#6 双子
次の日の朝、ミミィは仕立ての良い生成のワンピースに身を包んだ。
朝食はキッキの卵の目玉焼き、ブリュドの腸詰め、そしてふわふわで温かな焼きたてのパンだった。
冷たいカラグの乳は新鮮で、ミミィはすぐに飲み干してしまった。
隣に控えていたメイドは、そんなミミィに柔らかく笑って、空のグラスになみなみと注いでくれるのだった。
朝食の後、領主に連れられてミミィは塔へとやってきた。
領主の館の後方に
雲の上まで、続いているようだった。
塔の入り口にある竜のレリーフに領主が触れると、その瞳が赤く光って扉が開いた。
内部は壁に沿うように続く螺旋階段と、少しの彫刻があるだけで、他には何もなかった。
吹き抜けになっており、やはりその終わりは見えなかった。
ガランとした空間の中央には魔法陣が刻まれていて、ミミィはその上に立つように促される。
領主と共にそこに立つと、魔法陣が紫に光った。
瞬きの後、ミミィは見た事もないくらいに豪華な部屋に立っていた。
毛足の長い絨毯に足が埋まってしまいそうだった。
煌めくシャンデリアの下、二人の男が立っている。
馬車に乗っていた赤と青の瞳の男と、全身を紫の炎に包んだ男。
「お連れしましたよ、竜神様。炎神様までいらっしゃるとは」
「うむ、面白そうだったのでな!」
「ミミィ、と言ったか。突然すまない。私が少しキミに興味を持ってしまったばかりに、大事になってしまって」
「どんどん大事にするといいぞ! こやつは少しくらい誰かに振り回された方がお堅いところが砕けて良……むぐっ!?」
笑いながらそう言っていた炎神の背後に、まるで双子のように瓜二つの男が現れ、次の瞬間には炎神の口を塞いでいた。
「姿が見えないと思ったらまた余計なことしてる! ごめんねカルヴァ、連れて帰るから安心して」
「い、イルルク様! いえ、滅相もありません。余計なことなどと」
「いいんだよ、本当のことを言って。ね、炎神様。というか、自分のやることをボクに押し付けて、何をしているわけ? はい、帰りまーす。お邪魔しましたー」
有無を言わさず、イルルクは炎神を連れて消えてしまった。
取り残されたミミィたちを静けさが包み込む。
コホンと一つ咳払いをして、カルヴァはミミィに手を差し出した。
「気を取り直して、ミミィ。こちらへ来て話をしよう。色々と聞いているかもしれないが、私はお前を無理矢理どうこうしようという気持ちはないから安心してくれ」
「はい」
ミミィはそう言ってカルヴァの手を取った。
カルヴァがミミィの手を軽く握ると、荒れた肌が見る間に綺麗になった。
驚いた瞬間に声が漏れ、喉の引き攣りもなくなっている事に気付く。
「あ……」
「無粋な呪いだ」
ミミィはカルヴァに促されるままに、大きなソファに座った。
それから自分の事について、大した重みのない自分の事について、ミミィは語るのだった。
カルヴァは静かに、その声に耳を傾けていた。
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