「急にベッドの上で跳ね起きんなよ。びっくりするだろうが」


「ごめん」


「また、見えたのか。何か」


「うん」


「そうか」


「起こして、ごめん」


「気にすんな。俺は起きてたよ。ずっと」


「なによ。起きてたの」


「お前が泣いてるのを。見てた」


「泣いてる?」


「泣いてるよ。お前」


「ほんとだ」


「泣くなよ」


「こういうときは、泣きたいだけ泣けばいいとか、そういう言葉をかけてほしいと思うんですけど?」


「泣きたいだけ泣いて、それで何かが解決するなら、そのほうがいい。でも、お前は、違うだろ」


「うん」


「泣いても、さびしいだけだ。泣かないで、耐えたほうがいい」


「うん」


「毛布」


「うん」


「暖かいか?」


「暖かい」


「なくなったものを、思い出して泣くよりも。今あるものを感じたほうがいい」


「これからも」


「うん?」


「これからも。わたしがつらくて。泣きそうになったら。そばにいて、くれますか?」


「現に今もここにいるだろうが」


「そうだね」


「泣くなよ」


「これは嬉し涙だから、いいのよ」


「そうか。ならいい」


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night close & 午前四時のあなた (⚓) 春嵐 @aiot3110

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