第132話 金の神の怒り

 お祖父様と話をした夜のこと。

 明日の朝には城塞都市ガーランドからの出立を控えている僕だが、夕食を済ませた後はいつものように連盟拠点ギルドハウスのエントランスホールで皆と歓談の時間を過ごしていた。

 一応今後を含めての会話をしているのだが、重要なことは以前から話し合っている。よって、主な話題としては僕が王城から帰ってきた後についてだ。


 以前に比べ随分と華やかにも賑やかにもなったエントランスホールには、パーラ一族やザンド一族の姿も見える。

 彼ら、彼女らは基本的に自分達の住まいでくつろぎの時間を過ごしているが、連盟拠点への移動に制限は掛けていない。仲良くなったサガラへ会いに来たり、純粋にこちらで過ごすことを心地よく感じる人達は結構な頻度で顔を見せていたりする。


 そんな中、連盟拠点の敷地に誰かが足を踏み入れたのが【万視の瞳マナ・リード】に反応した。一体誰だと思い詳細に表示させてみると、そこには傘下三連盟の姿があった。

 面子としては結構ばらけている。『リリアーノ』からはネイル、『グリーグ傭兵団』からはマッシュ、『マーシェル』からはジャージーだけ。後は『リリアーノ』と『マーシェル』の連盟員ギルドメンバーが一人ずつだ。

 もうとうに日は暮れているし、こんな時間にやって来るだなんて珍しいを通り越して「何かあったのかな?」と言う疑問すら抱いた。


 彼らが連盟拠点に近付くにつれて、気配感知に優れたサガラの面々が耳を動かし始めた。彼ら、彼女らの視線はエントランスドアへと向けられていき、それに気が付いたパーラ、ザンド一族の面々もサガラ達の視線を追いかけていく。


「遅くにすまない」


 皆が見つめる中、そう言って入って来たのはネイルだった。

 後ろには先程見た名前の面々も続いており、皆が皆、沈痛な表情を浮かべている。


 これは本当に何かあったな、と思いながら軽い口調で返す。


「いや、いいさ。こっちに来て座りなよ」

「ああ……いや、私達はこのままで構わない」

「ん?」


 ネイル達は僕の着くテーブルに近付いては来たものの、椅子に座ろうとはしなかった。

 その様子に色々と察するものはあったが、僕は軽く首をかしげるだけで触れることはしなかった。


「まぁそれで良いなら良いけど。で、どうしたのさ?」

「ああ、その、だな」


 言い淀むネイルの視線が、後ろに立っている連盟員の男二人に向く。

 最初から気付いてはいたが、今回来ている中でもこの二人は特に異常な様子だった。他の面々は深刻な顔をしているが、この二人だけはまるで抜け殻のような表情をしている。


 何かしたとすれば、まぁこの二人だろう。


「以前、『ミミリラの猫耳キューティー・キャットイヤー』の名前で驕った奴らが居たと言う話を覚えているだろうか?」

「ああ、何か言ってたな」

「この二人は、その時のやつらでな。今回、復興支援の為にザルード領へ足を運んでいたんだ」

「ほぉ」


 それは何とも嬉しい話だ。

 ザルード領では現在多くの人手を必要としている。そんな中、自分の配下となっている連盟ギルドメンバーが助力に行っていただなんて素直に喜ばしいことだ。


「で?」

「ああ……今回、ザルード領へは『リリアーノ』と『マーシェル』の集合体二組2パーティーずつで行っていたんだが――」


 彼らからの話を詳しく聞く前に、前知識として述べておきたいことがある。

 これは、僕がザルード公爵として裏人などを主な情報源として調べたことだ。

 あちらは現在、下手をすれば王都に匹敵する程の依頼で溢れている。人手が余りにも足りていないので、斡旋所が出している依頼の大半は強制依頼に近い形だが、これと言った問題は発生していない。


 もちろん、傘下三連盟の評判などについての報告も受けていた。

 彼らは現在、ザルード領ではさぞ恵まれた環境にいるらしい。冒険者や傭兵のみならず、様々な人に受け入れられ、もてはやされ、商店での買い物でもかなりの優遇を受けていると聞く。

 理由に関しては最早言うまでも無いだろう。ただ、その厚遇さに関しては正直僕の予想を上回っていた。


 さて、今回彼らはサイレンド地区の城塞都市サラードを仮の活動拠点ホームとして、斡旋所から割り振られる依頼を順当にこなしていたらしい。周囲と揉め事を起こすこともなく、至って真っ当な冒険者として活動をしていたと言う。


 だがある日の夜、依頼達成の打ち上げをしている時に問題は起きた。


 以前『ミミリラの猫耳』の名前で横柄な態度を取った男二人は、ザルード領を本来の活動拠点とする冒険者や傭兵達と楽しく酒を酌み交わしていた。二人の集合体員もまた、周囲に迷惑が掛からない程度に騒いでいたらしい。

