File13:Me132

 メッサーシュミット社が開発した世界初の歩兵戦闘機。外観は現在の戦闘機とは異なっており、人型ユニットの背中に飛行ユニットが接続されているという形になっている。当時の技術では飛行ユニットを人型に収めるのは困難であり、飛行ユニットのデカさゆえに地上での戦闘は不可能であった。脚はランディングギアとしての役割としか機能せず、歩行は出来ない。コクピットも装甲ではなく、ガラスでできている。頭部は飾り。と現代の戦闘機と比べるとやはり技術不足感が目立つ。武器は機銃を両腕に直付け、というより機銃が腕の役割を果たしている。また、胸部にバルカン砲が装備されている。

 すぐに新型が開発されたことから、実戦記録はほとんどない。


 連合軍の爆撃機によって空軍基地が攻撃されていた。


「迎撃できる機体はないのか!」


 ゾラは敵に攻撃されているのに反撃できないのをもどかしく感じていた。


「ゾラ大尉。Me132が格納庫にあります。」


 Me132、先日搬入された歩兵戦闘機と呼ばれる新兵器だ。


「あの超兵器か。使えるのか?」


「技術班は実戦に耐えうる性能を持っていると言っていますが…。」


 ゾラはMe132が鎮座している格納庫まで歩いていく。Me132がその姿を現す。その巨体にゾラは圧倒された。


「見掛け倒しでなけりゃいいがな。」


 ゾラはMe132に乗り込む。スターティングハンドルでエンジンがかけられた。Me132が起動する。格納庫の扉が開き、Me132はタキシングした。


「計器系に異常はなし。フラップもエルロンもしっかり動く。滑走路の状態は…大丈夫か。」


 ゾラは機体を加速させて離陸した。

 敵の爆撃機を視認した。上昇して爆撃機の後ろをとった。機銃を発射する。弾丸は爆撃機の装甲を叩く。爆撃機は炎上し、高度を下げていく。ゾラは機動し、次の目標へ向かう。このとき、ゾラは機動の鈍さに舌打ちをした。Me132は非常に重量が重く、当時の航空戦闘機よりも機動性が劣っていたのだ。爆撃機と相対する。ゾラは爆撃機に向かって機銃を放った。弾丸はコクピットを貫いた。2機目の爆撃機を落とす。爆撃機はまだ1機残っている。ゾラは最後の爆撃機に目を移した。もう既に距離は離れており、追える距離ではない。

 ゾラは基地へと向かった。

 基地の滑走路が見えてくる。ゾラは機体がクラッシュしないことを祈りながら着陸させた。

 格納庫に戻ると出撃時にゾラと話していた補助官が駆け寄ってきた。


「どうでしたか?歩兵戦闘機の感触は?」


「攻撃力はあるが、機動性が足りないな。これじゃあ普通の戦闘機にコイツの機銃を載せたほうが戦える。」


「技術班にそう伝えておきます。」


 補助官は踵を返して廊下を歩いて行った。

 もう本土にも攻撃の手が及んでいる。戦争の結末は近づいているようだ。ゾラはそう感じた。

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