第3話 それほどギャグではないけどシリアスっていうわけでもないかわいそうな男子高校生の話


あるところに、ムエタイボクサーが居た。高校生である。郷田剛(ごうだつよし)。

が、普通の高校生、どーしてもエロいことばかり考えてしまう極普通の男子高校生だった。

でも、

「俺には、父がなれなかったムエタイちゃんピヨンになるという生涯の夢があるんだ!!」


彼は高校二年の夏休みに、父に連れられタイはバンコクに来た。勿論ムエタイ関連だと言われて。

が、父がバンコクのその手の者たちに訊くと、パタヤに最高の術士が居ると言う。

何の術士かは父は説明しないが、もともと父は極端に無口なので聞かない俺。


ーーー


施術が終わり、麻酔から覚めた剛。

「やっと目が覚めたわね、鏡を見てごらんなさい」

施術者に言われ、姿見の前に立つ剛。


ん?

俺がいないけど、、どこにいるんだ?

キョロキョロ見渡しても、他に鏡らしいものはない。


「あら、あたしの技術がすぺしある過ぎて、わからないのねw可愛いわねぇ、、」

さっきから思ってたけど、声が少し野太い先生である。すっげースタイルいいし、美人なのに、、少々がたいがでかく、アジア人(多分タイ人)なのに西洋人並のガタイかな?父親が白人なのかな?


「あなたは、わりかし小さめなのでよかったわ。背丈が少しあるのは、細い分美人さんになるから利点よ?」

何言ってんだこいつ?


いて、、いててて、、からだのあちこちが痛くなってきた、、、


「あらあら、麻酔がきれてきちゃったみたいね、これ飲んで。先に飲ませておけばよかったわね、ごめんねー」

と、その美女医師から何錠かの錠剤を飲まされる。ほどなく痛みも和らぎ、酷く眠気がしてきた。


「今日までは、取ったのと、上半身全体だったけど、安定したら、下の方の改造もしましょうね♪」

と、夢心地に聞こえてきた。

なんの改造?


ああ、そういえば、今さっき目覚める前にも、何度か寝覚めた記憶がないでもなかったなー、、顔面全部包帯で、、、

俺、事故にでもあったのかなぁ、、親父、一緒だったし、生きているのかなぁ、、、

闇に引き込まれる。



ーーーー



親父を半ごろにしにして、海にぶち込んで、パタヤから空港へ向かうバンの中にいる。

パスポートは持っているけど、、、、どーしよ?どーやって説明?



なんのことはない、タイの空港カウンターから始まって荷物検査、イミグレ、搭乗口のローカルスタッフ(タイ人)まではすんなりだった。普通なのか?よくいるのか?なんか当たり前のようにスルーされているけど?

飛行機搭乗はボーディングパスのみなので問題なかった。


で、

成田。

いきなり奥に引っ立てられて、、さんざん物笑いにされ、、俺が悪者にされ、強制的に謝罪させられ、、、反省文書かされ、、、終電車が無くなった直後に開放された。最後に待たされた2時間は、終電車が終わるのを待たされたのか?


翌朝帰宅。母は何も言わなかった。知っていたに違いない。

俺は高校卒業したらこの家を出よう。親と縁を切ろう。そう心に決めた。


つーか、、学校?どーすっぺ??



友人に電話をかける

「よう、、元気か?」俺

「つよし、ドコ行てったんだ?おふくろんさが外国に行っているとか言ってたけど、、」まさお

まさおは小学校からの友達。高校も一緒で、ムエタイも一緒にやっている。


ーーーー


「どーしよ、これ・・・」


目の前には真っ白く灰になったまさおが突っ立っている。

俺の部屋。

さっきの電話で呼び出した。


半時ほど放置したら、徐々に顔色を取り戻したまさおが

「・・・しんじられねーものを見ているぜ?」

「ああ、当人の俺が最も信じられないんだがな、今もって。」俺


「タイの技術って、すっげーんだな、、」

そっちかよ親父と同じ目に合わすぞこら、、


ちょいと背の高い美女

それが今の俺だ。

だが、性別は「無性」。

勿論あのあと、”改造”はさせなかった。ちんちんたまたまちょんぎられた俺に、もう何も必要なもんはねーんだよ。


無性だと言われる天使のごとく生きてやる、そ~言えば、タイの首都って天使の都って言われてるんだよな?こーゆー意味なのか?


あ、でもマヨネーズとかヒソミルクのあれとか、ちんちんついているよなうらやましい、じゃなくって、冒涜だよな?

まー仏教徒会社だからいーのか、、


まさおも「いや、すっげー美人だよ?学校じゃ、ダントツトップの美人だと思う。思うけど、、、ゼッテー無理、、むらっとかはかすりもしねぇ、、、」

いや、ありがたいけど、ありがたいんだけど、、少し納得行かねー俺も居るのが、なんか納得行かねーんだが、、

なんだろ?


母親は時を読むチートでもあるのか、その時に学校の女子の制服のセーラーを持ってきた。9月一杯は夏服なので、それを。

まさおを一応追い出して着替えた。

俺がタイに行っている間に母親が用意したのだろう、姿見が部屋にある。

似合うじゃん?


