第129話 サガラとザルード
お祖父様が到着する日のこと。僕はジャスパーの姿で一人、
ザルード公爵家の兵によって先触れが齎され、その後お祖父様から城塞都市ガーランドの城壁門をくぐったと連絡があったので、それを待っているのだ。
連盟拠点の中には現在サガラのみが集まっている。他の連盟関係者には、僕から許可が出るまで自分達の住まいから出てくるなと言い含めている。
待つこと暫くして、ザルード公爵家直属兵の鎧を身に纏った一団が姿を見せた。
先頭には馬に乗ったエルドレッドの父、エルランド・マルリードがいる。その後ろには数十の兵士達と、幾つもの馬車が連なりを見せている。
【
兵の一団は厳かな雰囲気を醸しながら進み、一等華美な装飾に彩られた馬車が僕の正面に来たところで止まった。
兵士が小走りに近づいて来て馬車の扉を開けると、そこからお祖父様、そして僕の姿をした
その二人に対し、僕は胸に手を当て礼をした。
「ようこそいらっしゃいましたカー=マイン殿下、ザルード公爵閣下」
「うむ、ご苦労。だが今のわしは既に当主の座を引いた身でな。これより先はこちらのカー=マイン様が当主となられる。以後気を付けよ」
「これはご無礼を。カー=マイン様に於かれましては当主御就任、誠にお慶び申し上げます」
「うむ、出迎え大儀である」
再び胸に手を当て、深い礼をする。
何とも茶番じみたやりとりだが、周囲に兵の目がある以上必要なことだ。
「それでは中へご案内致します」
「うむ。お前達はここで待っておれ」
お祖父様がお供しようとする兵士達にそう言うと、代表としてエルランドが口を開いた。
「しかしながらジード様」
「我らの家を救ってくれた者達の住まい、何を気にすることがあろうか」
「エルランド、ジードの言う通りよ。気持ちはありがたいが待っておれ。皆もよいな?」
お祖父様に合わせるよう
ザルード公爵家直属軍、その一番隊の隊長である者がたった一度のやり取りで引く姿は本来そう有るものではない。
だが、そもそもエルランドも本気で言っている訳では無いだろう。彼にとってもジャスパーや
故に、先程のやりとりはあくまでも己の勤めを果たす為の
「では、こちらへ」
兵達をそのままに、僕はエントランスドアを開けて二人を招き入れた。
二人に続きエントランスホールに入ると、そこには全てのサガラが整然と並んでおり、全員が胸に手を当て礼をしていた。
僕がエントランスドアを閉めると、足を止めたお祖父様はその光景をゆっくりと眺め、目を瞑り小さく息を吐いた。
暫くして目を開けたお祖父様は僕を見ると、小さく指を振った。【
これで外に居る兵達には一切の声が届かない。外からは見えぬよう全てのカーテンを閉めているので、誰かに見られる心配も無い。
「顔を上げるがよい」
お祖父様のその言葉に、サガラの皆が顔を上げる。
こちら側から見て、先頭にはミミリラが立ち、その後ろには副族長であるヒムルルが控えている。他の皆はその更に後ろへ並んでいる形だ。
ミミリラ達の無感動な表情を見て、僕はサガラと出会った時を思い出していた。
冒険者として知り合ったニール達は別として、初めて会った頃のミミリラ達はこんな顔をしていた。そう考えれば、今ここに居るのは嘗てのサガラ一族なのだなと思ってしまう。
そんな感想を抱いている僕を他所に、お祖父様が口を開く。
「既に知っていようが、我が名はジード・フレイム・ル・ガージス・ザルード。先のザルード公爵家当主である。今日はお主らに話があって来た。長は誰じゃ」
「
「お主とは一度、城塞都市ポルポーラで顔を合わせておるな。改めて問おう。その方、名を何とする」
「獣人種はサガラ一族、その長ミミリラ・サガラに御座います。現在は連盟『ミミリラの猫耳』の
「なるほど。立派なことだ。そのような若さで」
