もう彼女の傲慢さにうんざりです

あやと付き合い始めたのはいいけど、デートらしいことはしてない。

あやの家に行くことがほとんどだ。今日もだ。

外だとあやの化けの皮がいつ剥がれるか分からないから(だとおもう)

お家デートではあやが一方的に喋ってばかりで、相槌あいづち打たないと「何で聞いてないの!」とヒステリックに言われる。

「あのババア、HRも授業も話長いんだよ! あんたの担任は話が短いからいいよねー」

あやの担任である川上かわかみの愚痴が始まった。

川上の授業は半分ぐらい「韓流はんりゅうスター・ドラマ」になる。

韓流ドラマ専門のチャンネルをいくつか契約してると自慢してた。

皮肉にも川上の担当は世界史だ。

朝鮮王朝の単元になると韓流時代劇に絡めて説明するので、正直よく分からない。

ついていけるのは一部の人だけ。

さすがに試験問題は教科書やワークをベースにしたものだけになってるが。

あやの気持ちは分からなくもないが言い過ぎである。

一方俺の担任である深澤は事務事項しか言わないタイプ。


「この間私に告ってきてた人、生理的に無理。工業高校でしょ? あそこガラ悪いし、DIY趣味なんか陰キャっぽいから無理」

メッセージアプリでこくってきてたそうな。

「同じ趣味の俺の前で言う話!? たーにーもりなねえも色んなもん作ってるじゃん」

「はぁ、別にあんたたちのこと言ってるわけじゃないし。ばかなの?」

ちょっと何言ってるかわからないんですけど。

なーんて言ったら張り手がきそう。


俺がものづくりに夢中になったのはあやの兄と姉の影響である。

たーにーこと太一たいち兄ちゃんが自作の本棚を作っている姿を見て憧れたのがきっかけだ。

それ以来たーにーと一緒に作ったり、ホームセンターで買った材料を俺に分けてくれたりと楽しくやっている。

りなねえは趣味で裁縫をしているのだが、職場のママさんから「子どもの通園グッズ作って!」「老人ホームにいる義母のズボンの裾上すそあげして欲しい」と頼まれるのである。しかもこころよく引き受けるのである。

その影響なのか俺も裾あげや手直しをりなねえから教えてもらってから、自分で直している。というかあやのズボンがほつれたときに「てっちゃんがやってよ」と問答無用で押し付けられた。

それ以来「マスコット作って」「ブックカバー作って」と頼まれるようになった。しかもそれをあたかも自分が作ったかのように周りに見せびらかす。


あやは自分の人気とりのためなら、兄や姉そして俺を利用することを当然だと思っている。

断ったら暴言暴力がついてくる。


――彼女の傲慢さにこりごりです。

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