第5話 王室御用達商人
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カー=マイン・カラーレス・ジ・ガーランド・ル・カルロ=ジグル・アーレイ
種族 人族・人種
魂位 1
生命力 100/100
精神力 200/500
状態:(全ての能力等級値が低下している)
(全ての能力等級値が上昇しない)
(個体情報が秘匿された状態にある)
力 2-7(2-7/6-7)
速度 2-7(2-7/6-7)
頑強 2-7(2-7/6-7)
体力 2-7(2-7/6-7)
知力 4-7(4-7/6-7)
魔力 1-1(1-1/6-7)
精神耐性 6-7(6-7/6-7)
魔術耐性 6-7(6-7/6-7)
魔術属性
光 0-0(0/6-7)
闇 0-0(0/6-7)
火 0-0(0/6-7)
風 0-0(0/6-7)
金 0-0(0/6-7)
土 0-0(0/6-7)
水 0-0(0/6-7)
技能
攻撃系技能:
防御系技能:
補助系技能:
回復系技能:
属性系技能:
特殊系技能:
固有技能:(【全能力低下】【能力固定化】【個体情報隠蔽】【技能解除】)
種族技能:
血族技能:
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一日休むと大分楽になったけれど、非常に残念なことに精神力はあまり回復して無かった。
生命力と精神力の回復量は
どうせ精神力を消費する技能は持っていないのでどうでも良いといえば良い。
さてそんな訳で今日は一先ず一気に頑強と体力を第6等級に上昇させてみることにした。
この二日間でこの二つは上昇させても問題無いどころか、さっさと上昇させておいた方が良いと気づいたからだ。
同時に力と速度も第3等級に上昇させておく。頑強と体力が上昇していれば身体を壊したり急激な体力の消耗を起こすことも無いだろうから。
一気に上昇させない理由は、上昇した能力値と実際の動作の差が激しくなるのを恐れたからだ。
普段の力で何かを握って破壊してしまうとか、そう言ったことは確実に避けたい。なのでゆっくり身体の使い方を慣らしていくつもりだった。
剣術とかを覚える為に武器が欲しいけれど、いきなり僕が欲したらおかしいので、今日は大人しく書庫で一日読書をすることに決めた。
知力を上昇させる為にも、頭を使い負荷に慣れさせておかないと怖すぎるからだ。
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カー=マイン・カラーレス・ジ・ガーランド・ル・カルロ=ジグル・アーレイ
種族 人族・人種
魂位 1
生命力 100/100
精神力 200/500
状態:(全ての能力等級値が低下している)
(個体情報が秘匿された状態にある)
力 3-7(3-7/6-7)
速度 3-7(3-7/6-7)
頑強 6-7(6-7/6-7)
体力 6-7(6-7/6-7)
知力 4-7(4-7/6-7)
魔力 1-1(1-1/6-7)
精神耐性 6-7(6-7/6-7)
魔術耐性 6-7(6-7/6-7)
魔術属性
光 0-0(0/6-7)
闇 0-0(0/6-7)
火 0-0(0/6-7)
風 0-0(0/6-7)
金 0-0(0/6-7)
土 0-0(0/6-7)
水 0-0(0/6-7)
技能
攻撃系技能:
防御系技能:
補助系技能:
回復系技能:
属性系技能:
特殊系技能:
固有技能:(【全能力低下】【能力固定化】【個体情報隠蔽】【技能解除】)
種族技能:
血族技能:
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やっぱり魔力は怖すぎて上昇させられなかった。
※
「王太子殿下、ベルナール商会の者が参りましたが如何いたしましょう」
「ん?」
昼食後もひたすら読書を続けていると、ゼールがそんなことを言い出した。
そう言えばそんな時期だったか。
