#18 微睡み

 竜の姿の幼いカルヴァは、自分の鱗を撫でるミミィの姿がぼんやりと見える事に驚いた。

 今までは、気配と声はするものの、姿を見る事は出来なかったのだ。



「ミミィ、大人のボクとなにかしたの?」


「え?」


「ぼんやりとだけど、見えるよ、ミミィのこと。なんだか、ボクと同じ魔力を持ってるみたいに見える」


「カルヴァさまの魔力を? ……特にカルヴァさまと触れ合ったりはしてませんけど」


「ホントになにもしてない? うそじゃないよね?」


「し、してませんよ!」


「そっか……よかったぁ」


「なにが良かったんですか?」


「べつに。負けたくないだけ」


「負ける? カルヴァさまはカルヴァさまなのに?」


「いいの! もう!」



 カルヴァはいつの間にか少年の姿に戻っていた。

 確かにミミィの事が見えているようで、ミミィを床に座らせて、その膝に頭を預けてごろりと横になる。



「ちょっとだけ、いいでしょ?」


「これは、膝枕というやつですか? 痛くありませんか?」


「痛くない、気持ちいいよ」


「そうですか。それなら良かった」


「……ミミィは……」


「え? 何か言いました?」


「ううん、なんでもない」



 それ以上聞いても、カルヴァは何も答えなかった。

 閉じた瞼に長い睫毛。

 一枚の絵のように微睡むカルヴァは、美しかった。


 夢の中で夢を見たら、今の夢はどうなるのだろう。


 そう考えながら、ミミィの意識は溶けて、消えた。

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