#25 幽霊船

 その日は、海の上だった。

 荒れる、夜の海。


 大粒の雨が海原を叩き、ごうごうと風が唸り声を上げている。


 どこかから、楽しそうな歌声が聞こえてくる。

 粗野な男たちの、楽しげな歌声が。


 遠くから現れたのは、ボロボロの船だった。

 メインマストは破れ、少しの布がかろうじて残っているだけだった。

 船を形造る木材も、かなりの部分が破損していた。

 ギリギリで船としての体をなしている。


 所々穴の空いた甲板で陽気に歌う骸骨たちは、その歌声に反して邪悪な気配を放っていた。


 これは、害意だ。

 今夜の夢は、幽霊船か。


 空に立つカルヴァは、指の骨をポキリと鳴らして船を見据えた。

 数が多いが、問題ないだろう。


 その考えが油断を誘う事を、その時のカルヴァは知らなかった。

 

 最後の船員を倒した後、全身に傷を負って海に落下したカルヴァは、そのまま夢の底へと落ちていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る