お祖父様がミミリラの顔を見据える。そしてミミリラの後ろに並ぶサガラの面々に視線を巡らし、再びミミリラに視線を戻した
実際のところ、お祖父様とミミリラ、そして僕の集合体の六人は公爵邸で顔を合わせている。しかし、それはカー=マインの影の護衛としての顔合わせだった。その時の会話も、それこそただの挨拶で終わっている。
今現在ここで相対しているのはサガラ一族と先代のザルード公爵だ。今の二人のやりとりは、そう言ったけじめから来るものだ。
「率直に聞こう。お主らの家族を、友を、仲間を殺したのはわしだ。それを恨んでおるか?」
「私含め、サガラ一族、一切の恨みを持っておりません」
「ほう。お主らの里を滅ぼしたわしをか?」
「感謝こそあれど、恨みなどは御座いません」
「感謝とな」
僕は既に聞いているから何も思わないが、お祖父様からすれば何を言っているか分からないだろう。あるいは、察しながらも敢えて心意を問いかけようとしているのかも知れない。
お祖父様は目を細め、先を促した。
「理由を聞こう」
「ジード様が我らの里を滅ぼされたことで、我らは救いを得ることが叶いました」
「救いとは?」
「最初は庇護による安全を。次に生涯に渡る安寧を。そして今この瞬間、我らはカー=マイン様の存在そのものに救いを得ております。救いを得る始まりをお作り下さった方に感謝こそすれ、どうして恨みを抱くことが出来ましょうか」
「ふむ」
お祖父様は顎を摩りながらミミリラの目を見ている。
その瞳からは、お祖父様が何を感じ、何を考えているのかは読み取れない。
「ではお主らはわし、そしてザルードへの遺恨は無いと」
「はい」
お祖父様が僕を見る。
まるで問いかけてくるような視線に、僕は何も言わず頷いた。今の彼女の言葉に一切の偽りはありませぬと、そんな気持ちを込めて。
それがきちんと伝わったのかは定かでは無い。ただ、お祖父様は僅かに微笑み、頷きを返してきた。
再びお祖父様の視線がミミリラへと向けられる。
「あい分かった。お主達の心胆確かに聞かせて貰った。これより先もカー=マインへの忠誠を期待しておる」
お祖父様の言葉に皆が礼を返した。
何とも固いやり取りだが、まぁ最初はこんなものだろう。
ただ、悪いものを感じる会話では無かった。ならば今後増えていくであろう関わりを経て、徐々に信用と信頼を築き上げていけばそれで良い。
僕がそんなことを思っていると、お祖父様が無表情のままに僕を見た。
「カインや、すまぬがちとこれを持ってくれぬか」
「はい」
唐突にお祖父様はマントを脱ぐと、僕に手渡してきた。
はてどうしたことだろうと思いながら素直に受け取ったが――次の瞬間、僕は目を見張った。何とお祖父様が自分の服の結び目を次々と解いていき、上半身を顕にしたからだ。
そして、僕はそれを見た。
鍛え上げられた鋼の肉体と言えば良いだろうか。無駄な肉の一切が付いておらず、それでいて皮膚を張り詰めんばかりに膨らんだ筋肉からは、お祖父様がどれだけの鍛錬を重ねてきたかが伝わってくる。
しかし、僕が瞠目したのはそこでは無い。
軟弱な者では傷一つ付けられぬであろうその肉体の左胸から右脇腹にかけて、巨大な魔獣の爪で引き裂かれたような裂傷痕があった。左の肩は噛みちぎられたように一部が欠けており、その二つの傷跡からは強大な敵と相対したことが伺えた。
僕はそれが信じられなかった。
今目の前にいるのは、『
攻撃系魔術を用いなかったとは言え、僕がどれだけ本気で立ち向かおうと傷一つ付けられなかった祖父の身体には、致命傷となっていてもおかしくない、生々しい傷跡が刻まれていた。
「これはな」
驚く僕を他所に、お祖父様は胸にある巨大な傷跡に触れた。
「ググリラと言う男に付けられた」
次に、お祖父様はえぐられた肩に触れた。
「これは、ズズリと言う男に付けられた」
