#20 地球産
そういえば、と炎神はワインのボトルを手元に出した。
カルヴァの母、初代竜神の生まれ故郷、地球産のワインだ。
カクテルというものも、地球という星を覗き見ていた時に知った物。
あの星はなかなかに興味をそそられる星だった。
炎神は今面倒を見ている世界以外にも、色々な世界を覗き見ている。
地球というのもその中の一つで、魔術が存在しない代わりに色々と便利な物の多い世界だった。
味の良い物も多数あり、炎神はこっそり幾つかの物を持ち帰ったのだった。
カクテルとワインを持って訪ねるのが面倒になり、カルヴァを呼び出す事にする。
炎神は宮殿や城を持たないが、自分だけの空間を持っていた。
自分が気分屋で飽きっぽい事は自覚していたから、ひと所に留まるよりも良いだろうと思っての事だった。
カルヴァを呼び出すと、ついでにミミィも呼んだ。
初めは緊張していたようだったが、酒を数杯飲ませると落ち着いたようだった。
酔っ払って騒ぐのは好ましくないので、そうならぬよう適度にアルコールを分解してやる。
カルヴァは炎神の思惑を読みかねているようだった。
ミミィの様子を気にしてやりながらも、炎神に対する疑問符が消えない。
ワインの味は気に入ったようで、何杯か飲んでいた。
今度何本か差し入れてやろうと言うと、少し嬉しそうだった。
そんな顔も出来るようになったのかと、炎神も嬉しくなった。
カルヴァは自分の気まぐれのせいで産まれたようなものだ。
炎神の気まぐれによってこの世に生を受けた命はそれなりにある。
その命に対してもう少し気を配ってもいいのかもしれないと、炎神は昔思ったのだった。
カルヴァとミミィの夢を繋いだのも、興味本位であるとはいえ、その気配りの延長にあった。
そのちょっかいが無駄にはならないように思えて、炎神は満足気に酒を勧めるのだった。
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