 そして興が乗りに乗った宴の最中、とある冒険者が口にした「あんたらが居れば俺達の出番は無くなっちまうな」なんて戯れに対し、二人はこう答えたと言う。


『『ミミリラの猫耳』傘下随一の俺達が居れば何の心配もねぇよ! あんたらは英雄の背に乗ってる気で居れば良いさ!』と。


 ――その話がネイルの口から出た瞬間、周囲に居た『ミミリラの猫耳』の連盟関係者全員が後ずさった。

 皆の顔に浮かんでいるのは驚愕と強い嫌悪感だ。汚物を見るようで虫けらを見るようで、怨敵のようで親の仇のようで――存在全てを否定する、そんな視線を全員が男二人に向けている。


 僕は椅子に座ったまま、テーブルを指で一つ叩き、口を開いた。


「――なぁ」


 こんな声色が出たのはいつぶりだろうか。そう自分で思ってしまう程に、僕の喉から漏れたのは冷たい声だった。

【王者の覇気】が漏れそうだったので押さえ込み、『ミミリラの猫耳』の連盟関係者全員に【王太子の儀礼服ティーゲル・ドーファン】を掛けておく。この後の展開を予想して、【五色の部屋サン・ク・ルーム】も纏わせておいた。


 それらを終わらせると、僕は続きを口にした。


「聞き間違いか? 今、『金の神への誓いを破った』と、俺にはそう聞こえたんだが?」


 果たして僕の言葉に、傘下連盟の者達は身体を強ばらせた。

 長級では無い男二人に関しては身体を震わせながら股の間を濡らしても居た。


 そんな無様を放置して、彼らを睥睨し顎を振る。


「続きを話せ」

「ああ……」


 さて、その発言を聞いて驚愕したのは一緒に居た集合体員一同だ。

 彼ら、彼女らは二人が以前『ミミリラの猫耳』の名前を用いて横柄な態度を見せたことを知っていたし、もちろん金の神への誓いについても耳にしていた。

 二人が金の神に誓った内容は、『『ミミリラの猫耳』の傘下連盟の連盟員であることを驕らない。また自分の立場を利用して他者に迷惑を掛けない』と言うものだった。

 つまり、二人が周囲に放った言葉は、一つ目の誓いを反故にしている可能性が非常に高かったのだ。


 集合体員の全員が固唾を飲んで様子を見ていると、唐突に二人は手に持っていた酒の入ったタンカードを落としたと言う。周囲が何事かと視線を集める中、本人達もまた不思議そうに自分の手を見ていたとか。

 続けて二人が中空を眺めたかと思えば次の瞬間、半狂乱になって叫声きょうせいを上げ始めたらしい。

 集合体員が近付きどうしたかと尋ねれば、二人共が「俺の個体情報が無い」と口にしたと言う。


 二人の言葉に、その場は騒然となったらしい。

 集合体員達は二人を連れて、逃げるようにしてその場を立ち去った。そして宿に戻った後に、集合体員達は二人が口にした「個体情報が無い」と言う言葉の中身を確認する為に、金の神の教会へ足を運んだ。


 ここで、少し補足しておこう。

 どうして集合体員達が“二人の個体情報を確認する為に”金の神の教会へ足を運んだかと言えば、そもそも王侯貴族以外の者が他者の個体情報を確認する方法がそこにしか無いからだ。


 僕が五歳、十歳の時。そしてナーヅ王国との戦から帰参した際に王城で使用した『個体情報証明版ヴィジュアル・レコード・コピープレート』と言う魔道具がある。

 実はあれの所有を認められているのは王侯貴族のみで、それ以外の者が手にすることは禁止されている。これは『個体情報証明版』の悪用を禁じる為の措置だが、唯一の例外もある。

 それが金の神の教会に属する聖職者達だ。

『個体情報証明版』とは、そもそもが金の神の教会の聖職者によって作製される。金の神に仕える聖職者が特殊な金属で出来た板に祈りを捧げることによって、『個体情報証明版』は形作られるのだ。

 そう言った事情や、また正当な理由で『個体情報証明版』を使用したい人達の為に、アーレイ王国では金の神を信仰する聖職者のみが例外的にその所有を認められている。


 閑話休題として。

 ここまでの話で、どうして集合体員達が“二人の個体情報を確認する必要があったのか”について、もう答えは見えていた。


 それを明らかとする為に、僕は敢えて問いかけた。


「で?」

「ああ……この二人は金の神より、『初期化の刑』を与えられていた」


 その言葉を耳にするなり、僕は男二人に対して【透魂の瞳マナ・レイシス】を使用した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アージ

