自宅の洗濯機が壊れてしまった光莉はやむを得ずコインランドリーへ。そこには何やらうさんくさいおっさんにウザ絡みされている女子大生がいて……。
と、なんやかんやで仲良くなった3人を中心に、コインランドリーを舞台に謎解きを進めて行くお話です。
ミステリーと言うと、殺人が絡んだりしてちょっとドロドロした雰囲気の物も多いのですけど、このお話は凄く明るいです。ポップなんです。キャラクターも基本的に明るく程よく抜けていて、楽しく読んでいけるのです。好きだ。
そして、本来は他人同士であるはずのひとが、コインランドリーという場を接点にして少しずつ繋がっていく人情というか、絆というか、そんな風味もあるのです。
安心して読める、でも、時々入るスッとした視点も心地よい、そんなお話を皆様もぜひ。
……そして、あと237文字書いて10万字にして10万字以上がルールのいろんなコンテストに出してください!で、受賞してドラマ化か舞台化してください!
OLの衛藤光莉(えとう ひかり)は自宅の洗濯機が壊れてしまったため、コインランドリーに行くことになる。
そこで店に入り浸る中年男性の片桐、女子大生の浜音美波(はまおと みなみ)と出会うところから話が進んでいく。
ごくありふれたコインランドリーという狭い空間で起こる人間模様が描かれている物語。
そして店内で流れているラジオ番組のミステリーコーナーが始まると物静かだった女子大生、浜音の雰囲気が変わり物語は謎解きパートへと転換していく。
出てくる登場人物の描き方が上手で良かったです。
ほろ酔い加減で話しかけてくる怪しいおじさん、寡黙で少し影ある女の子、変にテンションが高いラジオDJ、と皆個性的で魅力があります。
知らない者同士が徐々に心を開いて距離を縮めていく描写が丁寧に描かれていて、読んでいるこちらも登場人物にだんだんと親しみが湧いてきました。
後半のミステリーの部分も細かく状況が書かれていて、謎解きの解説は順を追って丁寧に描かれているので読みやすいです。
今作はミステリーものではありますが、登場人物それぞれに魅力がありヒューマンドラマとしても楽しめる作品かと思います。
洗濯機は壊れたが、洗濯はしなければならない。そこで衛藤光莉(えとう ひかり)はコインランドリーへ。しかしそこの主的な存在である片桐に強引なナンパをされていた女子大生、浜音美波(はまおと みなみ)を見つけて……。ナンパは誤解だったのだが、ラジオを聴いている美波の様子がおかしい。片桐曰く、彼女は物事をくわしく読み解く癖があり、その奥にある真実を導き出すのだという。かくて美波が語った推理とは?
コインランドリーに流れるラジオ番組、そこへ投稿されたちょっと不思議な話の謎が美波さんによって解き明かされます。謎の先に現れる新たな謎あり、それを丸っと明かす意外な展開ありで、安楽椅子探偵ものの醍醐味をいっぱいに味わわせてくれる作品なのですが。それと同時に、光莉さんを中心にした出会いのお話でもあるのですよ。「理」と反しつつ寄り添うものが「情」。その両者を何気ない掛け合いで魅せてくれる点、見逃せません。
ミステリーと人間ドラマの合い盛り、どうぞお楽しみあれ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋 剛)