民宿えんこ チェックイン

玄関の大きめな引戸を開けると、来客を知らせる軽快な音楽が民宿内に響き、直ぐ様奥の方から、「はーい、ただいまお伺い致しますー」という、元気な女性の声が聞こえてきた。

顔を見せたのは、民宿の女将だった。エプロン姿であった事を見るに、夕食の準備をしていたのだろう。

「あら、真人さんお久し振りでございます。大変、お待ちしておりましたのよ。ささ、どうぞ、お上がりくださいまし」

「あ、どうもどうも。今回は、一泊と短いですが、宜しくお願いします」

真人は、一通り女将と挨拶を交わすと、早速部屋へと案内してもらった。しかし、テレビも置かれてない部屋では、特にやる事もない。真人は、ただただ食事の時間がくるのを待った。というのも、目的であるヨージ君と触れ合えるのが、この食事の時間であったのだ。真人の頭の中はもはや、ヨージ君で一杯なのだ。

しばらく部屋でうとうとしていると、入り口のドアがトントンと叩かれ、女将が顔を覗かせた。

「お食事のご用意ができました。食堂までお越しくださいませ。」

いよいよ、待ちに待った時間である。真人は逸る気持ちを抑え、ゆっくり腰をあげると、静かに食堂へと向かった。

食堂に着くと、先に二人の男性客が座っていた。別々に居るところを見ると、彼らも一人旅の様だ。適当な所で座ると、間もなく料理が運ばれてきた。どうやら今日の宿泊客は、自分も含め三人だけの様である。始めに女将が配膳に回り、入れ違いで大将が回る。その後すぐに、小さな可愛らしい姿がキッチンの影から現れた。ヨージ君だ。他の男性客達を回ると、こちらに近づいてくる。ひょこひょこ歩いてくる姿がたまらない。思わず顔が綻んでしまう。見ると、他の男性客達もヨージ君の可愛さにやられてしまっている様だ。スマホで動画や写メを撮っている。真人も当然、スマホでヨージ君の動画を撮っていた。ヨージ君は、真人の目の前までくるとペコっと頭を下げて料理を配膳し、またひょこひょことキッチンの方へ帰っていった。全ての料理が配膳されると、再び奥の方から、ヨージ君を抱いた女将と大将が姿を表し、あいさつ回りを始めた。人の良い夫婦とヨージ君に逢えて、真人は大満足であった。

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