種族  人族・人種

魂位  1

生命力 200/100

精神力 100/100

状態:


力    1-1

速度   1-1

頑強   1-1

体力   1-1

知力   1-1

魔力   1-1

精神耐性 1-1

魔術耐性 1-1


魔術属性

光    0-0

闇    0-0

火    0-0

風    0-0

金    0-0

土    0-0

水    0-0


技能


攻撃系技能:

防御系技能:

補助系技能:

回復系技能:

属性系技能:

特殊系技能:

固有技能:

種族技能:

血族技能:

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ビーガ

種族  人族・人種

魂位  1

生命力 250/250

精神力 80/80

状態:


力    1-1

速度   1-1

頑強   1-1

体力   1-1

知力   1-1

魔力   1-1

精神耐性 1-1

魔術耐性 1-1


魔術属性

光    0-0

闇    0-0

火    0-0

風    0-0

金    0-0

土    0-0

水    0-0


技能


攻撃系技能:

防御系技能:

補助系技能:

回復系技能:

属性系技能:

特殊系技能:

固有技能:

種族技能:

血族技能:

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 紛れも無く、金の神の怒りを買っていた。


 金の神への誓いは、契約紋カラーレス・コアとは違い強制力は無い。しかし、それを破ることによって金の神の怒りを買い、罰を与えられる場合がある。

 与えられる罰には様々なものがあるが、その中でも特に有名なのが『初期化の刑』だ。

 これは誓いを破った者の個体情報、別名『映し出された人生の記録ヴィジュアル・レコード』を没収される。結果、個体情報の中身は本人が生まれた瞬間へと初期化されるのだ。


 ネイルの話は続いた。


「それと、これは帰路で発覚したんだが。恐らく二人は欠魂けっこん症にかかっている」

「ほぉ。どれだ?」

「経験値取得機能、もしくは魂位上昇機能の欠落だ」

「へぇ?」


 欠魂症と呼ばれる病がある。

 これは先天性、後天性の両方があり、様々な症状を総じて言う。

 今ネイルが述べた経験値取得、魂位上昇機能の欠落は欠魂症の中では有名な病となる。

 これに罹っている者は、どれだけ生物を倒そうとも魂位が上昇しない。魂位を上昇させるに必要な何かが魂から欠落しているとされるのだ。


 嘗て、僕もこれに罹っていると魔典医に診断されていた。

 幾ら僕が無能だからとは言え、それを改善する為に色々な試みが為された。

 その内の一つが、生きたまま捕らえた魔獣にとどめを刺すと言うものだ。以前話題に上がった、ミミリラが里に居た頃にやっていた方法と同じだ。

 僕はそれを何度も何度も行った。しかし、どれだけ強い魔獣に止めを刺そうとも、僕の魂位が上昇することは無かった。僕が無能と称された大きな要因の一つだ。

 欠魂症と金の神の怒りに直接的な関係は無いとされている。今回は恐らく金の神よりの罰を切っ掛けにして後天的に発症しただけだろう。


 まぁ、そんなことはどうでもいい。


「――戯けが」


 ネイル、ジャージーの二人を【風圧殺ブリーズ・クラッシュ】で掴み上げた。

 強制的に宙へと浮かされた二人は吐血し、目や耳から血を流し始めた。そこかしこで骨が折れ、内蔵や血管が破裂したのだろう。

 致命的ダメージを受けている様子の二人だが、その生命力や精神力は常に把握している。出来うる限りの加減はしているし、仮にも大手連盟の長級だ。この程度では死にたくても死ねないだろう。

 まだ殺すつもりは無い。故に、まだ死なせることはしない。


【風圧殺】を解除し、瞬時に【母の手ラ・メール】で完全に治癒してやる。そして彼らが地面に落下するよりも早く、【風撃砲ブリーズ・ラッシュ】で吹き飛ばす。

 思いの外素材が甘かったのだろうか。彼らの身体が激突した連盟拠点の壁には大きな穴が空き、その姿は庭の向こうへと消えてしまった。


【アーレイ王国】に映る彼らを再び【母の手】で治癒してやり、【間の間マナ・リル】でこの場に転送させる。意識を失っているのか、二人は全く動かない。

 無感動に彼らへと近付き、仰向けに倒れ目を閉じているネイルの顔面を勢いよく踏みつけた。

 硬い音がその場に響く。何かが潰れたのが足裏から伝わってくるが、それを無視して踏みにじる。くぐもったもがき声が聞こえてきたのを覚醒の合図とし、足を離す。横で寝転がっているジャージーにも同じことをして、強引に叩き起こす。


 二人ともが目覚めたことを確認すると、側で硬直しているマッシュに近付き、僕よりも高いその顔を見上げた。

 どうしてか、彼は僕の視線に気付いている筈なのに、こちらに顔を向けようとはしなかった。


「マッシュ」

「おう……」

「『グリーグ傭兵団』は今回の件には何も関係が無く、お前はただ傘下連盟の長の一人として話し合いに参加する為ここに来た。そうだな?」

「おう」

「ならお前は帰っていいぞ。ご苦労だったな」

「おう」


 硬直したまま微動だにしないマッシュに目を細める。


「まぁ、大丈夫だとは思うが一応言っておく。この屑共同様の阿呆が出てこないよう、今後も重々気を付けてくれ」

「おう……もちろんだ。団長ボスにも、そう、伝えておく」

「うん。帰ってゆっくり休んでくれ」

「ああ……」


 僕が微笑んで腕を叩くも、マッシュは表情を僅かも動かすことなく、ただ頷くだけだった。不思議なもので、僕が触れたマッシュの腕は酷く冷たく感じた。

 マッシュが連盟拠点から出て行くのを見送ると、僕は二人の潰れた鼻や折れた歯を【母の手】で治してやった。


 そうして元の椅子へ戻り、腰を下ろす。


「さて」


 立ち上がった二人に無色の視線を送り、頭を背後に立つパムレルの胸に預けた。


「お前ら、うちを潰すつもりか? 実は俺に、うちに耐え切れない恨みがあった。だが自分達だけじゃ俺に勝てない。だから風評を利用しようって魂胆で傘下に入ったと?」

「違う! そんなつもりは毛頭ない!」

「ネイルの言う通りだ。俺達が傘下に入ることを願った理由に偽りは無い」

「だったら今回のこれはどういった了見だ? 連盟とは連盟長から始まるものだ。連盟長の思いや人柄に仲間は集い、連盟を成す。連盟長を継ぐ者もまた、先代連盟長の意思を受け継ぐ。つまり、連盟員の考えは連盟長の考えも同義。ならば今回そこの屑二人が愚行を成したのもお前達がそういった考えを持っていたからこそ。金の神への誓いを軽んじていたからこそ。違うか?」

「違う!」

「俺達の指導不足。監督不行届。『邪な行い』を許してしまった未熟さ愚かさは甘んじて受け入れる。だが信じて欲しい。俺達はそういった思いを欠片も持っていなかった」

「ほぉ? なら今回の一件は、完全にそこの二人が勝手にやったことだと?」

「責任逃れをするつもりは無い。非は連盟長である俺達にある。だが、今回の一件は決して俺達が指示したことでも無ければ、金の神を軽んじている訳でも無いことは信じて欲しい」

「ふむ」


 金の神への誓いとは、口約束なんかとは違う。正真正銘、この世界と人を創りたもうた『七つ神』が一柱である、契約や誓いを司る『金の神』への誓いなのだ。

 その誓いの重たさは、この世界に生きとし生ける全ての知能ある生物が知っている。人であれば幼い頃に、絶対と言える程に、その意味と重要さを親から教えられる。

 仮に孤児であろうとも、成長の過程で確実に記憶に刻む。それが出来ない者は、この世で生きる資格を失う。


 金の神への誓いを破った存在を、人は「穢れ色」と呼ぶ。

 神によって創られながら、神に否定されたもの。七つの色で構成された存在でありながら七つの色に否定された、七つの属性を穢した存在。人でありながらも人で無い存在と言う意味だ。


 これを犯した咎人は、凡ゆる存在から否定される。

 そして、その咎人を庇う者もまた、世界から否定される。


 今回、彼らはそんな大罪を、“横の繋がりが非常に強い冒険者達の前で破り、それを知られてしまった”のだ。しかも、それを犯したのはザルードの英雄が連盟組織長ギルドツリーマスターを勤める、下位連盟の員だ。即ち、そんな連盟組織員ギルドツリーメンバーを抱えている『ミミリラの猫耳』の評判にすら影響を及ぼしてしまう危険性が非常に高いのだ。

 最悪の場合、僕達の名は地に落ちる。冒険者段階アドベルランク連盟段階ギルドランクも全てが最低値に修正されるだろう。

 もしそうなれば、国王である父上ですらどうしようも無い。


 最も恐るべきは、『ミミリラの猫耳』を抱えているザルード公爵家にまでその悪評が伝わってしまうことだ。これは考えすぎでは無い。一歩間違えればそう成り兼ねない程の危険性を孕んだ状況なのだ。


