第131話 褒美の秘密と魔窟への疑念

 次の日。僕は複製体マイコピーと入れ替わり、お祖父様が宿泊されている宿で二人、卓を挟んでいた。一応はカー=マインが泊まる宿の中で最も良い部屋ではあるのだが、公爵家の当主が泊まるには不釣り合いな狭さだった。

 規模の大きな城塞都市の貴族御用達の宿とは言え、これが限界と言うことだろう。


 さて、今回連れてきたメイドに淹れられた紅茶を一口飲んでから、お祖父様は口を開いた。その頬は穏やかな笑みを湛えている。


「どうじゃ、喜んで貰えたか?」

「無論です。酒は早速連盟ギルドの者全員で飲ませて頂きました。皆大喜びで、夕餉が終わっても暫く飲み続ける者が居た程です」

「ならばよいよい。他は気に入って貰えたかの?」


 僕は苦笑した。

 昨日の驚きは、気に入ったと言う言葉で済ませて良いものでは無かったから。


「装備一式は最初、皆で儀礼用かと思いました。私が魔術で調べ実戦用だと気付いてから唖然としました。非常に嬉しく思いましたが、あれは改めて仕立て上げたのですか?」

「最初はの、剣だけを予定しておったのよ。今回使われた素材の数々は歴代の当主が自ら討伐した際に持ち帰ったものが大半でな。宝物庫に眠っておったそれらを持ち出した形になるの」

「なるほど」


 素材に用いられていた水龍アクア・ドラゴンやダンダリラは、どちらも個体によっては危険度第7段階一歩手前の脅威的な存在ばかりだ。

 そんな化物を当主自らが討伐したとあれば、お家の武勇を誇る証明とも言える代物だ。これが伯爵家などなら、家宝となっていてもおかしくない。

 幾ら領地を救った英雄への褒美とは言え、代々引き継いできたそんな代物を渡すには多少なりと躊躇いが生まれて然るべきだ。でありながら、当時はまだ孫とも知らぬ一介の冒険者に渡そうとする辺り、本当に凄い決断だ。

 まぁ、僕もお祖父様と同じ立場だったらなら、同様のことをしていただろうなとは思う。


 ――当然のことながら、現段階で既にザルード公爵家の当主は僕である。故に、本来であればお祖父様が持ってきたものは全て僕の所有物であると言える。

 だが、今後実際にザルード公爵家の政務や財政、その他は全てお祖父様に委ねる形なので、僕は現段階では公務の一切に携わっていない。


 一応現段階で各地から送られてきている状況報告や、総資産などには全て目を通しているが、本当に目を通しただけだ。それらを現在どうしているかまでは知っているが、今後どうするかについては完全にお祖父様に一任している。

 また今回お祖父様が持って宝物もそうだが、ザルード公爵家が宝物庫に秘めているものに関しても、どう言った効果を持ち、どれだけの価値があるものを所有しているのかは把握していない。

 目録自体には全て目を通したが、これまた本当に見ただけだ。文字を文字として認識した訳では無く、形象けいしょうとして記憶していただけだ。


 そう言った理由から、今回お祖父様がこうして僕が知らない貴重な物を持ってきていることも決して勝手からくるものでは無く、正しく当主であるカー=マインの許可を得た上での行動となっている。

 内実を見ればカー=マインの物をカー=マインに渡しただけではあるが、これはザルード領を救った冒険者に対する報奨であり謝礼でもある。対外的な意味でも、決して蔑ろに出来ることでは無いのだ。


 お祖父様の説明は続く。


「察しておるじゃろうが、あの防具一式に関してはジャスパーがお主と判明してからじゃな。あの後すぐにお主の体格と希望の形を記した洋紙を屋敷に飛ばした」


 そう言えば、父上達との会話が終わった後に身体の寸法を取られていた。

 あれは今後公爵として身に纏う服飾を用意する為だと解釈していたのだが、そう言うことだったのか。

 それにしても早馬で先に帰ったとは言え、良く職人は間に合わせたものだ。

 僕が城塞都市ポルーラに入るまでに期日はあったとは言え、あれらはそんな短期間で製作出来るものでは無いと思うのだが。


「鎧とマントに用いた物も剣と似たようなものでな。準備した素材や金属は宝物庫に眠っておったものよ。職人の者達は瞳を輝かせて槌を振るっていたと報告を受けておる」


 お祖父様の言葉で、あの装備一式が製作された際の裏事情が見えた気がした。

 今は大工職人などは都市内の家屋や城壁等々の修繕で大活躍しているが、武器や防具の需要はそこまででも無い。普段武具製作の職人として腕を振るっている者達は、現在は鍋や包丁などの生活必需品ばかり作っていた筈だ。

 だからこそ、公爵家直々の依頼であり、且つ滅多にお目にすることの出来ない素材での製作に目を輝かせて作ったと、恐らくはこういうことだろう。


 それにしたって製作速度、品質共に、凄まじい熱意を感じさせるものがあるな。

 ザルード公爵家が御用達としている職人達とは全員と顔を合わせているが、彼ら、彼女らの姿が一気に頼もしく感じてきた。


「ちなみにだ。鎧の裏の魔術刻印には気づいたか?」

「ええ。ある意味あれが一番驚きました。あれは余程の魔導士か魔術士でなければ刻めぬかと」


 僕が素直な考えを述べれば、お祖父様は苦笑を浮かべた。

 はて何か変なことを言っただろうかと首をかしげれば、お祖父様は何とも楽しそうに頬を上げた。 


「あれはな、ララーヌにやらせた」

「え?」

「カインは知らなんだろうが、あれは元々宮廷に招かれる程の付与魔術士でな。幼き頃から様々なものを作りだしては周囲を驚かせておったよ」

「なんと……お祖母様が」


 正直、かなり驚いた。あれは本当に素晴らしい出来栄えだったからこそ。

 公爵家の屋敷で様々な人達に顔通しをした際、ザルード公爵家お抱えの魔術士達とはもちろん挨拶を交わしている。流石と言うべきか、『七属性魔術士筆頭セブンズ・カラーズ・ラーレスト』とまではいかなくとも、凄まじく腕の立つ魔術士達だった。

 正直に言えば、あの魔術刻印はその者達が刻んだものとばかり思っていたのに、まさかのお祖母様とは。


 円形闘技場アンフィテアトルムの修復で魔術刻印に関しての知識を得たからこそ分かる。あれはその道の技で言えば、『七属性魔術士筆頭』にだって引けを取らない程に優れたものであると。


「まぁ、ほれ。あれはお主と気付いておったこともあろうな、さぞ張り切っていたと耳にしておる。まぁ恐らくはお主では無くとも手を抜くことは無かったであろうがな。領地の恩人に渡すと言えば喜んでやってくれたであろう」

「いつかジャスパーとして感謝申し上げたいものです」


 僅かな間があり、お祖父様は再び苦笑を浮かべられた。

 僕もまた釣られるようにして苦笑を浮かべた。二人の頭に浮かんでいる光景が同じだろうからこそ


 実を言えば、お祖母様に、そしてザルード公爵家が抱える裏人の全てには僕の正体は明かしてある。裏人に関しては今後の活動に関して必要であることから明かしたのだが――お祖母様に関しては明かす前からバレていた。

 僕がジャスパーとしてお祖父様へ挨拶に伺った際、帰り際に僕の姿をひっそりと見ていたらしい。その時既に、ジャスパーが僕であると気付いていたとか。


 僕もお祖父様もそれを聞かされた時は酷く驚き瞠目したものだが、お祖母様はただたおやかに微笑んでいるだけだった。

 お祖父様が「どうして教えてくれなんだ」と言えば、「あら、可愛い孫が隠していることを明かす祖母がいるものですか」と返され、眉根を寄せて口を噤んでいた。言葉を返せぬ納得がお祖父様の中にあったのだろう。