王室御用達商人と言う者が居るが、そう言った商人は殆どが大店だ。国内の大きな都市には大体店を構えていて、それは僕が住むここ、城塞都市ガーランドでも同じことだ。
公然の秘密と言うべきか、僕がここで隠棲しているというのは知っている人は知っている。王室御用達商人であればむしろ知らない方がおかしい。
僕がここに住み始めてかれこれ五年間、月に一度の頻度でこの都市の支店長がお薦めの商品を持って足を運ぶのだ。
実は僕が商人と顔を合わせることはこの五年間で殆ど無かった。
最初の頃こそゼール立ち会いの元で商人の話を聞いていたものの、知力の低さも相まって何が良いのかも分からず、紹介される物をゼールに聞きながら取捨選択していた。
そんなものだからそもそも僕がその場に居る意味が無く、また僕も嫌気が差したこともあって商人の相手は全てゼールに任せていた。
顔を出してもせいぜい年に一度二度程度だ。
しかしながらこの館の主は僕である為、使用人筆頭のゼールであっても勝手な買い物は出来ない。僕が理解出来ないと分かった上でも、ゼールは月に何を買い、どれだけ使ったかの帳簿を僕に見せてきているのだ。
結果、商人は高価な嗜好品などを持って来ても購入して貰えず、ゼールは館に必要だと思われる分だけ購入するという、商人にとっては全く美味しくない客になってしまっているわけだ。
かと言ってここに住むのは王太子殿下。しけた客でも足を運ばないのは風聞が悪い。本店の主に知れたらこの国で商人としてはやっていけなくなるだろう。
商人も今ではご挨拶に足を運んでいるだけ、と言っても過言ではない状況だった。
こうしてゼールが僕に商人の到来を告げるのも、ただ形式的なものでしかない。使用人は主人の意思無く勝手なことは出来ないのだ。
普段であれば「良きに計らえ」で終わっただろう。だが、僕は本を書棚に戻すと外に向かった。
「会おう」
「……畏まりました」
ほんの僅かな間の後、ゼールの返事と後ろを付いて来る足音が聞こえた。
※
「王太子殿下に於かれましては、御健勝のこと、お慶び申し上げます。本日こうして御目通り叶いましたこと、光栄の極みに御座います」
「うむ。良く来た。座れ」
「ありがたき幸せ」
応接の間、僕は横柄にソファーに座り込んだまま商人を迎え入れた。
向こうもさぞびっくりしたことだろう、今までの僕なら「良く来た」なんて言葉は使わなかったから。
だけど今は来てくれて非常に喜ばしい。何せ自分の能力を確かめるのに丁度良い練習相手が来てくれたのだから。
「本日お持ちさせて頂きました商品については――」
そうして見せられた商品は見事に実用品ばかりだった。嗜好品は少なく、屋敷の維持や普段使う物の高級品というくらいの物だった。
はっきり言ってしまえば、超が付く程に高値の商品などは一つも無かった。
「以上で御座います。何かお気に召された物は御座いますでしょうか」
「ふむ」
僕はわざとらしく鼻を鳴らして並べられた商品に視線を巡らせた。
正直全く琴線に触れることは無かったけれど、それでは目的は果たせない。
だから、僕は覚悟を決めて知力を第5等級に上昇させた。
「そのカップの価値は?」
ソーサーとティースプーンがセットになったティーカップに視線を送る。
「そちらは一セットで金貨五十枚で御座います」
平民の一般的な月の収入が上下あるも金貨十五枚と考えると良い値段だろう。最高級品とまではいかないまでも王太子に持ってくる商品として格は悪くない。
「それは適正か?」
真っ直ぐに商人の目を見て言った。
こんな言葉、信用を絶対とする御用達商人としては受け入れがたい侮辱になりかねない。僕はそれを分かった上で、敢えて問いかけてみた。
商人は僅かに瞠目したものの、すぐに穏やかな顔つきで口を開いた。
「勿論に御座います。このジャルナール、一寸の偽りも申しません」
「ふむ」
頷いて、紅茶を一口飲み、わざとらしく笑みを浮かべた。
「なぁジャルナールよ。まだ時間はあるか?」
「勿論に御座います」
「では少し話がしたい。付き合え」
「喜んでお受けいたします」
うむ、と僕は頷いた。ここからが、僕の能力の成果を試す時間だ。
「お主の商会は、どんな商品を扱っている?」
「多種多様、言葉一つでどんな商品でもご用意致します」
「ほぉ。武器もか?」
「はい」
無能王太子のそんな馬鹿げた質問にも、商人は笑みを浮かべたままだ。
「愛玩動物は?」
「最高の獣をご用意致します」
「食べ物は?」
「大陸中から掻き集めて参ります」
「では奴隷は?」
「――ご希望を頂きますれば、どのような者でもお連れ致します」
これには一瞬面食らった様子だったが、流石、すぐさま表情を戻していた。後ろで使用人筆頭が小さく咳払いした気がしたけれど僕は何も聞いていない。
僕は背もたれに身体を預けた。
「流石御用達商人。素晴らしい」
「お褒め頂き光栄の極み」
「うむ。うむ。ところで今日は商品が少ないように見えるな。出来ればもっと色々なものを見てみたいものだ。知っておるだろうが先日成人してな。色々な物に興味が出てきたのよ」
「左様で御座いますか」
「後は色々外の世界のことを知ってみたいものだな。なにせ私はこの屋敷から出ることは無い。外では何が起きているのか、何があるのか全く知らん。そのせいか色々な商品が気になってしまってな」
ははは、と笑うと、商人もまた追従して笑った。
「何か面白いものがあれば次にまた持って来い」
「お言葉、確かに賜りました」
「しかしお主は良き商人であるな。これなら今後も期待が出来る。いや立派。何かしらの褒美すら取らせたいくらいだ」
勿論そんな権限僕には無い。御用達とは言えたかが商人。こんな程度のことで褒美をくれてやること何てありえない。
そして言質と言うものがある。王侯貴族と言うものは色々面倒なもので、言葉一つが足を引っ張るのだ。何の権限が無くとも、僕は今いらない言葉を口にしてしまった。
だがそれで良い。
「おおそうだ。先程のカップは良いな、気に入った。買おう」
「はは、有り難き幸せ」
「ところで私は記憶するのが苦手なようでな、金額を忘れてしまった。はて、」
商人の目を見て微笑む。
「――この商品の値段は幾らだったか?」
「それは……」
商人が口ごもった。僕は笑った。
次に商人から出てくる言葉で僕の能力の結果と、この商人の価値が決まるからだ。
少し、心臓が高鳴っていた。緊張が分からぬように、努めて笑顔を保つ。
「――金貨、百枚に御座います」
僕は今日一番の笑みを浮かべた。
「ゼール、持って来い」
「畏まりました」
ゼールが部屋から出て行くのを確認して、僕は商人を見た。商人は笑って僕を見ていた。
だけど、どこか表情は硬く、その瞳は真っ直ぐに僕を見据えていた。
「次も頼むぞ、ジャルナールよ」
「はは」
※
――カップが変わっても、味は一緒だな。
メイドを追い出した自室で紅茶を飲みながら今日の商談に思いを馳せる。
僕は今まで自分が望む方向に会話を持っていく何てしたことが無かった。そもそも相手が何を意図して言葉を吐いているのかを把握する以前に、出てくる言葉を理解することすら出来ていなかったのだから。
それが今回は、自分のしたいように出来た。拙いところもあっただろうけれど、それでも僕にとっては大きな一歩だった。
あの商人はカップの値段を適正と断言した。その上で、値段を訂正してきた。それは僕が求めた情報と、今後情報や商品を欲している意図を読み取ったからに過ぎない。
あの金額はその値段への支払いだった。
もしあそこで値段が下がっていたら商人の頭の中を疑っていたし、適正で言ってきたら役立たず、望外な値段を突きつけて来たら二度と顔を出してやるつもりは無かった。
僕にとってあの値段は完璧とも言えた。
後ろに立っていたゼールがどう思ったか何て知らない。頭が悪いと思ったか、あるいは成人して気が大きくなったかと小馬鹿にされたって構わない。
僕はもう、僕の好きなように生きると決めたのだから。
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