翌日
翌日、真人はいつもより早い時間に目が覚めてしまった。トイレに行きたくなったのだ。ところが、この民宿には部屋の中にトイレは無い。その為、用を足すには一度、部屋を出なければならない。真人は、寝ぼけ眼を擦りながらドアを開け、廊下へ出た。と、食堂の方から、微かに男性の声が漏れ聞こえてきた。
「・・・めだぞ。虫歯にでも・・・ったら、大変じゃ・・・か。メッ!だよメッ」
どうやら、大将がヨージ君を優しく叱り付けている様だ。真人は「何か、食べちゃいけないモノでも食べちゃったのかな??」なんて思っていると、ガチャっと食堂のドアが開き、大将とヨージ君が、手を繋いで一緒に出てきた。思わぬ所で人と鉢合わせをした為か、大将は少しビックリした様子を見せたのだが、直ぐに照れた表情を浮かべると「あ、おはようございます。もしかして・・・さっきの、聞こえちゃいました??あ、いや実は、この子がクッキーを何枚か盗み食いしちゃいましてね。キッチンにある食器棚の上にクッキーの缶を置いてたんですが、どうやら見つけちゃったみたいで。あ、お客様にお出しする様なものでは無かったので、良かったんですが・・・」
その食器棚というのは、業務用の少し大きめのもので、高さは二メートル以上ある。棚の前には、狭い通路を挟んで、大人の腰程の高さがあるテーブルがあり、脇には、座って休む為のパイプ椅子が一脚置いてあった。
しかし仮に、ヨージ君がテーブルに上がったとしても、食器棚の上までは手が届かない。また、パイプ椅子をテーブルに上げ、その上に乗って取ろうとしても、棚とテーブルの間の通路に、椅子ごと倒れてしまい危険だ。また、部屋には脚立などの道具もなかった。
さて、こういった条件の中、五歳のヨージ君はいかにして、食器棚の上にあったクッキーの缶を手にしたのだろうか。
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