 その後、判明した理由にはお祖母様の種族による技能も関係していたと教えて頂いたのだが、それを含めてあの時は本当に驚かされたものだ。


 そこで、あれ? と思う。

 え、じゃあもしかして、


「では母上も?」

「あれは付与は無いの。だが水の魔術に関しては比類なき才能を持っておってな。実を言えば昔は宮廷の魔術士として招かれた。本人が望まなかったこと、わしが盾になったことでそれは叶わんかったがな。もしサラが宮廷の魔術士として過ごしておれば、今の水属性魔術士筆頭アクア・カラーズ・ラーレストは確実にサラであったろうな。

 昔はよくカルロもわしも、サラを怒らせ流されたものよ」


 呵呵とお祖父様は笑うが、国王や公爵を魔術で押し流す王妃は――もしかしたらご令嬢時代かも知れないが――他に居ないと思う。なるほど、国内最強は母上と言われる訳だ。

 ああいや。最近思い出したけれど、母上は人目があるところで父上の頬を張っていると聞く。その上で離縁を申し出て、僕と弟を連れてザルード領に帰ろうとしたとも。

 それだけのことを仕出かしたのに結局折れたのは父上だったと言うし、そう言った点を踏まえても国内最強は母上という認識にもなるか――御歴代最強と呼ばれるアーレイ国王の頬を、よりにもよって人目があるところで張って無事に生きていられる人なんて、母上以外には絶対に居ない――。


「改めて、価値ある褒美の品々、誠にありがとうございます」

「なんの。喜んで貰えたならそれで十分。それに魔窟ダンジョンの話を聞いて丁度良かったと思うたわい。――カイン、の魔獣はそれ程に強かったか?」


 突如、お祖父様の目付きが鋭いものへと変わった。

 それは戦士としての視線のようで、孫を心配する祖父のようでもあった。

 お祖父様の問いかけに対し、僕は僅かに眉根を寄せた。強いと口にするのは簡単だが、あれはその一言で済ませていい相手では無かった。


 暫く言葉を選んでいた僕だったが、結局は思うままを口にすることとした。

 どう説明しても適切なものにはならないと思ったからだ。


「戦いらしい戦いはしておらぬので、正直どうお答えすればよいか分かりません。ただ強い弱いでは無く、脅威であることだけは確かかと」

「その時お主は配下を連れておったと聞く。言っては悪いが足を引っ張ろう。もしお主一人であったならどうだ?」


 どうだろうか。果たしてあの時一人だったとして、僕はどうなっていただろう?

 負けることは無かったと断言するが、仮にミミリラや連盟の皆が居なければ僕は確実に真っ向から戦いに臨んでいただろう。


 そうなれば、どうだっただろう?

 負けは無い。されど、無事で済んでいたと断言することは出来ない。


「曖昧なお答え申し訳ございません。分かりませぬ」

「ふむ」

「あの時引いたのは配下を思ったのは事実。但し一人でその魔獣と戦ってどうなっていたか。私の直接的な攻撃では傷一つ付けることは叶いませんでした。魔術が効いたからこそ勝利しましたが、そうでなければどうなっていたか。

 付け加えれば、仮に攻略を進めていたとして、あれより下に階層に潜れたかどうかも行ってみねば何とも言えぬところがあります。故に分からないと、そうお答えさせて下さい」

「なるほどの」


 お祖父様が真剣な顔で顎を摩っている。

 僕はそんな様子を見ながら紅茶を飲み、口を開いた。


「ご心配お掛けして申し訳ございません」

「いや、それもあるがな。もう一つは魔窟探索難易度段階アバドン・ランクのことよ。あそこはわしの記憶が正しければ4の上だった筈」

「はい、私もそう聞いております」


 そこで、お祖父様が何に悩んでいるか気付いた。


魔窟探索難易度段階アバドン・ランク再調査のお話ですか?」

「うむ。お主はわしの問いに分からぬと言うた。裏を返せばお主程の者が分からぬとしか答えられぬ程の場所、4の上で済む訳が無い。仮に四十階層までが4の上であったとしても、それより下の階層が変わるならまた情報は更新されねばならぬ」

