声に出して読みたい小説。

※作品は絶対評価したいので星の数はぜんぶ二つです。三つでも良かったのにね。
※最後まで読んだ感想です。

ログアウトと呼ばれる安楽死制度(のようなもの)が、一体全体どういう議論を経たのか整備され(てしまっ)た世界の、SFであり、私小説風の短編であり、散文詩のような作品です。

ログアウトの申請がネットではできず、窓口の対面でしか行えなかったり、立つ鳥跡を濁さず的な言動が推奨されているのは、いかにもなお役所しぐさでもあり、煩雑な手続きの最中に「死ぬのもめんどくさいからやーめた」という根っからのめんどくさがりを翻意させることを狙っているようにも見えたり、短編らしい、妄想の羽を広げられる余地がたくさんあって面白かったです。

とはいえ、何といっても最大の魅力は、乾いた倦怠というか、平熱の絶望というか、主人公の平板な肉声が聞こえてきそうなクールで詩的な文章です。

ポエトリーリーディングにすれば名曲になりそうだなと思いながら、音読してみました。うん、やはりいいです。声に出して読みたい小説です。

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