いいぞ、と入る許可を与えたまさおも「ああ、似合ってるなー、、」そっけなく、つまんなそうに、、、

まぁ、、いいけどな。男のダチにムラッっとわずかでもされたら俊速でぶちかましだよな?



ーーーー



9月1日

学校では問題になるどころか、すっげー人気だった。特に女子から。

異性への(つーか、俺からしたら同性だけどな)性的アピールゼロの超美人ってのがつぼったらしい。

周囲にわいわい女子が集まると、すっげーこっ恥ずかしいが、、たまたまが無いせいなのか、まったくむらっとも来ないのが悲しいし寂しいものだ。



が、なんか、その後、勉学にも集中でき、ムエタイにも集中できるようになった。

流石にムエタイは、体型がどんどん女になっていくので筋肉がどうしても男より不利になってくる。

なので仕方ないので、ムエタイでは異色のアウトファイターに転向。


学校はまだいんだ、そうやって守ってくれる生徒たちがいる。

が、


ただ、大人たち、教師とか近所とか、あとどっから嗅ぎつけたのかマスコミの大人とかがゲス極まりないのがどーしょーもなかった。

特にマスコミ。

取り囲まれ、身動き取れず、中には触ってくる者もいたので思わずぶっ飛ばしたら、俺が逮捕された。

触った奴等、俺を取り囲んで身動きできなくさせた奴等は無罪放免。

キチガイかよ日本の警察。


ムカついてあとから調べると、普通の女性達が暴行された場合も、被害者である彼女達に対する仕打ちがすげーらしい。嫌がらせがすごく、提訴を取り下げられた者も多く居ると。警察って何?


ソー言えば、あのタイのおねえ医師が言っていたな

「日本ほど居心地悪い場所はないわよ?私達には。」

聞き流していたけど、、、

「ダメな国は入国させない。それはまだいいの、正直だから。でも、入国させるくせに人間扱いしない国って、、ほとんど他にないわよ?」

とか言っていた”人間扱いしない”って、こういうことだったんだな、と今更。でも被害に遭って見なけりゃわからんよな?


今回の”実際は俺は被害者なだけなのに加害者にされた事件”に、教師共は「絶好のチャンスだ」とばかりに俺を退学にさせようとしていた。

全校女子達が阻止に動き、それを、気の利いた女子が英語で拡散。国内より外国で学校名が有名に成るくらいになった。人権侵害ってのは日本では理解できないほど、世界各国ではまともに扱われているらしい。

国連人権委員の委任委員が調査に来たときは、流石に校長もあせったらしい。

俺に「何も言うな」と偉そうに言ってきたので、全てばらした。当然だが、マスコミと警察の件もばらした。


その委任委員は、「国外に出ることを勧める。」と助言してくれた。これだけバラすと、権力からの仕返しがかなり危険だよ?と。それを僕らは把握しているのだから、と。

俺の父親がまだタイにいるので、そっちに行くかも、と言ったら、喜んでくれた。君にとってはベストの選択だろう、君たちにとってそこは世界で最も偏見と差別の無い国だ、と。


クソ親父と共犯の母親のせいで、こうなってしまったが、いまさらくっつけることもできないだろう。

指だって切れてから15分以内だっけ?その程度なのだから。


委任委員と話した夜、母親に父に連絡をとり、向こうに転校するよう手続きすべて行うようにと言いつけた。

母親は無言で頷いたが、少しほっとしているような顔を見せた。



ーーーー



ムエタイの本場でのチャンプ挑戦は厳しかった。

が、異色のアウトファイターということで、しかもオカマということでかなり人気が出た。

日本での色モノ扱いとは少し違い、もっとまとも?な扱われ方だ。


で、そこそこ稼げる。現地語習得もジムに通って一年でなんとなく出来るようになっていた。

(言語は現場で覚えるのが一番。学校通ってもいいけど、その後やはり実際に使っていかないと使えるモノにはならない)


そのうち27になり、体力的に引退も考え始めた時、初めてチャンプを取れた。

一回だけだったが、夢は果たせた。


”アウトファイター用ジム”は他に無い、と勧められ、引退後にジムを始めた。

練習生はほとんど外人。生粋(タイ人)にはアウトファイターはなかなかでない、、、


父と母は日本の家を売り払い、こっちの田舎の海辺に引きこもっている。彼らはこちらの言葉を最初から話すことができていた。なんか裏ありそうだが、、関わるのがめんどくさいので放置。



数年後、少し余裕ができたので、子供の練習生を入れ始めた。主に貧乏家庭の。勿論住み込み。手伝いをすれば練習と衣食住は無料で。

地方に興行に行くと、子供戦士は結構人気だ。外人戦士も珍しさ人気があるけど。

しかも、俺を覚えている者たちが未だに多く居るのが嬉しいやらなんやら、、、



ただ、

たまになー

日本人が訪ねてくるんだよ、、

主に二丁目方面?の方々が。

俺は全く疎いので、すべて親父の方に振っているが、、、




で、ある日気がついた。


親父がなりたかったのは、ただのムエタイチャンプじゃなかったんだ、、って、、、


奴がなりたかったのは、、、


母だけは優しくしてやろうかな・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

修行の邪魔だからちんちん切っちゃったと嘘付いてみたが(当然だがシモネタ注意) ユニ @unittjtkhs

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