「はい」


 魔獣を討伐する際の参考基準となるのが危険度段階なら、魔窟を探索する際の参考基準となるのが魔窟探索難易度段階だ。

 この魔窟探索難易度段階と言うものは、基本的には魔窟が発見され次第、国か領主、また斡旋所から魔窟探索難易度段階を認定する為の公的な調査隊が送られることになっている。

 それは兵である場合もあるが、基本的には専門家である冒険者――大体が探索者アバドナ――に委託される。彼ら、彼女らの調査報告を受け、国や領主、また斡旋所が正式にその魔窟の魔窟探索難易度段階を認定するのだ。


 城塞都市ガーランド所有の魔窟が4の上という記録は、以前から話題に出てきている公式記録三十五階層を持つ冒険者達が国からの依頼で攻略し、その報告を以て認定した結果となる。あの冒険者達の公式記録は、正真正銘の“公的な正式記録“なのだ。


 しかし、そう言った調査も絶対的に正しいとは言い切れない。

 調査を行った冒険者達に見落としがある場合もあるし、または仮攻略をしていない状況で報告をされた場合には――調査内容はその時々で条件が変わることもあるので――今回のようなことも起きる。

 また魔窟は「生きている」と魔導士達が述べているように、内部が永遠に同じ状況という訳では無い。ある日唐突に、あるいはゆっくりと中の状況が変化していくこともある。

 そう言った状況が確認された場合は、改めての調査が入るのだ。これを魔窟探索難易度段階再調査と言う。


「カイン、仮にじゃ。その魔獣にお主が危険度段階を付けるとすればどうする?」

「難しいですね。5の特殊個体と言えばそれまででしょう。ただ6と言って誰も疑わぬかと。その場合であれば、私は上を提言するでしょう」

「わしとその魔獣が戦えばどうじゃ?」

「火をどう対処するか次第ですが、身内贔屓や世辞を抜きにお祖父様なら勝てると思われます」


 お祖父様は首をかしげた。


「何故じゃ? お主でようやく倒せる程であろう」

「先程申しましたように、私の拳は彼の者を砕くどころか傷一つ付けることが叶いませんでした。しかし、お祖父様の槍であれば穿つことは可能でしょう。私が幼き頃、お祖父様はウーツ鋼を貫いたことがあると仰っていたと、そう記憶しておりますので」

「ああ。試しにやったことはあるな。まぁ槍は砕けたがな」

「で、あれば。私がアレを倒せたのは強力な障壁という防御手段があり、たまたま使った魔術が効いただけ。恐らく現段階で地力での破壊は難しいでしょう。

 されど、お祖父様であればその優れた攻撃系技能により彼の者を直接攻撃で倒せる。私はそう思っております」


 そこでお祖父様は更に睥睨した。


「つまり、耐火属性装備を完璧に備えたわしが全力でようやく倒せる、そういうことだな?」

「お祖父様の全力を語るは余りに烏滸がましく。ただ火の対処に関しては間違いなくとだけ。もう少し詳しく生体が分かれば詳細な意見も言えるのでしょうが」

「いや十分だ。王城に着けばカルロに云うておこう。これは放置出来ぬ」

「お手間を増やしてしまい、申し訳ございません」

「感謝するのはこっちじゃて。今後無謀な輩が何を知らぬままに挑み散るのもよろしくない。それに、そんな危険を孕んだ魔窟の下層が攻略されぬままではどうなるか。お主も知っておろう?」

「はい」


 魔窟の中で発生する魔獣とは、長い間討伐、間引きされなければ“溢れ”として外の世界に出てくる可能性が高いとされている。

 その場合の魔獣は非常に手強い。長い年月、魔窟の中の魔力を吸い続けているからだ。十年二十年でそれが起きることは無いが、数百年後に国が滅ぶ次元の『魔窟大発生ダンジョン・スタンピード』が起きる可能性だってある。


