File27:F-5E

 アメリカで開発された軽量・小型・安価戦闘機の発展型。原型機では軽量化と機体構造の簡略化のために省かれていた対空レーダーを新たに装備した。エンジンにも手が加えられており、出力が上昇している。そしてこのF-5Eの最大の長所であるのは、原型機との部品共用率だ。原型機のA型とこのE型との部品共用率は40%であり、生産治具せいさんじぐや運用機材では共用率は75%である。これによって、運用国での機体への経済的負担が大幅に軽くなっている。愛称は原型機から変わり「タイガーII」となっている。


 アフリカ大陸某所。独裁政権を倒そうと武装化したクーデタ軍には戦闘機までもが配備されている。F-5Eだ。クーデター軍のバックにはアメリカがついている。もし政権を転覆できればアメリカの手によって国が発展することが約束されている。一方の政府にはソ連がついており、政権を維持できている間は多額の資金を提供することが約束されている。この政府軍対クーデター軍の争いはいわば、二大国間の関係の縮図でもある。冷戦の影響は貧困を極めているアフリカにも及んでいるのだ。


「政府軍による市民の虐殺が始まってはや4か月。抵抗手段を持っていなかった我々も遂に戦闘機を持つまでには成長した。」


作戦指揮官が話す。


「今日は我々が初めて戦闘機を使って作戦を行う日だ。」


初めてと言っても操縦技術の訓練はきっちり為されており、戦力としては確かだ。


「戦闘機隊の任務は政府軍の航空戦力を排除し、制空権を確保することだ。」


ブリーフィングが終わり、滑走路に機体が並ぶ。


「各機、離陸を許可する。」


F-5Eの部隊が離陸し、編隊を組む。

 首都には既に政府軍の部隊が展開されている。F-5Eのレーダーが敵戦闘機部隊を捉える。


「全機、作戦開始!」


F-5Eが散開する。敵戦闘機もそれに対応し、散開してくる。空中戦が始まった。


「戦闘機は可及的速やかに航空優勢を確保しろ。いつまでも手間取っているようなら地上部隊は潜入できないぞ。」


敵の戦闘機はMiG-29だ。F-5Eはマシンガンを放ちMiG-29へ攻撃する。MiG-29は回避し、反撃する。F-5Eは敵の攻撃を受け撃墜される。別のF-5Eが背後をとり、マシンガンを放つ。MiG-29は不意を突かれ被弾する。更に正面からもマシンガンを撃ち込まれ撃破される。MiG-29がミサイルを発射する。F-5Eはミサイルを回避できずに撃墜される。他でもF-5Eは撃墜されており、戦闘機隊の数は半分にまで減らされていた。


「現在、味方機は半数が生存。」


「半分やられてんじゃねえか。普通ならとっくに撤退だ。無茶苦茶な作戦だぜ。」


「いいか。今度攻撃できる機会がいつになるかは分からん。それに、このクソみたいな政治を早く終わらせたいのなら意地でも航空優勢を確保しろ。作戦は続行だ。」


こうしている間にも味方機には被害が及んでいる。実戦経験のないF-5E部隊とソ連仕込みの戦闘テクニックを叩き込まれているMiG-29部隊とでは格が違う。この時点で既に政府軍よりクーデター軍の被害のほうが大きくなっている。F-5Eの頭が蹴り飛ばされる。背後からMiG-29がブレードで胴体を一刀両断する。これでクーデター軍のF-5Eは残り5機になる。MiG-29はミサイルを放つ。F-5Eはフレアを焚きミサイルを回避する。ミグはF-5Eの下へ回り込み、機関銃を撃つ。弾丸はF-5Eの脚とエンジンを撃ち抜いて機体を爆発させる。残り4機。政府軍の戦車がF-5Eに狙いをつける。戦車の主砲が火を噴く。弾丸が砲身を通り抜け射出される。弾丸はF-5Eの胴体を貫いた。残り3機。MiG-29はF-5Eを囲み十字砲火を浴びせる。機体は爆発し、残ったパーツはハチの巣のように穴だらけになっていた。残り2機。MiG-29に1機はブレードを引き抜きF-5Eへと接近する。それに呼応するようにF-5Eもブレードを抜いた。別のMiG-29がF-5Eの上をとる。F-5Eは機体を反らせて上から奇襲してくるMiG-29にブレードの斬撃を食らわせる。すぐさまF-5Eはエンジンの推力を切って落下する。正面から攻撃を仕掛けようとしたMiG-29は攻撃を空振りしてしまう。F-5Eはバルカン砲でミグに攻撃する。撃破までには至らなかったが、ダメージを与えることには成功した。F-5Eへミサイルが飛んでくる。F-5Eはアフターバーナーを使い加速しながらフレアを撒く。ミサイルはフレアへと引き寄せられていった。F-5Eは反転してミグをロックオンする。肩からミサイルを発射した。ミサイルはミグにヒットし、何機かが戦闘不能になる。MiG-29はF-5Eへと接近する。ブレードの攻撃範囲に入ったところでF-5Eはブレードを振った。MiG-29は反転しながら宙返りをしてF-5Eの攻撃を避けた。そしてF-5Eの背面から機関砲と機関銃を食らわせる。燃料へ引火して機体は爆散した。クーデター軍の戦闘機は残り1機となった。最後に残ったF-5Eは抵抗し、4機のMiG-29を撃破することに成功したが、制空権を取ることは出来ず、ミグに撃墜された。


「戦闘機隊の全滅を確認。作戦は失敗だ。」


地上軍は首都から引き返していった。

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