File14:四四式歩兵戦闘機

 大日本帝国海軍が開発した歩兵戦闘機。ドイツ軍が先行して開発した機体とは異なっており、脚部を従来の戦闘機のような形状にする「中山方式」と呼ばれる方法を使って機体の大幅な軽量小型化。空母への艦載に成功した。さらに上半身も改善されており、腕はより人間的になっている。武器を「持つ」ことが可能となり、歩兵戦闘機用の日本刀が作られるようになった。この四四式の誕生は歩兵戦闘機に大きな変化をもたらすはずであったが、生産が大戦末期であったため、個体数は多くなく、さらに生産された機体も手に爆弾を抱えて敵艦へ体当たりする特攻兵器となってしまった。

 今回は四四式歩兵戦闘機の空中戦闘の記録を入手できた。それを紹介しよう。


 時期は1945年2月。日本は敗戦へと歩を進めていた。既に本土空襲が始まっており、軍事工場だけでなく民間施設も狙った無差別爆撃となっていた。

 空襲警報が鳴る。すぐさま防衛部隊が出撃する。その中に四四式歩兵戦闘機の姿があった。四四式はタキシングし、離陸する。遥か上空にB-29が見える。四四式はスロットルを上げ、高度を上げる。エンジンは高高度用に調整がなされ、空気が希薄な状態でも十分なパワーを得ることができる。しかし、プロペラでは上昇力に限界がある。四四式ではB-29が飛んでる高度1万メートルまで到達するのは12分もかかる。

 数機のP-51が四四式を追いかける。四四式は反転し、P-51に機関銃を食らわせる。後ろをとられても反転するだけで敵に攻撃できる。それが歩兵戦闘機の利点だ。P-51は四四式に手を出すことも許されずに地へ落ちていった。

 四四式は上昇を続ける。爆撃機が対空機銃を撃ってくる。四四式はそれを巧みに避けていく。遂にB-29と同じ高度に達した。四四式は腰に装備されている日本刀を引き抜いた。B-29の上を取る。四四式は日本刀でB-29の翼を削ぎ落とした。 B-29は高度を落としていく。日本刀を仕舞い、機関銃を握る。照準を次の機体に定める。機関銃を放つ。銃弾は爆撃機の装甲を貫き、胴体に詰めてあった爆弾に引火する。爆撃機は四散した。

 残った爆撃機が四四式に向けて対空砲火を始める。この弾幕の中では全ては避けきれない。四四式は装甲の厚いところを盾にして弾丸を受け止める。そのまま銃を爆撃機へ向ける。鈍重な爆撃機は弾丸を回避することは叶わない。弾丸をモロに受けた爆撃機は炎上して高度を落としていく。別の爆撃機へ機関銃を向ける。四四式は銃の引き金を引く。しかし弾は銃口を出なかった。機関銃の弾が切れた。四四式は機関銃を捨て、日本刀を抜いた。四四式は爆撃機に接近し、真向斬り《まっこうぎり》で爆撃機を半分に割った。

 脚を機銃で撃ち抜かれる。右エンジンの回転が止まった。左エンジンだけでなんとか高度を保とうとする。だが、バランスを失い機体は落下する。最後の足掻きで日本刀を爆撃機に投擲した。刀は爆撃機のエンジンに刺さった。爆撃機は高度を落としていった。

 四四式は自由落下を続ける。すると、四四式は四肢を動かして機体を水平にした。滑空するつもりだ。機体は滑空を始める。四四式は高度を下げていく。一方で速度は上がっていく。四四式はエアブレーキを展開して速度を落とす。滑空してかなりの距離を飛び、安全に着陸できる場所はなかった。四四式は木々の中に着陸しようとする。木の枝が四四式の装甲を叩く。幸い木の幹に激突することはなく着地することが出来た。パイロットは脱出し、四四式は置き去りにされた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る