第一話 新たな生き方 前編

タイトル

 かけまくもかしこき魂迷譚

https://kakuyomu.jp/works/16818093084519004919



著者名

 長宗我部芳親様



[玖々琉大神(くくるのかみ)編]

第一話 新たな生き方 前編

https://kakuyomu.jp/works/16818093084519004919/episodes/16818093084700181549




> 人生に大きく影響を与えるものが恋。

⇒「大きく」は連用形なので「与える」に係ります。「大きい」のが「与える」に係るのなら原文でいいのですが、「影響が大きい」ことを示したいなら、

> 人生に大きな影響を与えるものが恋。

⇒となります。


> 恋の数だけ無性に焦がれて何度も無計画な日々を送ってきたという自覚は本人にもあるようで、振られて失恋する都度、反省する日々に身を浸す。

⇒ここは意図次第なのですが、「恋の数だけ無性に焦がれ、何度も無計画な日々を送ってきた」と「焦がれ、」の形にする方法があります。「焦がれ、」とするのはこの前までの文字をいったん確定することになります。もし「無性に焦がれて日々を送ってきた」のように「送ってきた」に係り受けしたい場合は「焦がれて」を用います。


> 周りの数少ない友人に彼女が出来るたびに焦りだし、また懲りずまた繰り返し……だが、今回の結果はいつもと違った。

⇒「また懲りずまた繰り返し……だが、」は「懲りずにまた繰り返す。だが、今回の結果はいつもと違った。」と「また」を片方にだけ付けましょう。そして「……」は余韻を出すときに絞ったほうが効果が高くなります。ここでは単純に「また繰り返す。だが、」と詰めたほうがわかりやすいですね。


> 道路から丸見えな、告白場所となったこの境内。

⇒「この境内」の「この」は要りません。今境内を見ているのであれば、「この境内」でよいのですが、今は雑木林の中にいて境内を見ていないので「告白場所となった境内。」となります。「昨日に遡る」としているので、今が境内でなければ「この境内」とは言えません。


> 後ろで結んだ髪の光沢や見た者を包み込むような眼差しといい、近所ではとても評判がいい。

⇒「〜といい、」はふたつ以上並列して使います。この場合は、

> 後ろで結んだ髪の光沢といい、見た者を包み込むような眼差しといい、近所ではとても評判がいい。

⇒となります。ただ、終わり方が「評判がいい。」だと「〜といい、〜といい、」と被ってしまうので単調な印象を受けます。たとえば、

> 後ろで結んだ髪の光沢といい、見た者を包み込むような眼差しといい、近所ではとても評判だ。

⇒と書いても悪い意味合いにはなりません。


> なかなか彼女の口から返事が発せられることはない。

⇒「発せられることはない。」はちょっと持って回った言い方ですね。ここは単純に次のように表したほうが効果的です。また「なかなか」は「発せられない。」ことの修飾なので係り受けとして間に「彼女の口から」を入れると間延びしてしまいます。ここも引き締めたいので、「なかなか」を「発せられない。」に近づけます。

> 彼女の口からなかなか返事が発せられない。


> 頭を下げたままのアラタの瞳はいつまでも冷静さを欠いていた。

⇒「アラタ」と表記するのなら、最初から「灼にとって」とはせずに「アラタにとって」と表記したいところです。どうしても漢字を書きたいのでしたら、冒頭にある、

> 恋の数だけ無性に焦がれて何度も無計画な日々を送ってきたという自覚はアラタ本人にもあるようで、振られて失恋する都度、反省する日々に身を浸す。

⇒のように漢字の近いところで読みがなを書いておくべきですね。

 「頭を下げたままのアラタの瞳はいつまでも冷静さを欠いていた。」ですが、三人称視点として誰が「頭を下げたままのアラタの瞳」を観察しているのかがわかりませんね。

 ここは「の瞳」と書いてしまったことで、「どこから見ているんだ」という視点保有者の存在が気になります。

> 頭を下げたままのアラタはいつまでも冷静さを欠いていた。


>もしかしたらまた駄目だったかと考えたのか、情けない鼻息が漏れる。

⇒「また駄目だったと」と「か」は省けます。そして「考えたのか、」ではなく「感じたのか、」ですね。

 「考えた」は情報を吟味する意、「思う」は情報から受けた印象の意、「感じる」は情報から感情を動かされる意です。

 「情けない鼻息が漏れる」だとアラタに視点があるので、「もしかしたら〜と感じたのか」がアラタ以外に視点がある書き方なので両立しません。「漏れている。」と書くことでアラタ以外に視点を移すことができます。

