この物語を読み始めると、すぐにその独特な世界観に包み込まれる。
大きなお屋敷と、その前にそびえる大きな門と、みすぼらしい格好の少女。
それらの光景がありありと目に浮かんでくる。
少女の名はミミィ。
彼女はもともと「三三一番」という番号をつけられた奴隷だった。
雨の日も雪の日も、門を磨くのが彼女の仕事だ。
しかしある日、彼女は領主の家へ連れて行かれる。
大きく変化する日常。
連れて行かれた先でミミィが出会ったのは、「竜神様」と呼ばれる存在だった。
どこか恐ろしく、あまりにも美しい物語。
この作品の世界は、けっして透き通っているわけでもなく、明るい光が射しているわけでもなく、キラキラ輝いているわけでもない。
むしろ、闇の色が濃い印象を受ける。
それでいながら、哀しみや恐ろしさとともに、凛とした美しさが内在しているのを感じる。
喋るオルゴール。世界を守る竜神。
元奴隷のミミィ。塔。夢。鱗。
世界観を構築するモチーフがそこかしこに散りばめられ、まるで古い絵本を覗いているような気分になる。
世界観、キャラクター、そして展開の読めない物語。そのすべてに引き込まれる。
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この作品は「Novelber」という企画への参加作品だという。
「Novelber」とは、11月の30日間に1日1個ずつのお題が割り振られ、それに沿って小説を書くというもの。
つまり、お題という制限がある中で書かれた作品ということになる。
エピソードタイトルがそのままお題になっている。
(https://kakuyomu.jp/works/1177354054935437753)
これを見るとわかるように、ときには難しいお題もある。
それでいながら、最初から最後まで統一された世界観で描き切るのは至難の業。
さらに驚くべきは作品の「構成」である。
伏線を入れつつ、それを回収しつつ、回を追うごとに二人の関係が変化してゆき、さらには終盤になると話の盛り上がりもあるという。
毎話お題があるなかでこのような構成を作るのは至難の業ではないだろうか。
とくに、夢と現実が入り混じる構成がうまいなと思う。
また、短いエピソードも長いエピソードもあるが、それぞれ詩のようだったり謎めいていたり伏線回収があったり、あるいは物語が展開したりして、不思議なリズムがある。
そこがまた作品の魅力でもある。
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もしこの作品が気に入った方は、同作者のこちらもお薦めしたい。
『紫の子』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889981457