魔闇直樹の短編集──世界の火種

テーマ５「軽自動車」

テーマ「軽自動車」

「ぐへへぇ……今日も弱そうな奴から金を奪い取ってやったぜぇ！！」

　とある街で大人しそうな学生を恐喝して金を巻き上げている不良少年が、テンション高く楽しそうに夜道を歩いている。

　すると、後ろから凄いスピードで青色の軽自動車が不良の後ろから迫ってくる。

「う……うわぁ、なんだ？」

　その車はまっすぐ彼を跳ね飛ばす。

　不良少年は、鈍い音を立てて「う…………」と痛そうな声を漏らしアスファルトに横たわる。

　そして、倒れている彼の方に車の排気口がくるように車が素早く停止する。

　そして、運転席の窓が開き不良のいる方向へ顔を向ける。

「テメェ……よくも……へ？　なんでお前ガイコツのヘルメットをかぶって……ま……まさか…………」

　最近、とある噂が出回っている。内容は、青色の軽自動車を乗り回すガイコツのフルフェイスヘルメットをかぶっている謎の人物いるという。

　この人物は、悪い行いをしている人の所へ現れ、病気を与えるらしい。

　その人物は青色馬に乗り、病気を撒き散らし、死を連想させることから【ペイルライダー】と呼ばれている。

「貴様は、罪のない学生から金を巻き上げているようだな。私が貴様に罰を与えよう！」

　謎のドライバーは、人とは思えない声を発している。

「や……やめろ…………お前なんて……あぁクソ！！　背骨が痛くて体が動かねえ…………」

　ブレーキすらかけてない車で、思い切り突撃された為、不良少年は背中部分を骨折している。

　彼がもがいていると、車の排気口から禍々しい煙が登っている。

「この排気口からは、様々な病気の元が排出されるのだよ。　さぁ、苦しむが良い！！」

　排気口から倒れている不良目掛けて、凄い勢いで噴射する。

「ウェッ！　ゲッホ！　ゲッホッ！　やめて下さい……く……苦しい……！！」

　不良少年は、もがき苦しみ気絶した。

　そして、目的を果たした謎の青色の軽自動車は、夜の街へと走り出した。