第2話 エセメガネの男
わたしが特に好きなのは現代小説。高校の頃から大人な小説が好きだった。
普通の恋愛小説じゃもう物足りない。文字で性描写を描くなんてすごいとは思う。セックスのときは実況するなんて相当の変態でないとしない。
これをあーしてこうなってわたしはこうなった、相手はこうなって、あれがどうなって濡れたとか。吐息が、とか、吐息って……呼吸は意識したことない。そんなセクシーにしたことはないきもする。
「こういうの読むのは欲求不満だからじゃ無いの」
とか言われてもおかしく無い。でも自分で体験したことのないことができるのが本の中の世界である。
実際図書館にはエロ本と呼ばれるアダルトな書籍は置いてないがグレーな本が多い。
でもタイトルからしてエロいものとか表紙が卑猥なものもあったりする。
あ、来た。丸メガネの短髪男。じろー。見た目がお笑い芸人のコンビ、シソンヌのじろうに似てるから勝手に名付けた。今はマスクしているがマスクする前は本当に似てるし、マスクしていると本人に見える。
他の司書の間でもシソンヌじろうさんに似た人いたよね、と話題になってたので私だけではなかったのかとほっとした。でも中にはシソンヌとはっきりあだ名にしてる人がいたが、じろうさんの方である。忍さんの方には残念ながら似ていないが名前がわからないのであろうか。ちなみに、じろうさんは映画の脚本も最近書いている。
それはどうでもいいとして。彼もわたしと読む小説の嗜好が似ている。小説五冊。これを貸し出し期間二週間で読み切るのか。登録情報によると40歳。平日には見かけないので土日休みの仕事、おしゃれな丸メガネでも支障がない仕事? いや休みの日だけかもしれない。
普段はどんな眼鏡をかけているのか。いや仕事の時はコンタクトかもしれない。
個人的にわたしはじろうさんの顔も嫌いでは無い。多分メガネに弱いかもしれない。眼鏡フェチだ。門男もよく考えれば眼鏡だ。
ジローはデザインの凝った丸メガネ。指輪はしていない。結婚していないのだろうか。している男でも指輪をしていないこともある、気を付けろ。でも結婚してるしてないかわからない時までわたしの妄想は激しくなる。
彼の借りた108、松尾スズキの本。表紙が卑猥である。これをこのまま出すか悩んだものである。だが悩んでいる暇もなく製本ボランティアさんのもと綺麗に製本され新刊の本棚に並べられ、今では松尾スズキの列に並んでいる。
ジローもこの本を読んで自分の体験したことのないような性体験を本の中でするのだろう。
本を読みながら誰を思い浮かべて読み進めるのだろうか。もう映画化されているのでそのキャストで思い浮かべるのか。
どうかわたしもその彼の頭の中での一キャストに加わって欲しい。セックスするときは眼鏡はかけているのだろうか。ん、レンズは歪んでない。お洒落メガネか!?
「はい、5冊ですね……ご返却は二週間後でよろしくお願いします」
「はい」
わたしは108を丁寧に他の書籍の間に挟み渡すとジローは少し目をいつもよりも微笑ませて持っていった。
こういう気遣いも大切である。
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