~第10話 大罪人~
死刑隊"銃爆管轄"シャーネル、女はそう名乗った。
(銃爆管轄…。前に戦った"雷突管轄"とはまた別の死刑隊か…。)
ふと男は"大罪人"という言葉に引っかかる。
柱に隠れながら、シャーネルに聞こえるように大きな声で問いかける。
『俺のこと"大罪人"って言ってたな?あれどういう意味だ!?』
シャーネルは大型の機関銃を構え、赤いレーザー照準器を柱に照射しつつゆっくり歩み寄りながら答える。
「お前、ここがどこだか分かっていてそれを言ってるのか?」
『・・・。』
男は逃げることばかり考えていたが、そもそも"ここがどこなのか?"を分かっていなかった。
黙ってシャーネルの言葉を聞く。
「ここは、"永久牢獄(エターナルプリズン)"。罪を犯した者が収容される牢獄だ。」
(・・・!?牢獄…?罪を犯したって…?じゃあ俺は犯罪者ってことなのか・・・?)
「そしてお前がどんな"手段"を使ったのか分からないが、独房から脱出した。
それも、お前1人じゃない。他の罪人全員を逃がした…!!」
『なんだって…?(俺が今まで逃がしていた人は全員犯罪者…)』
「お前が収容されていたフロアは"危険レべル"が最も高い罪人達が集まる場所だった。
それをお前は全員逃がした!どういうことかわかるか!?世界が危機に晒されてしまうのだ、お前のせいで!!!」
男がやってきたことの重大さにようやく気付いた。
今までやってきたことが"悪い組織に捕まってる人たちを助ける"ではなく、"罪人を解放し世界を危険に晒していた"ということに。
真実を知り、男は下をうつむく。
『嘘だろ・・・。俺は今まで・・・。じゃあシリスもアランも、みんな犯罪者ってことなのかよ!?』
「ここに捕まっていた者は、皆何かしらの罪を犯した"罪人"…。そしてお前は……、」
シャーネルは男が隠れている柱のすぐ近くまで迫っていた。
「多くの"罪人"を逃がした全ての元凶、、、、"大罪人"だ!!」
柱の裏に飛び出し男を撃ち抜こうと機関銃を構えた。
しかしそこに男の姿は無かった。シャーネルは周囲を見渡す。
(いない・・・?さっきまでここから声が聞こえていたはずだ・・・。)
『はぁ!!』
男は柱を登って上にいたのだ。上から急降下しつつシャーネルに斬り込む。
シャーネルは即座に後ろに飛び退いて男の攻撃を避ける。そして機関銃を突き出して男に発砲する。
男は右手に持った剣で弾をはじきながら接近する。
(く…!接近戦だとこっちが不利だ…!)
機関銃を背中にかけ、胸元から"何か"を取り出し男に投げつけた。
男は反射的に飛んできた物を真っ二つに斬り裂いた。それは爆弾だった。
激しい火花が散ってその場で大爆発が起きた。
建物全体が揺れるほどの大きな爆発。男は寸前で剣を前に構えて防御姿勢を取った。
しかし至近距離の衝撃は耐え切れず、激しく吹っ飛ばされて壁に激突した。
爆風により辺りは煙に包まれる。
『ゲホ、ゲホ…、くそ…。』
その時、煙の中から赤いレーザー照準器の光が男の右足を捉えていた。
男はその場から離れようとしたが、遅かった。
銃声が響き、弾が男の右膝に命中した。
また力が抜けるような脱力感に襲われ、思わず膝をついてしまった。
ようやく煙が晴れた。そこにはゴーグルを掛けたシャーネルが機関銃を構えていた。
そのゴーグルは煙の中でも相手を察知することができる熱探知機能を携えていたのだ。
「左腕を撃ち抜き、右足も撃ち抜いた。さすがのお前も"力"が抜けているだろう。」
そう言いながら、機関銃の弾倉を切り替えた。
そして男の額にレーザー照準器を合わせた。
「投降しろ、さもなくばここでお前を殺す。
次に撃つ弾は"脱力弾"じゃない。実弾だ。頭を撃ち抜けばお前は死ぬ。」
『くそ・・・、力が入らない・・・。ここまでか・・・。』
男は両ひざをついて正座の姿勢になって下を向く。
シャーネルは機関銃を構えながら男に近づく。
そして手錠を取り出して男の両腕にかけようとしたその時、
男は剣を横に振り払い、シャーネルに右腕に一閃を刻み込む。
シャーネルは機関銃を手放し倒れ込む。流血する右腕を押さえながら、男を見る。
男は何事も無かったかのように立ち上がり剣を構えていた。
「そんな・・・、なぜだ・・・!?なぜ立っていられる!?脱力弾を2発も食らっているんだぞ!?」
剣を肩に背負い、男は撃たれた箇所を見ながら言う。
『確かに最初は痛かったし、突然"力"が抜けたような感覚があった。でも、その"一瞬"だけだ。』
「なんだと・・・?そんなことあるはずがない…!お前は…一体何者なんだ!?」
男はシャーネルに近づき、右手に持った剣をゆっくり上に振り上げる。
『俺か?そんなの、あんたがよく知ってるんだろ?俺は、、、"大罪人"だ…。』
「やめろぉおおお!!!!!」
剣をシャーネルに振り下ろした。
~~~
男とシャーネルが闘いを繰り広げている同時刻、収容所の外ではまるで戦争のような激しい戦いが行われていた。
収容所の兵が外に出払ったおかげか、屋上から爆弾が撃たれることはもう無かった。
アランはシリスの回復を待ち、誰にも気づかれないようにただ岩陰に身を潜めるのであった。
「お姉ちゃん・・・。早く元気になって・・・!」
シリスの手を両手で強く握りしめ、ただ祈るばかりだった。
~~~
「はぁ・・・、はぁ・・・。」
剣が貫いていた。シャーネルの真横に散らばる岩石を。
シャーネルは何が起こったのか分からずただ硬直する。そして大量の冷や汗をかいている。
そう、男はシャーネルの命を奪わなかった。シャーネルを斬るフリをしてすぐ横の岩石を貫いたのだ。
「はぁ…、はぁ…、なんで…?」
男は剣をしまう。そしてシャーネルに手を差し伸べる。
『確かに俺は"大罪人"だ。俺がやってきたことは本当にいけないことだと思ってる。だから、俺自身でなんとかしたいんだ。』
「どういう意味だ・・・?」
『俺が、"危険レべル"が最も高いという罪人達を全部捕まえる。』
シャーネルは驚愕した。
「正気か!?お前ごときがそんなこと…!それにお前も罪人、我ら死刑隊からも狙われる身だぞ!?」
男はなぜか微笑む。
『上等!!そしたらあんたらを振り切って、他の最高レベルの罪人全部捕まえてやるよ!』
「…、頭のおかしい奴だ…。これからが楽しみだな、今回は私の負けだ。この場は引いてやる。次に会ったときはお前を始末する。」
捨て台詞を残し、シャーネルは収容所の入り口の方へと行き姿を消した。
〜続く〜
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます