占い館、開店中。

久遠 紫依

占い館、準備中。

第0話 占い館、オラクル。

 ──当たるも八卦、当たらぬもまた然り。




 少し冷たい風が吹く。それがまた心地良い。

 秋空の下、私はお店の開店準備をしていた。お釣りを用意して、席を用意して、の水晶玉やタロットカードを用意して。


 都会の繁華街からちょっと外れた廃れた裏通り。毎晩18時から22時まで開店する小さなうらないの館、[オラクル]


 少しの間だけ開店する不思議で、変わったうらないのお店。(と思われているみたい。)

 儲かってなさそうに見えるけどこれでも一応やって行けてるよ。休日出張サービスもあるし、予約もわりと埋まってるんだ。

 評判?星5つの名店だよ。ほんとだよ?ネットのクチコミはそんなだけど。(見る目ないね。)

 私はそこでうらないをする、いわゆるうらない師ってやつだ。


 あっそうだ。自己紹介しなくちゃね。占い師の名前と…本名も。


 私は 心詠こよみ

 本姓 月詠つくよみ

 名も 心詠こよみ


 どこにでもいる普通の女の子…て訳じゃあない。

 先祖代々お偉いさん達にうらないをしてきた由緒ある家柄のなお嬢様ってやつね。勿論皮肉で言ってる訳じゃあないよ。ほんとの事だしね。


 私には…私達の一族にはちょっとした力がある。人をうらなったら…ううん、“占視”《み》たら…“理解”《わか》っちゃうんだ。

 どんな人柄なのか、どんなことをしてきたのか、この先どんな目に遭うのか、どんな悩みや願いがあるのか…過去も現在も未来も色々と、ね。

 勿論“占視”ようとしなければ見えないよ。常に“占視”えてたら不便だしね。


 私達はこの力を“占視”《せんし》って呼んでる。お母さんが言うには、神様から与えられた特別な力だって。私達の先祖から受け継がれてきた、すごい力だって。


 でもおかしいよね。

 そんな力を持ってたって役に立たないことだってあるのに。

 見たくないものだってあるのに。

 嫌な思いだってしなくて済むのに……この話やめよっか。


 まぁ私はこの力が普通よりも強いんだよ。お母さんよりもお婆ちゃんよりも……先祖誰よりも、ね。


 あ 、そうこうしてる間に時間が来ちゃった。準備も終わらせなくっちゃね。最後にこの案内札を掛けて……声も掛けて。




「──“占視”えるよ、あなたの未来。“理解わか”るよ、あなたのこと。」



「──うらなってあげる。」






[占い館、開店中。]








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占い館、開店中。 久遠 紫依 @kudoh-shii

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