#9 一つ星

 ふと、目を覚ました。

 静まりかえる部屋。

 天井に羽根の生えた赤子が描かれている。


 ここは、どこ?


 すぐに思い出す。

 竜神様と夜ご飯を食べた後、眠ってしまったのだと。


 視界の隅でオフホワイトのカーテンが揺れる。

 窓が開いている。


 琴の音。

 風の音。


 雲よりも高く、手の届きそうな一つ星。


 星は、希望に似ている。


 暗闇の中、ぽつりと灯る光。

 手が届きそうで、届かない。


 竜神様のお役に立てればいいのに。


 強いひとだった。

 美しいひとだった。


 けれどひどく、悲しそうで、哀しそうで。


 あたしが星になれるなら、あたしが希望になれるのなら。

 すぐにでも流れて、竜神様の手元に飛び込んであげよう。



 悪夢でも見ているような低い唸り声が、小さく、聞こえた。

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