 兎にも角にも、僕が今すぐすべきことは決まっていた。


「なるほど。ならお前達は自分達の連盟員が犯した大罪を隠すつもりは無く、自分達の潔白を証明する為にここへ来た、そうだな?」

「ああ」

「そうだ」

「だったら庭を貸してやる。とっとと穢れを世界へ還元させろ」


 その言葉に、対面に立つ四人が一斉に僕の顔を凝視した。

 特に大罪を犯した二人に関しては絶望に目と口を開いている。


「いや――」

「まさかとは思うが」


 何かを口にしようとするネイルの言葉を遮った。

 その“何か”の内容がどういったものか、想像に難くない。連盟長とは、連盟員を率いる長であると同時に親でもある。故に、我が子である連盟員の身を案じるのは至って当然のことだ。

 それは実力主義国家アーレイの戦士であろうとも、また『穢れ色』と化した者であろうとも、安易に変えられるものでは無い。


 だからこそ、その先を言わせるつもりは無かった。


「お前ら――穢れた存在の助命嘆願をしようなどと糞ったれたことは言わんだろうな?」


 睥睨すると、長級の二人は揃って視線を落とした。

 それに構うこと無く、僕は最終通告を投げつける。


「さっさと連れて行け。自らの手で運び、自らの手で世界へ還元させろ。出来ないなら俺がやってやろう。但し、その時は連盟ごとになるがな」

「……分かった」


 絶望に表情を染める男二人を、ネイルとジャージーは背を押して連れて行く。

 僕は彼らの近くに立っていたサガラを見て、目で合図する。それに頷いた数名がネイル達の後を追っていった。見届け人、と言うことだ。


 全員がエントランスドアから出ていき、紅茶を一口飲む。


「……」


 今後について、全力で思考を巡らせる。


 本来であれば、今この瞬間に『リリアーノ』と『マーシェル』の二連盟を滅ぼすことが最適解だ。

 “『穢れ色』を生み出した連盟をザルードの英雄は許さず、一人残らず世界へ還元させた”。これならジャスパーや『ミミリラの猫耳』の名は一寸の瑕疵も付かずに済む。

 だが、僕にはそれを行いたくない理由があった。

 以前から述べているように、同盟連盟パートナーズギルドとはその活動拠点に於いて、自分の連盟を守る為の強い抑止力となる。

 現在『ミミリラの猫耳』はこの城塞都市ガーランドに於いて最大手である三連盟を、同盟連盟どころか傘下連盟としている。

 ザルードの英雄や『ミミリラの猫耳』の名前だけでも十分過ぎる程他者に対する抑止力にはなっているが、大手三連盟の名や人数、存在そのものもまた強い抑止力になっているのは間違い無い。


 現在、『ミミリラの猫耳』はパーラ一族にザンド一族と言った、脆弱な連盟員を多数抱えている。これらの存在を守る抑止力の一つとして、僕は傘下三連盟の存在を勘定に入れていた。

『ミミリラの猫耳』に手を出せばザルードの英雄の怒りに触れる上、お抱え含め四百人を超える三つの大手連盟が敵に回ると言う状況を、二つの種族を守る手札の一つとして考えていたのだ。


 故に、今ここで二つの連盟を消すことは僕の予定を大幅に崩すことになる。

 これからは一気につがいとなる連盟員は増えていくだろうし、そうなれば身籠る女性達も一斉に増えていくだろう。守るべき存在が増えていき、それによって連盟の動きにも制限が生まれていく。

 どれだけ背後にザルード公爵家と言う強大な権威や権力を持った存在が居ようとも、それは絶対的な抑止力にはなりえない。貴族には貴族の世界があるように、冒険者には冒険者の世界がある。

 どれだけ貴い存在であろうとも、触れられる部分とそうでない部分がある。


 そもそも背後に貴族が居るだけで冒険者が絶対的な立ち位置を手にすることが可能ならば、冒険者同士の争いなんてとうの昔に無くなっている。それが不可能なことを歴史が証明しているからこそ、冒険者同士の争いは現在に存在するのだ。アーレイ王国に於ける絶対的な抑止力とは、国王のみを指すのだ。

 故に、僕は絶対的では無いにせよ、限りなくそこに近付ける為により多くの、より強大な抑止力で連盟員達を守っていく算段をつけていた。

 なのに、その手札として数えていた二つの連盟が極大級の馬鹿をしてくれた。本当に、なんてことをしてくれたのか。


 今ここで選ばなければいけない。

 評判を落とさない為、すぐにでも二つの連盟を潰すべきか。

 あるいは連盟員の今後を考え、評判を落とさない方法を模索しつつ、二つの連盟を生かすべきか。


 前者は安全策。後者は半ば賭け。

 前者は不利益は消えるが利益も消えるノーリスク・ノーリターン

 後者は不利益は残るが利益も残るハイリスク・ハイリターン


 これは間違えられない。一歩間違えれば確実に僕達は名を落とす。今後のザルード公爵の活動にも影を落としかねない。


 思い、考え、悩み。結果、行き着いた答えに小さく息を吐く。

【アーレイ王国】に映る庭に意識を移せば魂の反応が二つ消えており、きちんと『穢れ色』がこの世から還元されたことが分かった。


 少しして、ネイル達がエントランスホールへと戻ってきた。

 身を【還元する万物の素リターン・オブ・マナ】で綺麗にしたのだろう、返り血が付いている様子は見られなかった。一応とばかりに見届け人をしたサガラに視線を送ると、確かな頷きが返ってきた。