お祖父様はそう言って手を下ろすと、ミミリラへ視線を移した。
「お主、その名を知っておるか?」
「はい。前族長である我が父、そして次期長であった我が兄の名です」
「で、あるか」
お祖父様はそう言うと再び服を身に纏い、僕の手からマントを受け取り肩に羽織った。
僕はどこか茫洋とした気持ちでいた。
今の二人の会話からは、ミミリラの父と兄がお祖父様にこの傷を付けたことが伺える。それは間違いなく、五年前に行われた戦の際、お祖父様がサガラの里に攻め込んだ時のことだろう。
この世界には回復系魔術が存在する。殆どの傷はそれによって治癒することが出来るし、基本的に傷跡と言うものが残ることは無い。
肉体に傷跡が残るには幾つかの理由がある。
一つは回復系魔術を行使する者が未熟であること。一つは回復系魔術で治癒するまでに時間が経ちすぎていること。一つは致命傷に至る程の重傷を負うこと。
これら全ては、魂がその傷を内殻、あるいは外殻に在って当然と刻み込むことによって残る。傷のある外殻こそが当然と言う認識に魂が染まるのだ。
ドゥール王国との戦の際、お祖父様は万を超えるザルード公爵家の本軍を従えていた。その中にはザルード公爵家で抱えている優れた魔術医だって当然連れていた筈だ。
で、ありながら。これだけの傷跡が残っていると言うことはつまり、お祖父様の魂に強く刻まれる程の激闘が行われ、その結果魂が染まる程の怪我を負ったことを意味する。
「お主の父、そして兄はな、強かった。我が兵では歯が立たず、わしが直接相対した……久方であったぞ。己の死を予感したのはな」
そう言ってお祖父様は僅かに顔を上げた。
視線の先にあるのは屋敷の景色では無く、恐らく嘗ての戦場だろう。
僕が初めて見るその表情は、もしかしたらジードと言う戦士が持つ、本来の顔だったのかも知れない。
お祖父様は目を瞑り、僅かな沈黙の後に再び語り始めた。
「お主の父と兄は、首を撥ねられる瞬間まで戦い続けた。足を斬り落とされようと、目を潰されようと、
お祖父様は居並ぶサガラに視線を巡らせると、またミミリラを見た。
「わしらはな、お主らが里から逃げ出したと言うことを知っておった。どこにどう逃げたか、まではお主らが我らの裏人より上手く逃げおおせたが故に分からんかったがな。よって里を滅ぼした後には山狩りをし、お主らを滅するつもりであった」
しかし、とお祖父様は言う。
「わしはお主の父と兄との戦いで傷付き、追うことが叶わんかった」
お祖父様は目を細め、ミミリラを見据えた。
まるでその背に、ミミリラでは無い誰かを見ているような、そんな視線を向けている。
「誠、見事であった。このジード、心よりあの二人を称えよう。そして誇るがよい。確かにあの二人は、お主の里の者達は、お主らの命を守り抜いた」
「有り難き幸せ。還元した父と兄も、そして里の者達全てがそのお言葉を光栄の至りと喜んでおりましょう」
「うむ」
僕はちらとサガラ達を流し見て、目を伏せた。彼ら、彼女らの主人である僕だからこそ、見るべきでは無いと思ったから。
僕に全てを捧げると誓ったサガラが今は亡き故郷を、家族を、仲間を思い涙するその姿は、皆からすれば目にして欲しくないだろう。
声無き声。音無き音。形とならぬ憧憬と哀愁が漂う静謐なる空間。
無常は無情となって降り注ぐ。されど彼らは、彼女らは歩き続けた。歩き歩き、汚泥と残滓に足を取られながらも前に進み続けた。
ならば今
休息に心の
「連盟『ミミリラの猫耳』の者達よ! 汝らの行いにより我がザルード領は、多数の民は救いを得た! その活躍、誠大義であった! その功績に対し、既に国王陛下より勲章を賜っておろうが、わしからも謝辞と感謝の品を送らせて貰おう。重ねて述べる。よくぞ我が領地領民を救ってくれた」
「勿体無きお言葉」
