#26 寄り添う
カルヴァの意識が戻らない。
そうミミィに知らせたのは、いつも朝食の準備をしてくれるメイドだった。
顔色を変えて部屋に飛び込んできたメイドを落ち着かせ話を聞くと、ノックしても返事がない為に部屋に入ると、床にカルヴァが倒れており、声を掛けても何をしても反応がないというのだ。
ミミィはメイドと共にカルヴァの部屋へ急いだ。
何が出来る訳でもないが、それでも、急がずにはいられなかった。
カルヴァはそれから三日三晩、眠り続けた。
ミミィがいくら願いながら眠っても、カルヴァの夢には入れなかった。
室内の丸テーブルに置かれたオルゴールが悲しい音色を奏でる中、カルヴァは眠っている。
ミミィはカルヴァの手を、ずっと握っていた。
時折カルヴァの胸もとに耳を当て、自分と同じく心臓が脈打つ音を確認しては胸を撫で下ろす。
ミミィは心臓の音よりも、カルヴァの声が聞きたかった。
「キミは、彼か好きなのかい?」
旋律を奏でる事を止めたオルゴールが、ミミィにそう問うた。
ミミィは、答える事が出来なかった。
ミミィの心を埋め尽くすその感情を、“好き“と、そう呼んでいいのだろうかと。
特別なのは間違いなく。
唯一なのは間違いなく。
ならばそれは、“恋“?
それとも、“愛“?
オルゴールが少し笑ったような気がして、ミミィは俯いた。
ベッドで眠るカルヴァの瞳は、閉じたまま。
ミミィは赤と青のその瞳をもう一度見られるようにと再び願い、カルヴァに寄り添って、時を過ごすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます