民宿えんこ チェックアウト

この謎はしかし、民宿に居る全員が謎とも思わない簡単なものだった。

ヨージ君は『人間の子供では』ないのである。そう『おさるのヨージ』君だったのだ。

ちなみに、あの三角防止の黄色いおじさんとは、何の関係もない。


四年前、ヨージ君を預かった女将は、苦労しながらも飼育を続け、猿と触れ合える民宿として売り出したのである。何にもなかった町に、一つの名物が出来上がったのだ。そこに、コアな旅行マニアが目を付け、同時に、可愛いものマニアでもあった真人が食い付いたのは、必然的だったと言えるだろう。


一泊二日の短い滞在を終えた真人は、「また、来年も来ます」と、民宿の二人と一頭に挨拶をし、後ろ髪を引かれながら、玄関の引戸を開けた。門を出ると、一度振り返り、民宿の佇まいをその目に焼き付けた。

その門柱には、普通の家なんかにも掛かっている様な、控えめな表札が看板代わりにぶら下がっている。


『猿子(えんこ)』というの文字が掛かれた表札が。


~完~

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民宿えんこ @mamikana

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