もう足を踏んづけられるのはこりごりです

 あやとの行き帰りは一緒じゃないといけない。

 彼女が一方的に決めてきたことだ。

 たまには他の人と帰りたいし話したいし一人になりたいときもある。

 そうはいかないのがあやである。

 他の女子と話していたら足を踏んづけられる。というか踏んづけられた。


 いつだったか日直で事務的なやりとりをするために女子と話していた。

 その姿をあやにみられた。

「今日てっちゃんと日直?」

「うん」

 あやはまじまじと女子のカバンをみる。

「ねぇ、カバンにつけてるのは手作り?」

 あやが指したのはカバンの持ち手についてるニコちゃんマークのマスコットである。

「うん。後輩手作りでもらったの。もう後輩超可愛いの!」

 目を輝かせて話す女子。

「いい後輩じゃん。大事にしなよ」

「うん。じゃぁ、私はこれで」

 日直は各クラス男女ペアなんだが、いつもの登校時間より10分程早く職員室の前に集まって、教室の鍵や日直のノートを取りに来て、学年主任からの連絡事項を聞きに行くのが仕事だ。

 俺が日直の日はあやも一緒に早く来る。相手をチェックするためだ。


 あやは女子と話終わった後「ちょっと来て!」と俺の腕を掴んで体育館の道具入れへ向かった。

「あの子、バレー部の田原たはらだっけ? いも臭い女の癖にてっちゃんに話しかけるなっつーの。あれ見た? カバンにつけてたマスコット。自己満じこまんの塊ね」

 田原の悪口を言いながら俺のローファーの右足側を何度も力強く踏みつける。

「いったっ! 何するんだよ!」

 すかさず言い返したら「私以外の女子と話すてっちゃんが悪いんでしょ!」とさらに力強く踏んづけるあや。

 さっきまで褒めてたのに、俺の前だけ相手の悪口を言う。

 あやの癖だ。


 というかこのローファー一週間前に買ったばっかなんだけど!

 あのー、汚れたり壊れたりしたら弁償してくれるんですかねぇ・・・・・・。

「頼むからやめてよ! 痛いんだけど!」

「男の癖にこれぐらいの痛みも耐えれないの? 貧弱ひんじゃくだね」

 仁王におう立ちで嫌味が返ってきた。 

 

 あやと二人っきりになるとずっとこんな調子だ。

 どこがサバサバだ。ネバネバの間違いだ。

 彼女は人の見えないところでするからたちが悪い。

 周りは信じないだろうが。

 

 ――正直言ってあやのことが昔から苦手だ。

 全部一方的に決めてくるし、話を聞かないし。

あの時断りたかったけど、断ったら断ったで見えない所で何かされる。


自分の気の弱い所がつくづく嫌になるけどうじうじ悩んでられない!


 自分の精神衛生上良くないし、なんとしてでも高校卒業前に別れないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る