File16:MiG-53

 戦後、歩兵戦闘機の開発に力を入れたのはアメリカだけではない。ソ連も歩兵戦闘機の開発を始めた。MiG-53はソ連初の歩兵戦闘機である。機体構造はアメリカが試作しているものと変わりない。しかし、旧帝国軍の機体を丸々流用したアメリカとは異なり、このMiG-53はドイツ軍や旧帝国軍の技術を吸収して作られたソ連オリジナルの戦闘機である。MiG-53は高高度迎撃機としての性格がある。素早く高高度へ上がるために脚部にロケットブースターが装備可能である。武装は機体内蔵式の機関砲、多連装対空ロケットランチャーであるフリーガーファウストや対地攻撃用のパンツァーファウスト、高機動戦闘機相手にもダメージを与えられるショットガンと多様なものを装備している。

 総合性能は申し分なく、しばらくは東西双方の歩兵戦闘機はこのMiG-53をベンチマークとしていた。


 第二次世界大戦後、大規模な軍事力の衝突は起こらなくなったが、勢力の空白があった土地ではそれを巡って対立が発生したり、ソ連が近隣諸国を侵略して土地を併合するといった軍事行動は引き続き起こっていた。さらに枢軸国側の残党が各地でゲリラ活動を行っており、戦火は消えなかった。残党のゲリラ活動は大国ソ連でも例外なく行われていた。

「枢軸国の連中がこちらに弾を撃ってきた。塵すら残すな。徹底的に始末しろ。」

 パイロットたちはMiG-53に乗りスクランブル発進する。敵は進軍しており、基地の10km手前というところまで来ていた。敵は戦車、航空戦闘機、そして歩兵戦闘機までいた。かなりの数だ。だが、数ではこちらに優っていても質では確実に劣っていた。部隊を見るに敵はⅣ号戦車、Fw190、Me132といった旧式の戦力ばかりであった。ミグは背部武装ラッチからフリーガーファウストを取り出す。その銃口は地面を向いていた。対空兵装のフリーガーファウストだが、その弾数と爆発範囲から戦車隊を消すことにも使える。ミグは一斉にフリーガーファウストの引き金を引いた。9発が6機分、合計54発もの弾が戦車隊に降り注ぐ。地を這う戦車にフリーガーファウストを避ける方法はない。戦車はフリーガーファウストによって跡形もなく消し飛んだ。

 航空戦闘機がミグ達の背後をとった。戦闘機は機関砲と空対空ロケットを放つ。ミグは回避行動をとりながら航空戦闘機が不利になるような位置を飛行する。ミグはフリーガーファウストを捨て、ショットガンを取り出す。ミグは戦闘機に散弾を浴びせ、パイロットごと蜂の巣にする。

 敵の歩兵戦闘機がこちらに向かってくる。しかし中山方式を採用していないドイツ軍の歩兵戦闘機はミグにとってはおやつでしかなかった。脚部にマウントされたパンツァーファウストを発射し、飛行ユニットを破壊する。敵歩兵戦闘機は墜落する。しかし歩兵戦闘機は完全には破壊されず、人型ユニットは生きていた。敵歩兵戦闘機は機関銃を放つ。しかし上下にしか銃を動かせない旧式にミグを被弾させることは出来なかった。ミグは急降下し、敵歩兵戦闘機の機関銃を胴体からもぎ取った。この旧式の武器も「手」に持てるように改造すればまだまだ使える。一方で残ったほうには価値はなかった。敵パイロットは機体から脱出した。だが、ミグ達はそれを見逃しはしなかった。ミグがパイロットに向けてパンツァーファウストで爆撃する。爆撃の跡には何も残っていなかった。

 敵は全て排除した。

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