 それを確認し、僕は近付いて来たネイル達に言葉を向ける。


「お前達、お抱えの貴族への報告は?」

「いや、先ずはジャスパーにと思ってまだだ」


 ネイルは憔悴した、力無い声で答えた。

 連盟員を自ら手に掛けたことへの苦しみか、それともこれから訪れる沙汰への不安か。


 無様だな。そう思いながら、努めて声を軽くして言葉を続けた。


「ならこう伝えろ。『愚かな連盟員が現れたが自ら世界へ還元させ、ジャスパーにも報告し許しを得た』と」

「……許して貰える、のか?」

「今回だけだ」


 僅かに残っていた紅茶を飲み干し、ソーサーに戻してからテーブルを二度叩く。

 紅茶のお代わりの合図に反応した使用人のサガラが向こうへ消えていくのを確認してから、頭を後ろのパムレルに預ける。


「次は無い。これまでのお前達の働きに免じて。隠し立てしなかった誠意に免じて。自らケジメを付けた覚悟に免じて、今回だけ許してやろう。俺が許したと言えばお抱えの貴族とて何も言わんだろ。もし言うようならそんな貴族は捨ててこい、こっちで何とかしてやる」


 僕がそう言えば、彼らの表情に安堵の色が浮かんだ。

 恐らく自分達の命は亡くなって当然、最悪は連盟員全員の命も――くらいの予想はしていただろう。許しを得た二人が浮かべる表情は、出会って今日までの中で初めて見る程に喜びで満ちたものだった。

 まぁパーラ一族やザンド一族のことが無ければ確実にそうなっていたので、二人の不安は間違っていない。

 肩をすくめ、普段のように微笑み首をかしげる。それを見たネイル達の魂の波動から、負の感情の全てが失せたのが伝わってくる。


 僕は内心に渦巻くものを踏み潰しながら、口を開いた。


「俺は許した。もう咎めることは無い。但し、暫く連盟としての活動は控えておけ。仕事は直接依頼と指名依頼だけだ。連盟の活動資金はまだあるんだろ?」

「ああ、そこは大丈夫だ。活動を控えるなら出ていくものも少なくなる」

「うちも同じだ」

「分かった。まぁ評判はこちらで何とかする。それ次第になるが、活動の再開時期はまた状況を見て伝える。どうしても金が無くなれば遠慮なく言いに来い」

「助かる」

「本当に感謝する」


 そこからは無駄な会話も無く、連盟長の二人は足取り軽く連盟拠点を去っていった。


 彼らがエントランスドアを閉めるや、僕は庭に転がっている二つの骸を【還元する万物の素ディ・ジシェン・ジ・マナ】で世界へ還元させ、すぐさま『以心伝心メタス・ヴォイ』を通じてジャルナールに話しかけた。


『ジャナル、私だ。返事は出来るか』

『これは公爵閣下。無論です』

『主命だ』

『なんなりと』


 そうして、僕は先程あったことを余すことなくジャルナールに伝えた。

 一切聞き漏らさぬようにしているのだろう。僕が説明している間、ジャルナールは一言も発することは無かった。


 果たして、ジャルナールが言葉を返したのは僕が語り終えてからだった。


『して、私はどのように』

『『ジャスパーの傘下連盟で金の神への誓いを破る愚かな人が現れたが、傘下連盟の長自らが処分し、その覚悟と誠意に感銘を受けた英雄は許しを与えた』。これを城塞都市ガーランド、そして王都を初めとした国王直轄領の全てに伝えよ。ザルード領については私の方で対処する。それ以外は自然と広がる故、構わんでよい』

『畏まりました。直ちに取り掛からせて頂きます』

『うむ。多少脚色を加えても構わん。美談として広く伝えよ。もし悪評を広めようとする者が居た場合、そやつこそが『邪な行い』を為す者と言う印象を流布しろ。その上で私に報告せよ。こちらで処分する』

