#21 帰り道

 カルヴァとミミィは塔に向かって伸びる道の途中に帰された。

 塔の内部から直接呼び出しておきながら、外に放り出す炎神は何を考えているのか。


 ミミィは少し酔いの残る、仄かに赤い頬をカルヴァに見せていた。

 吹きすさぶ風に、肩を震わせる。

 カルヴァは纏っていたマントをミミィに掛けてやり、手を引いて歩き出した。

 小さな手が遠慮がちに握り返してくる。

 時折ふらついてはカルヴァの手に体重を預けた。


 その重さは、暖かさは、どこかカルヴァを安心させた。

 そして思い出す。

 夢の中、幼い自分に言葉を掛けたミミィの事を。

 竜の姿で落ち込むカルヴァを、励まして甘やかすミミィの事を。


 負けたくないと、言った。


 自分に、負けたくないと。


 道端の石に躓いたミミィの膝の裏に腕を差し込み、そのまま横抱きにした。

 ミミィは目を白黒させていたが、また転びそうになったら困るからと言うと、大人しく身を預けた。


 今までは、なかった感情だった。

 母へ期待したモノと少し似た、柔らかく胸を締め付ける、感情。


 それに名前を付けるのは、まだ少し、難しかった。

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