ひとりの「精霊の子」は自らの生を如何に受容するのか。

独特なことばと地名に彩られた物語世界に、否応なく没入させられる冒頭。
まずそれが心地よい。だが、その快感に酔っているうちに、
一人称で語られているそれは、間違って人として生まれてきた緑の髪の子、
ラー・ロウ(精霊の子)の物語なのだと知る。
ラー・ロウは、精霊に戻ることもできる。
それは新しい精霊の誕生でもあるが、人としての死でもある。
それを選んだ「彼」と、それを選ばなかった「俺」。
そこにはどんな差があるのか。どんな生の受容があるのか。
美しい情景描写と、溢れ出る激情。
それらに身を委ねて考えてみても、容易に答えは見つからない。
だけど、それが良い。
読み終わったあとの余韻は、
人とまみえて生きる事を選んだラー・ロウの影が心に滲むかのようだ。