民宿えんこ チェックアウト
この謎はしかし、民宿に居る全員が謎とも思わない簡単なものだった。
ヨージ君は『人間の子供では』ないのである。そう『おさるのヨージ』君だったのだ。
ちなみに、あの三角防止の黄色いおじさんとは、何の関係もない。
四年前、ヨージ君を預かった女将は、苦労しながらも飼育を続け、猿と触れ合える民宿として売り出したのである。何にもなかった町に、一つの名物が出来上がったのだ。そこに、コアな旅行マニアが目を付け、同時に、可愛いものマニアでもあった真人が食い付いたのは、必然的だったと言えるだろう。
一泊二日の短い滞在を終えた真人は、「また、来年も来ます」と、民宿の二人と一頭に挨拶をし、後ろ髪を引かれながら、玄関の引戸を開けた。門を出ると、一度振り返り、民宿の佇まいをその目に焼き付けた。
その門柱には、普通の家なんかにも掛かっている様な、控えめな表札が看板代わりにぶら下がっている。
『猿子(えんこ)』というの文字が掛かれた表札が。
~完~
民宿えんこ @mamikana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます