋上にいる2人に、その声は確かに聞こえた。
そして2人は手を振って応えた。
〜続く〜
最期の希望 ひろねこ @hironekon
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