『畏まりました』

『よしなに』


 ジャルナールとの会話が終わると、持ってこられていた紅茶を一口飲んでから、今度はお祖父様へ言葉を送る。


『お祖父様、今はよろしいでしょうか?』

『うむ、大丈夫じゃ。どうした?』

『聞きたいことが。ザルード家の裏人の現在はどうなっておりますか?』

『む? ……ああ、少数は各地に配っておるが、大半は待機させておる』

『で、ありますか』

『何かあったか?』

『ええ』


 僕は再び、ジャルナールに説明したものと全く同じ内容をお祖父様へと述べ伝えた。

 お祖父様もまたジャルナール同様、一切無駄な返事をすることなく、最後まで僕の話を聞いていた。


 全てを聞き終えると、お祖父様は落ち着いた声を返してきた。


『あい分かった。わしが出来ることはあるか?』

『いえ、大丈夫です。これから私が直接指示を出しに行きます故。ただ、その後に一度そちらへ足を運びます』

『うむ、畏まった』

『ええ、ではよしなに』


 お祖父様との会話が終わると、また紅茶を一口飲み、眉根を寄せた。

 こんなことなら裏人の長やタナルにも『以心伝心』を渡しておくべきだったと自省した。ザルード領へ帰ったらすぐにでも渡しておかねばなるまい。

 今は僕の手が空いているから良いが、そうで無い時、何か緊急のことがあった場合には困ることになる。


 彼らにどれだけ渡すかを考えながら【間の間】を発動しようとして留まる。

 すぐさま【アーレイ王国】で連盟関係者全員の個体情報に目を通し、そこに問題がないことを確認する。


 その上で、僕は金の神の教会に足を運ぶことを決めた。


「今から金の神の教会の司祭を連れてくる。娼婦含め、全員をパーティーホールに集めておけ」

「了解しました」


 僕の言葉にヒムルルが返事をすると、彼は周囲のサガラ達に目配せをした。

 それに反応して、皆が一斉に動き出した。パーラ一族にザンド一族、娼婦一同に今の指示を伝えに行ったのだろう。


「……やれやれ」


 思わず言葉を溢した自分に呆れ、小さく首を振った。


 金の神への誓いを破った者が近くで現れた場合、平民の間では金の神の教会の司祭に穢れ祓いをして貰うのが一般的だ。しかし、王侯貴族、特に王族では親族から『穢れ色』が出てもお祓いはしない。

 それは、自分は金の神への誓いを破るような行為も、またそれに助力することも一切していないという意思表明を意味する。後ろめたいことなど僅かも無いと周囲に明らかとするのだ。


 実際のところ、金の神への誓いを破る行為に助力していない場合、本当に何の罰も受けることは無い。元王太子である僕は、それが確かな記録として残っていることを学んでいる。

 故に連盟関係者へのお祓いも必要ないのだが、どうにも不快感が拭い切れないので、念には念を入れて、シシスの【人見の瞳】で皆の魂に何かしらの異常が起きていないかを確かめておこうと思ったのだ。

 シシスの【人見の瞳】は『魂を認める』効果を持つ。個体情報には表示されていない何かがあったとしても、彼の目なら見逃すことは無いだろう。


「――」


 心配することなど無い。それを理解しながらも、僕は心の中で祈りを捧げた。

 偉大なる金の神に於かれましては、我が配下に一切の罰をお与えになられませぬように、と。



 ――んふふー、そんなことしないのになぁー?


 “嘗て神罰を名目に億を超える人と世界の半分を消した奴がよく言うよ。まぁ出来ないって意味じゃあ間違ってないんだろうね”


 ――んー? 出来たとしてもしないよ?


 “お前の言葉ほど信用出来ないものは無いよ。大体さ、僕がこうなってるのはお前がを唆したからだろうに。それで何を信じろって?”


 ――私はアル君の心配事を無くして上げただけなのでー。


 “まぁ、あれはがへたれたのが悪いってことだけは認めて上げるよ。何があろうと死んだ奴が悪い? 笑わせてくれるよね。最後の最後で自分の言葉を否定した屑の癖にさ――”



「――喧しいぞ貴様ら」

連盟長ギルマス?」

「……いや。何でもない」


 不思議そうに問いかけてきたヒムルルに首を振って答える。

 何故か咄嗟に言葉が出てしまった。誰が何も言うでも無し。でありながら、かたわらで騒がしくされているような気配を感じたから。

 ミミリラを見れば、彼女は首を横に振った。誰も騒々しくしている奴なんて居なかったと。常時五感を共有しているミミリラが違うと言うのであれば、やはり勘違いでしかないのだろう。


「――」


 疲れているのだろうかと、そう思った。幻聴が聞こえてくるだなんて。

 ただ、幼い頃、まだ王城で過ごしていたあの頃に、今の声を耳にした気がする。

 はっきりとは思い出せない。されど、確かに“私は”あの声を聞いたことがあった。


「――」


 はて、あれはいつ、どこで、どんな時だったか。

 その瞬間を記憶の奥底から掘りおこそうとして、



 “――。――ん? あ、しまった”