>もしかしたらまた駄目だったと感じたのか、情けない鼻息が漏れている。


> この時代には珍しく彼女はスマホを持っていないらしく、家の所在を聞く領域に留まったのだが……

⇒三点リーダー「……」は終止にならないので句点「。」を最後に付けましょう。以下も同じ理由で句点「。」を付加してくださいませ。

 「家の所在を聞く領域に留まった」はなかなかユニークな表現ですね。普通は「聞くに留まったのだが」となります。こういうユニークな表現は「個性」になりますので、接菊的に考えてみましょう。



 ◇◇◇



> 次にアラタは温かみのある証明で満ちた和室で目覚めた。

⇒「照明で満ちた」かなと。


> 寝かせられた背中から違和感を感じ取ったのか、すぐ真横を見て畳に敷かれた布団に寝かされていたことに気づく。

⇒「寝かせられた」は「寝かせる」の受身形、「寝かされて」は「寝かす」の受身形ですね。ここでは「目覚めた。」わけですから、頭の「寝かせられた」は要りません。

 また「違和感」は「違和を感じる」意なので、「違和感を感じる」は重ね言葉です。「背中に違和感を覚え、」「背中に違和感があり、」あたりが主ですね。

 助詞や語り口が少し変なので、そこも調整します。

> 背中に違和感があり、すぐ真横を見て畳に敷かれた布団へ寝かされていたのだと気づく。


>それから起き上がると、彼は部屋の風景を見る。

⇒「それから」は要りません。ただ、単に「起き上がると、彼は部屋の風景を見る。」だと情報量が足りません。たとえば「膝に手を当ててゆっくりと起き上がると、」のように、どのようにして起き上がったのかを描写するとバランスがとれます。


> 田舎のよくあるような四角いタイプの間接照明。

⇒「田舎によくあるような」ですね。


> 年季の入って少し黄ばんだ壁。

⇒「年季が入って」ですね。「年季の」を使う場合は「入った」をとります。


> そんななか、どこからともなく声が聞こえてくた。

⇒「そんななか、」は要りませんね。あと「聞こえてくた。」になっているので「聞こえてきた。」に訂正します。

> どこからともなく声が聞こえてきた。


> 彼は障子の方を視線を注ぐ。

⇒「障子の方を」「視線を」と助詞「を」がふたつ「注ぐ」に係り受けしているので助詞の重複です。「彼は障子の方に視線を注ぐ。」とするのも手です。ただ「〜の方」は使わなくてもいい言葉なので、使うとやや蛇足です。以下でも通じます。

> 彼は障子に視線を注いだ。


>「ム、ムジナだったんですか!? てか、どいういうこと!?」

⇒「てか、どういうこと!?」ですね。


>「その、騙すつもりはなかったんです。本当にすまほを持っていなくて。

⇒ここは「スマホを持ってていなくて。」でいいですね。もしもムジナの言葉として和製英語を使わせるのに違和感があるようなら、原文のように「ひらがな表記」もありです。


>しかも、その音はやむなくして止んでしまった。

⇒現代語だと「やむなく」は「やむをえず」の意なので、文意がとりづらいですね。

>しかも、その音は気づかぬうちにやんでしまった。

⇒あたりならイメージしやすいですね。


> 少女は壁からフワフワと身体を宙に漂いよわせながら移動をし、すたっとムジナのすぐ真横に降り立った。

⇒「すぐ横」のことを「真横」と呼ぶので、「すぐ真横」は重ね言葉です。「すぐ横」か「真横」かだけでだいじょうぶです。


>その様子を見て彼に何か思うことがあったのか、彼はしばらく考えるような動作を見せ、

⇒「彼に」「彼は」と一文で重複すると損をします。ここは次のようにしても文意は同じです。

>その様子を見て何か思うことがあったのか、彼はしばらく考えるような動作を見せ、

⇒「彼は」は「アラタは」でもかまいません。


>「ちょっと待てこれだけ真剣な様子を見てもまだ分からぬのか?」

⇒「ちょっと待て。これだけ〜」のように句点「。」を付けるべきですね。


> 玄関で靴と鞄を見つけるなり、腰がけて靴紐を結ぶ。

⇒「腰かけて靴紐を結ぶ。」ですね。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 始まり方がややまとまりがなかったのですが、終わり方は抜群ですね。

 死んでいるのに遁走しようとする。

 アラタがいつ死んでいることに気づくのか。

 始まってからすぐに、もう少し具体的なエピソードでアラタの思考が掴めると、第一話の終わりまで読んでもらえますよ。

 そしてこのオチなら「第二話も読もう」と思ってくれる読者が多くなるはずです。

 入り方を工夫して、もう少しアラタの思考を前面に出してみましょう。


 今日の添削はここまでに致します。

 明日は用事がほとんどないので、2話くらい進めたいところです。

 なるべく集中できる環境を作りたいと存じます。


 それでは直しをよろしくお願い致しますね。




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