『魔窟大発生』はザルード領に於ける大発生とは中身が違う。

 今回ザルード領で発見された大発生は所謂『自然発生型』と呼ばれるものだ。この『自然発生型』の大発生は、危険度段階が低いものから高い魔獣が混合で、無数に襲ってくるからこそ驚異となる。

『魔窟大発生』は、“最低でも”危険度第5段階以上の魔獣が――『自然発生型』程ではないにせよ――大量に溢れ出してくると言う。その中には当然のように危険度第6段階も混ざっているとか。


 もし仮に、万が一に、四十一階層より下の魔獣が強化された状態で地上に出てきたと想定した場合、僕は真っ先に連盟関係者を城塞都市ポルポーラへと【間の間マナ・リル】で飛ばすだろう。

 例えば先日の「コロン」とか言う謎の魔獣が強化された状態で数十体も出てきたとする。そうなった場合、とてもじゃないけれど僕だけでは手に負えない。

 魔窟から溢れ出してきた大発生の波がどこに向かうかは不明だが、もし城塞都市ガーランドにその矛先が向けられた場合、父上や四公爵、辺境伯でも集結しない限り確実に都市は滅びの時を迎えるだろう。

 魔獣の波に打ち勝てるかどうかでは無い。守れるか否かの話だ。

 そして守ることが如何に困難か、僕は先日ザルード領で思い知ったばかりなのだ。


 故に、そんな事態になった場合、城塞都市ガーランドに住まう人達には心苦しくも思うが、僕は『ミミリラの猫耳キューティー・キャットイヤー』の全員とジャルナール、後は傘下連盟の連盟員だけを城塞都市ポルポーラに飛ばすと言う選択肢を選ぶだろう。


「……」


 お祖父様と二人、無言で思案に暮れる。

 紅茶を飲みながら視界を閉じて、“万が一”のことに意識を巡らせる。


 今だからこそまだ安易に考えていられるが、こうして懸念事項として話題に挙がった以上、実際に魔窟大発生が起きた場合を想定しておかねばならないのかも知れない。

 僕がその場に居れば【間の間マナ・リル】で全員を飛ばせる。そうで無いなら『間の転送紋リーリング・コア』で各自城塞都市ポルポーラに……そう言えば、皆が使えるポルポーラ側での目印が無かったな。

 今の時点で気付けて良かった。その辺りは今後きちんと対応しておこう。


 経験値稼ぎレベリングするかー、程度だったあの探索だが、どうにもが大きくなってきたな。

 僕が落ち着くまでの間は、皆には連盟拠点ギルドハウスでの訓練だけに絞らせておこうかな。杞憂に過ぎない、ただの考えすぎかも知れないが、懸念事項が生じている以上、魔窟探索を許可するのは不用意に過ぎるだろう。

 これに関しては以前述べた通りだ。“万が一”と言うのは全ての可能性を否定しきれないからこそ、時に現実として姿を見せるのだ。


 少し時間がもったい無くも感じるが、これも安全の為だ。三種族が交流する落ち着いた時間が取れたとでも思っておこう。

 折角だから連盟拠点の増改築計画について、皆にも意見も纏めておいて貰おうかな。


「……」


 本来父上へのご挨拶を終え、名を揚げる機会があるまでは公爵としての勤めを果たすだけの予定だったのに、ニールの報告からこちら、どうにも順調に物事が進まない。

 ローラルやシムシスも、この魔窟に関しても自分が発端な部分があるので不服は口に出来ないが、やはり内心で溜め息を吐くことくらいは許される筈だ。


 まぁ、後は明日に城塞都市ガーランドを出立して父上へご挨拶をするだけだ――そう思っていた僕にその夜、またもや問題が舞い込んできた。

 それも、極大級の、とんでもない厄介事が。

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