 ――あららぁ。



 ずしり、と。まるで数千数万の人を背負ったかのような感覚に襲われた。

 どこかぼんやりとする意識の中で個体情報を確認すれば、状態欄には新しくこんなものが表示されていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

状態:疲労値が著しく増加:全ての能力値に著しい阻害魔術効果

            :内殻が過負荷状態:精神耐性の機能不足

                     :精神耐性効果の停止


  :内殻に異状あり:精神力の消費量が著しく増加

          :精神力への持続的ダメージ:精神耐性効果の停止により無効化・減少効果無し

          :精神力の自然回復機能停止

          :体力の消耗量が著しく増加

          :体力への持続的ダメージ:精神耐性効果の停止により無効化・減少効果無し

          :体力の自然回復機能停止

  :軽度に混乱している:思考力が下降

            :内殻能力等級値が下降:魔術技能の値が下降

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 致命的な弱体化効果バッドステータスに、不思議と驚きを抱くことは無かった。現実味の無いその表示内容を、だからこそ、他人事のように冷たい意識でなぞった。

 これは今付いたと言うよりも、元々付いていたのが突然表示されたとしか思えない程の弱体化効果だ。あるいは、これらが付く寸前の状態にあったのかも知れない。もしかすると、ここ最近覚えていた倦怠感はこれが原因だったのかも知れない。


 どうしてこの時期タイミングに、何が理由で表示されたのか疑問に思うが、今はその謎について解明する気力は無かった。

 この状態は、ザルード領で初めて【ザルードの槍グラン・テ・レール】を使用した直後に似ている。精神耐性が効いていなかったあの時だ。もしかすると、あの時も表示されていなかっただけで、これと同じ状態だったのかも知れない。


 僕の状態に気付いたミミリラが猛烈に焦った様子で生命力などを譲渡してきた。他の六人も心の声を読んだのか、僕を支えるように傍に寄ってくる。

 彼女達と触れた部分の感触と温もりが何とも心地よくて、しかし、それらを感じれば感じる程、余計に身体の重みが増していくような錯覚に襲われる。

 無性に彼女達と交わりたくなった。性欲でも癒しでも休息でも無く、魂が求めているような衝動だった。


 けれど、それらの思いすらを塗りつぶす、強烈な感覚が湧き上がってくる。


 嘗て王城で、全ての苦痛や苦悩から開放してくれた温かな手のひら。柔らかな腕の中。安心する甘い香り。


 ミミリラ達ですら到達出来ぬその安堵を思い出して――それを求める自分に虫唾が走った。


「――」


 無意識に【母の手】を発動させようとした自分をとどめ、舌の一部を噛み千切り、【還元する万物の素】で世界へと還元させる。

 口内を血生臭く満たしていく液体を飲み下し、ミミリラの【才知才覚】と【超感覚】を発動させた。能力値に著しい阻害魔術効果や思考力、技能値の下降とあるが、これを併用すれば何とかなるだろう。多分。

 本来であればミミリラに【間の間】を使用して貰えば良いのだろうが、まだミミリラは【間の間】を使いこなせるに至っていない。


 瞼を閉じて、普段の何倍も創造に意識を集中させる。

 何故か必死に止めようとするミミリラの心の声を聞き流し、まるで最初から想像し直すような慎重さを以て、魔術言語カラー・スペリアンと【言霊モ・ア】で更に補強し、それを形と為す。


「『運べや運べ、ここからそこへ。はざまはざまに矛盾無く。映す景色に齟齬は無し。映せや移せ、我が身を確かな望むる場所へ』――」


 襲い来る激しい頭痛と、何かが抜け落ちるような感覚を齎す急激な精神力の消耗に歯を食い縛る。咄嗟に精神力の消費をミミリラが肩代わりしてくれたことで、僅かに脱力感が薄れてくれた。

 そして何故か、頭痛までもが緩和された。その理由の答えにはすぐに至ることが出来た。僕と試合った際に『七属性魔術士筆頭セブンズ・カラーズ・ラーレスト』が用いた『絆技カ・ルラ』、あれをミミリラが行使してくれているのだ。

 確かにミミリラ単体では【間の間】を発動出来ずとも、一部を受け持ち補助する程度なら可能だろう。金属性魔術士筆頭オレリア・カラーレスによって成されていたであろう「ほだし」の強化も僕達には不要だ。完全に魂が繋がっているミミリラと僕ならば、一寸のずれも無く意思を合わせることが可能だから。


 大義。心の中でミミリラへ謝辞を向け、魔術を行使した。


「――【間の間】」


 じわりじわりと魂を侵食するような感覚の全てを押さえ込み、僕は教会へと飛んだ。

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