先頭に立つミミリラが胸に手を当て頭を下げると、続くようにしてサガラの全員が胸に手を当て深い礼をした。
それを見たお祖父様が僕へと顔を向ける。
「敢えてこう言わせて貰おう。ジャスパーよ、誠大義であった」
「光栄の至りに御座います」
「うむ」
僕の礼に、お祖父様は満足げに頷いた。
それからすぐ、お祖父様は顎を摩りながらサガラ達を見渡すと、ふむと言って言葉を続けた。
「此度は用事あって足を運んだが、機会があれば皆でゆっくり語り合いたいものよな」
「では先代様、その時は是非お忍びでどうぞ」
「ほう、それはいいの」
ジャスパーの僕がお茶目にそう言うと、お祖父様はさぞ愉快と笑った。
僕の気のせいで無ければ、お祖父様が長年背負っていた重荷が一つ下ろされたような、そんな朗らかな笑みだった。
僕がサガラに視線を向ければ、皆の顔にはどこか穏やかな笑みが浮かんでいた。
もう大丈夫。そう思った僕は不敵な笑みを浮かべ、大きく声を張り上げた。
「皆も構わんな? 構わんならでかく返事をしろ!」
様々な声色が混じり合った声がエントランスホールに響き渡った。
それは僕が問いかけたからでは無い、確かにサガラの魂から溢れ出た、お祖父様へ向けられた歓迎の雄叫びだった。
お祖父様はそれを聞いてまた満足そうに頷いた。
「ではその時は皆で杯を交わすとしよう。ああそうだ。冒険者足るもの酒精を好もう。馬車にザルードの名酒をたんと載せてきた。皆で味わうがよい」
「おい酒好きども聞いたか、きちんと礼を言っとけよ」
「先代様万歳!」
「今日は宴だな!」
「おい後で誰か街でつまみ買ってこいよ!」
「あ、ついでに果実酒買ってきておいてよ」
「先代様の酒飲むっつってんだろ!」
高貴な存在の前で見せてはならぬ、本来であれば醜態とも取れるサガラの姿に一切の演技は無かった。これでいいと思った。飾らぬこの光景こそが、連盟『ミミリラの猫耳』の姿なのだから。
僕はお祖父様を見て頷いた。お祖父様もまた頷いた。
僕が手を上げると、それを見た皆が黙る。
「ではな。また会おう皆の者」
お祖父様がそう言うと、皆が明るい表情のまま礼をした。
「ではお祖父様。また後程宿を教えて頂けましたら」
「うむ。だが出発は明後日を予定しておる。今日はここで休むとよい」
「ありがとうございます」
そう言って僕は指を振り、【闇の部屋】を解除した。
先に立ってエントランスドアを開け、そこからお祖父様と
きちんとエントランスドアを閉めると、お祖父様が僕を見る。
「ジャスパーよ。褒美はどこへ置くかの?」
「それでしたらうちの者達に運ばせます」
「うむ。ならば馬車をここに付けよう。おい」
「はっ」
近くに立っていた兵士がお祖父様の言葉に、馬車の連なり、その後方へと走っていく。
「ではなジャスパーよ、また会おう」
「ジャスパーよ、これからよしなにな」
そう言ってお祖父様と
それを見送ると、僕は連盟拠点内に居る力自慢達を呼んだ。
それ以外の者達にはエントランスホールに置かれているテーブルや椅子を移動させておく。一先ずはそこへ全ての褒美を置き、後でどこへ収めるかを決める為だ。
「ジャスパー殿」
エントランスドアの前に付けられた馬車から大量の褒美を運ぶサガラと、それを手伝う兵達の姿を眺めていると、エルランドが僕に近付き声をかけてきた。
彼は基本的に、初対面の者に対しては硬い表情をしていることが僕の印象なのだが、今はどこか嬉しそうに微笑んでいる。
はてどうしたことだろうと首をかしげる僕に、彼は丁寧な礼をしてきた。
「私の名はエルランド・マルリードと言う。ジャスパー殿が何度も顔を合わせている、エルドレッド・マルリードの父だ。伝えるのが遅くはなったが、此度は我が家族と仲間を救って頂いたこと、感謝する。いつか直接礼をしたいと思っていた」
なるほどな、と納得した。
確かに、あの
