第37話 連盟設立準備開始
「と言う訳なんだけどどうかな?」
「成る程……」
朝一番でベルナール商会を訪れた僕は、忙しいであろうジャルナールを応接間に引っ張り出した。要件はもちろん昨日のミミリラ達とのことだ。
まぁ僕が無茶を言うのも慣れてくれているだろうから問題は無い。
「当商会としても悪い話では無い。ただ、すぐに完全なお抱えと言うのは難しい」
「兼ね合い?」
「うむ。どうしても付き合いは断てぬ故な」
ここで言う付き合いとは、現時点でベルナール商会が懇意にしている連盟の
「品の流れを増やし、その護衛としての人を増やすにしても多少の時間はかかる。不可能では無い。ただ、今
「だよなぁ」
高級茶葉で淹れられた紅茶を無作法に飲むと、訪ねた。
「じゃあ連盟設立の理由と経緯、あと連盟後援者とか問題無い?」
「それは無論だ。任されよ」
「助かる」
連盟はあくまでも認定組織。斡旋所に認められなければ決して許可は下りない。審査は色々あるが、その中には冒険者登録の連盟版である、連盟後援者と言うものがある。これがあれば順調に許可が下りる可能性が増える。
連盟は小さなものであれば初期投資や必要な物資の準備に困ることは無いが、規模が大きくなればなる程にそうでは無くなる。
そんな時に連盟に対して援助をしてくれる後援者が付く場合がある。それは貴族だったり商人だったり色々あるが、実はこの後援者そのものが、冒険者登録に於ける身元保証人に当たるのだ。
この連盟は信頼に値する組織ですよ。だから後援してますよ。
そう言う意味にも取れるのだ。
もちろんこれは冒険者と同じで最初から付く場合もあるし、後から付く場合もある。ただ、連盟設立の時点で大きな後援者が付けばそれだけで信用が付く。
連盟に対しての身元保証人と言うものもあるにはあるが、これは連盟設立後でないと不可能だ。冒険者は個人、つまり人と人とのこれまでの付き合いでの保証を出来るが、連盟と言う組織は出来たばかりでは保証のしようがないからだ。
つまるところ、設立時に於ける後援者とは連盟の将来へ投資する者であり、投資する
今回の僕の後援者は冒険者登録した時同様、王室御用達ベルナール商会ガーランド支店長。信頼性は抜群だ。
「ちなみに、連盟設立登録の際に売買取引契約を結んでおくのも済ませておいてよいのか?」
「あ、言われたらそうだ。じゃあそれもお願いするよ」
これまた冒険者に於ける商会や商店との商品売買取引契約と同じで、連盟と言う組織としても同様の契約を交わしそれを斡旋所に登録しなければいけない。これで連盟に所属している連盟員はその商会や商店に商品を卸すことが出来る。
実はこれ、
その冒険者が所属した連盟と契約を交わしていないのに、売買取引をする訳にはいかない、と言う理由だ。例え連盟員でない頃に懇意にしていたところでも、改めての契約は大事となるのだ。
連盟を設立して契約を交わしてもらえない弱小連盟は斡旋所で処分する場合が多い。手間賃こそ取られるも、一番手軽な場所だからだ。
その後、
「あ、そうそう。これ今回のお礼と迷惑料」
「これは……」
応接間を出る前に渡したのは、先日の『
高濃度の、それもある程度以上の大きさを持つ魔石はその稀少性も相まって本来の価格以上の価値がある。表に出ている需要と供給のバランス次第では、その価値は更に跳ね上がる。
きっとジャルナールなら上位者への貸しに使うか、然るべき場所で高額で売りさばいてくるだろう。
「感謝する。後は任されよ」
「うん、お願いね」
「ちなみにこれからはどうするのだ?」
「ああ、たまには家に帰ろうかなって」
「そうか。気をつけて帰るといい」
「何かあったらいつでも“声”をかけてよ」
「あい分かった」
※
「あー」
久しぶりのベッドの感触に身を任せながら、ぼんやりと天井を仰ぐ。
どれだけ良い宿に泊まっても、このベッドの快適さには叶わない。
【
僕も今日は何もせずに一日ごろごろ過ごすだけの日にしよう、と思っていたのに、それを邪魔する気配と声がやってきた。
「王太子殿下」
「何だ」
自室に入って来たのはゼールを先頭にしたリーサやメイド、それに魔術医の姿。
ああ、そう言えば今日だったのか、なんて乾いた思いが浮かんだ。
「お胤を頂戴致したく存じます」
「好きにせよ」
今日は生殖能力と胤を確認する日だったようだ。先程まで晴れていた気持ちはすっかり曇ってしまった。この後は絶対に一日寝てやると心に誓った。
いつもの様に衣服を取り上げられ、同じく裸になったメイド達に囲まれ、処理が始められる。しかし気持ちが萎えきっている僕は全く反応しそうな気配を見せなかった。
しかも世話をしているのが無表情のリーサだ。余計に気持ちが萎えるのが分かった。しかしこのままだとこの時間が終わらない上に、また騒ぎ立てられてしまうこと間違い無しだ。
どうしたものかなと冷めた感情のままリーサの世話を見ていると、これがミミリラだったらどうか何て思ってしまう。
結局あの後猫耳こそ触らせて貰ったけれど、手を出すことはしていない。ミミリラがどう思っていたかは知らないけれど、僕としては冗談半分だったのだから。
でも、もしもミミリラを自分の思うままに出来たら、なんて考えていると、反応する自分に気づいた。せっかくなのでミミリラを好き勝手している場面を想像していると、すぐに世話は終わり、その後魔術医によって行われた確認も終わった。
今後、違う意味でも楽しみが増えたと言う浮ついた気持ちになって、僕は心に誓った通り、その日一日を夢の中に身を投じることにした。
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