長い間、勝負してきた夫婦。亡くなった妻が、最後に夫に対して奮い立たせるための〝勝負〟を挑みます。それがきっかけで再起した夫……という風に受け取ることができました。個人的な意見ですが。二人の間で交わされたであろう日常は、手紙という媒体をかいして再燃し、夫の心をこがします。その時の夫の顔は涙でぐちゃぐちゃになっているのか、それとも妻を思い出し微笑んでいるのか。あるいは、そのどちらもか……。そこには重ねてきた歳月を感じさせる思い出と化して心の中に残っているように感じました。
五十年間、連れ添った夫婦。先立つ奥さんと、残されたご主人。「泣いたら負け、頼ったら負け」と深い孤独に立ち向かっているご主人は、奥さんが残した手紙を読んで、次第に立ち直っていきます。昔気質なご主人と、ご主人を立てながらも手玉に取る奥さん。日本の古き良き夫婦像が描かれている作品です。