ならばこの機に、恩人に対し感謝の意を告げに来ても不思議では無い。
僕は苦笑しながら肩を竦めた。
「気にしないでくれ。知っているとは思うが、あれは俺個人の事情からくるものだしな」
「うむ。だが、だからこそ、余計にな」
「と、言うと?」
「我が住まう土地を第二の故郷と言う者、それ即ち同郷も同然。つまり家族であり仲間だ。故に、その者に対しては尚更な礼が要るであろう。親しき仲にも、と言うやつだな」
「なるほど、同感だ」
僕がそう言うと、彼が手を差し出してきたのでそれを掴む。
まるで戦友のような空気を漂わせる僕達に、新たに近づいてくる姿があった。【万視の瞳】で確認していたので分かる。それはにやにやと楽しそうな笑みを浮かべるエルドレッドだった。
顔を向けるとエルドレッドが手を上げてきたので、応えるようにして手を上げる。
そのまま彼は父であるエルランドの隣に立つと、これまたにやりと愉快げに頬を上げた。
「親父殿。親父殿は上位者の方々以外にもそのような言葉遣いが出来たのですな」
「エル、それはどう言う意味か詳しく聞かせて貰おうか」
「何、そのままの意味ですよ」
「どうやら俺は一から敬いと言うものをお前に教えねばならんらしい」
「私は五年間、先の王太子殿下の兵として勤めをさせて頂きました。その間一度足りとてお叱りを受けたことはないのですが、はて? 親父殿はまさか現ザルード公爵閣下の教えに不服があるのですかな?」
「俺はどうやら育て方そのものを間違えたようだ」
僕はそんな二人のやりとりについつい笑いを零してしまった。
この二人は昔からこんな感じで、親子と言うよりは友人と言った間柄を見せてくるのだ。
まぁお祖父様曰く、エルドレッドの言動は若かりし頃のエルランドと瓜二つらしいので、正しく親子と言ったところだろう。それを伝えても二人は頑なに否定するだろうが。
僕は何とも楽しそうに言葉を交わしている二人に声をかけた。このまま放っておけばいつまでも続いてしまいそうだったから。
「まぁ、これからは色々と関係を持つことになるとは思うが、その時はよろしく頼むよお二人さん」
「それはこちらの台詞だ。長い付き合いになるだろう」
「よろしく頼むぜジャスパー」
そう言って、先程のエルランド同様にエルドレッドと握手を交わす。
手を離すと、僕は小首をかしげた。
「先ずはどこかで一緒に杯を交わしたいもんだな」
「お、良いじゃねぇか」
「うむ、今から楽しみだ」
「エルドレッドは知っているだろうが、城塞都市ポルポーラの冒険者達に焼肉調理器具を持っていく約束をしててな。すぐの話じゃないが、その際にでも一杯やろうか」
「ご相伴に与ろうか」
「久しぶりにたんと飲むかな」
「おい、極自然に俺に奢らせようとするな。俺はお前達の恩人だろうに」
「おや? 我らは最早家族同然。そう遠慮をするものでは無いぞ」
「それなら俺はジャスパーの兄貴になる訳か。生意気な弟が出来たな」
「エルドレッド、新しい魔術を
「髪の毛一本残らねぇじゃねぇか。兄貴を世界へ還元させようとする弟が居るかってんだ」
馬鹿な会話に三人で笑う。そんな中、僕はひっそり心の中で思った。
エルドレッドよ、世の中には「兄上が居れば例え
そんなやりとりをしている内に、次々と褒美の品は連盟拠点へと運ばれていく。暫くして全ての褒美を連盟拠点へ運び終わると、兵の全員が僕に礼を言いに来た。
皆が皆知っている顔なだけに、少々くすぐったいものを感じながら僕はエルランドに向けた言葉と同じものを返した。
全員とのやりとりが終わると、兵達は来た時と同じように、隊列を組んで連盟拠点を去っていった。
僕は最後に馬車の小窓から顔を見せるお祖父様に頭を下げ、皆の姿が見えなくなるまで見送っていた。
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