第10話 真実

ある日の事、私の部屋のマンションのドアの前に彼は現れた。



「先生」

「香崎君。何してるの?私はもうあなたの先生じゃ……」

「そんな事よりも、あんたに渡したいものがあって」

「渡したいもの?」

「これ、いらねーの?」

「……小切手……いらないから返したんだけど」


「本当にいらないの?」

「いりません!」

「じゃあ、これは俺のものという事で俺が預かっておく。その代わり俺と付き合ってくんね?」

「その代わりの意味が分からないから。私は忙しいので」



そう言うと私はドアを閉めようとすると香崎君に止められた。



「ちょ、ちょっと……」



押し入れるようにスルリと部屋に入って来るのと同時にキスをされた。



「………………」



「あんたが俺に対して嫌なイメージしかないかもしれないけど今回はマジで付き合って欲しいんだ。あんたに話がある」


「私はない!帰って!」

「帰らない!デート位してくれても良くね?」

「デート!?もっと嫌っ!」

「じゃあ今度は本当に妊娠させちゃうよ」


「………………」



「あなたは、そうやって私を脅して面白がってる。大体、あなたは何がしたいの?何を考えているの?」


「言っておくけど、脅しているようだけど、俺、あんたを妊娠させるつもりは一切ないから」


「………………」


「俺、あんたが子供に対する思いの事、知ってるつもりだし、それで妊娠させるなんて人間として最低行為でしょう?」


「香崎君」

「あっ!今、案外イイ奴って思ったっしょ?」

「お、思ってないですっ!」

「隠さない、隠さない。それより俺、チャンス逃したくねーから」


「えっ!?チャンス?」

「今はあんたを困らせて迷惑ばかり掛けてるけど、その理由あんたに理解して欲しいんだよ!」

「……香崎君……」

「第一、あんたが言ったんじゃん!本音でぶつかって欲しいって」



「………………」



「だから……」


「分かった! 分かりました!全く!」




私は香崎君に付き合う事にした。




「今日中に話すから取り合えずデート楽しもうぜ。ちなみに今日は先生と生徒は抜き。本当にプライベートとして付き合って欲しい優佳ちゃんに……いや…管崎 優佳として」




計算なのか分からない


だけど


今日の彼を


一人の男として


香崎 裕矢として


彼が考えたデートコース


とにかく楽しむ事にした





日も落ち、夜 ――――




私達を乗せたリムジンは遊園地へ……



「貸し切り遊園地」

「えっ!?どれだけあなたの所凄いの?」




グイッと私の手を掴まれ、ドキッと胸が高鳴る中、私達は手を繋いでデートした。


私達は小さな子供のようにハシャグ。




そして観覧車内。




「優佳……今日は…無理言ってごめん…」




ドキン

彼がふと見せた高校生の男の子の表情に可愛く見えてしまい、胸が高鳴る。




「えっ? べ、別に楽しめたから」


「そっか……それで本題なんだけど、あんた以前、自殺しようとしたって言ってたじゃん」


「うん」


「その時…誰かが助けてくれたんだろう?」

「うん」


「あんたが18なら、俺はそん時……14」


「えっ?」




私を立ち上がらせキスをした。



ドキン

胸が高鳴る。




「あん時は、マジで焦ったけど……あんたが生きているって事は奇跡だと言うべきか……運命だと言うべきか……」



「裕矢……?」



「俺も……自殺図ろうとしたんだ……」

「えっ……?」

「同じ日……同じ場所で……そうしたら…あんたの先約いて……」


「…えっ…? じゃあ……あの時…の…男の子って……」



「俺」



「……親なんて信じない! 当時は、今の環境に生まれた事に凄く嫌で仕方がなくて……逃げたかったんだ……何でもお金、お金で解決していた事に嫌気がさしていたから……中学ん時の俺には耐えれなかっただと思う……」



「………………」



「だから……俺が卒業するまで学校は辞めんな!」


「えっ? 裕矢……」


「俺、あんたを先生に戻す」


「でも……辞表出したし無理だよ」


「辞表なら撤回出来る。校長達には俺から、そのままにするようにしてあるし、クラスの方にも事情があって休んでる事になってるから」


「えっ!?」


「……俺……あんたが好きだから……」




ドキッ

意外な言葉に胸が大きく跳ねた。



「先生と生徒だけど……俺、あんたに傍にいてもらわなきゃ俺は学校辞めるまでの事。あんたがいない学校なんてつまんねーし」



「裕矢……」



「あんたが子供を愛せないとしても、先生になった理由はあんだろ?」


「それは……」


「だったら、そのまま突き進めよ!俺があんたを困らせるのもあんたの気を引く為。正直、あんたの涙見んの嫌だし……だから関係持つ事になっても俺を信じて欲しい。優佳…今にも泣きそうな顔で関係持つのに抵抗ある気がしたから…」



「そんなの当たり前だよ…だって…」



「今なら好きだって言えるから、優佳もそれに応えて欲しい……お互いの気持ちがあるなら関係持つのに抵抗ねーだろ?」




私は裕矢に抱き付いた。


裕矢もそれに応え、ぎゅうっと抱きしめ返した。




その後、私は学校に戻る事となった。

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運命の再会 ハル @haru4649

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