カウンターアタック

@ramia294

第1話

  ついに、ネコジャラシ対猫の戦いが、始まった。


 ネコジャラシが、血と汗と涙で、身に付けたユラユラ幻惑ダンスで、攻撃すると、猫は、ついフラフラと幻惑されかけた。


 ハッと気がつき、猫は、身体をナメナメすると気を取り直して、修行の成果を試した。


「全集中」


(元々猫は、集中型の動物)


「猫の呼吸」


(元々猫なので、いつも猫の呼吸だ)


「ニャンの型」


(……)


「うたた寝」


(いつも、している)


 (;^_^A(;^_^A(;^_^A(;^_^A(;^_^A(;^_^A(;^_^A(;^_^A


 

 そもそも、ネコジャラシが、逆襲に転じた事は、無理もない事だった。


 毎日のように、猫にもてあそばれ、爪で引き裂かれ、噛みちぎられるネコジャラシたちが、ついに立ち上がったのだ。


「俺たちだけが、どうしてこんな目にあわなければならないんだ」


「そうだ、そうだ。俺たちはいつも猫を楽しませてやっているのに、どうして、最後は、壊され、ゴミ箱行きなのだ」


「猫にも、俺たちと同じ目にあわしてやれ」


 対猫会議で盛り上がったネコジャラシたちは、猫に対抗するためにカラスに弟子入りして、修行をした。


 滝に打たれ、都会のマンションのゴミ置き場の急な壁をよじ登り、ゴミ袋を破った。集団で、ムクドリのヒナやひ弱な動物を追い回し、畑や、果樹園を荒らし回り、瞑想した。


 ついに修行を終え、カラスの尾羽をもらえるようなったネコジャラシたちは、猫に復讐を始めた。


 ネコジャラシを追う猫をほんろうし、疲れ果てた猫の身体に、カラスの尾羽を突き立てた。


 修行で、得た力は、カラスの尾羽を通して、猫を様々な色の羽根に変えた。羽根になった猫をネコジャラシ自身に取り込み、別の猫に噛ませて、楽しんだ。


 猫が、羽根を引きちぎると、猫の姿に戻った仲間を見て驚いている間に、カラスの尾羽を突き立てた。


 悪の循環システムで、猫をほんろうしていくネコジャラシ。


 対して、ようやく、ネコジャラシに襲われている事に気づいた猫たちは、自分たちも修行して強くなろうとした。


 まずは、必ずご近所にいる犬に相談した。


「犬さん、ネコジャラシたちと戦うため、僕たち猫を弟子にしてくれませんか?」


 すると犬は、困った顔をしました。


「僕たちや君たちは、哺乳類のある意味では、頂点にいる動物だ。元々の個性が、違うので、戦い方が違う。でもそれは、マネ出来るものでもないし、マネしても強くなれない」


 確かに、犬の言う事は、もっともです。


「僕たち犬よりも、ご主人の人間に相談してみたらどうだろう」


 なるほどと、思った猫は、ご主人の人間に相談してみました。


 しかし、ご主人は、笑っているだけです。


「人間が、猫に教えてもらう事は、あっても、教える事は、無いよ」


 哲学的ですが、あまり役には立ちません。それでも、このままでは、ネコジャラシたちに、いいようにもてあそばれるだけです。


 ご主人は、ソファーに座りテレビを見始めました。


「この番組だが、何かの参考になるか?」


 ご主人は、そう言うと、猫の事は、忘れた様に、テレビに夢中になりました。


 仕方なく、猫もその深夜アニメを見る事にしました。


 猫たちとネコジャラシたちの争いは、エスカレートしていき、全面戦争の一歩手前までに、なりました。


 犬が、それならお互いに代表を出して、戦い、勝った方の意見に従う事にすればどうかと、間に入ってくれました。


 代表猫は、深夜アニメを見て培った実力で、代表ネコジャラシに対抗しました。


(^.^)(^.^)(^.^)(^.^)(^.^)(^.^)(^.^)(^.^)(^.^)(^.^)(^.^)


「ニャンの型。うたた寝」


 この型は、寝てるふりをして、ネコジャラシの隙を誘う必殺の型だ。大ヒット深夜アニメに、どハマリした猫が、何の努力もしないで、身に付けた技だ。


 ネコジャラシは、動かなくなった猫に焦った。元々猫が、ネコジャラシの動きに乗ってこないと、尾羽を使えない。焦ったネコジャラシは、不用意に猫に近付いた。


「ニャン、ニャンの型。ヘソ天」


 これは、ネコジャラシの下にもぐり込みあえて仰向けになり、手足全てで、引っ掻くという、必殺の型だ。


 ネコジャラシは、四本の手足で、引き裂かれた。猫は、ボロボロになったネコジャラシに、とどめを刺すため、噛みつこうとした。


 ネコジャラシは、最終魔法を使った。自分の羽根をばら撒き、猫の目をくらませると、カラスの尾羽を猫に飛ばした。


「ニャンニャンニャンの型。肉球挟み」


 これは、片手で猫パンチではなく、立ち上がって、両手で挟み込む技だ。

 

 立ち上がった時に、弱点のお腹をさらすので、危険と隣り合わせの技だ。

 しかし、決まれば、とてもカッコいい。


 飛んできたカラスの尾羽を両手で、つかみ、そのまま投げ返す。ネコジャラシの驚いてつられた視線が、尾羽を追ってしまい、猫から外れてしまった。その時、少しも動かず、ネコジャラシの死角から、ツメを一閃するという、ぐうたらで、少しせこいが、効果的な技だ。


 この技で、勝負は決まり、猫の勝ちになった。


 ネコジャラシと猫の関係は、今まで通りとなったが、犬の意見で、捕まえたネコジャラシをわざと噛みちぎったりする事はしないと、両者の間に約束が出来た。


 人間が、ネコジャラを取り出すと、猫が、今までよりも控えめにじゃれついた。


 猫の乗りが悪いと思った人間が、ネコジャラシを強く振ると、柄の部分が折れてしまった。


「使えない」


 そのままゴミ箱に捨てられてしまったネコジャラシを見る猫の目が、細くならずに点になった。





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