ゴースト 名前のない男たち 7

彷徨える王【心理サスペンス:横溝正史ミステリ&ホラー大賞応募作品】

作者 雨 杜和orアメたぬき


第六章

ゴースト 名前のない男たち 7


https://kakuyomu.jp/works/16816927863278356267/episodes/16817139556667946987



構文と誤字脱字など

> ここに? と無言の仕草で聞くと、ジオンは軽く笑みを作ってうなづいた。

⇒「うなずいた。」ですね。「ず」と「づ」はけっこう使い分けが難しいので、グーグル検索も使って確認してみましょう。

 ちなみに元は「項(うな)突く」の意味で歴史的仮名遣いでの表記は「うなづく」でしたが、現在仮名遣いでは「うなずく」と表記します。



(1)> 暗いトンネルをひとり歩く兄は、孤独を受け入れることに、当の昔に決めたのだろう。

⇒ここは助詞の使いどころが難しいですね。正しい助詞に置き換えると、

(2)> 暗いトンネルをひとり歩く兄は、孤独を受け入れることを、当の昔に決めたのだろう。

⇒ですが、これだと格助詞「を」が3回も出てきます。

 係り受けで見てみます。

 「トンネルを」は「歩く」に、「孤独を」は「受け入れる」に、「受け入れることを」は「決めたのだろう」にそれぞれかかります。

 ここで「孤独を」は「受け入れる」に、「受け入れることを」は「決めたのだろう」にそれぞれかかると、文意が一瞥して判明しないので都合が悪い。

 ですが原文(1)だと助詞が正しくないので添削(2)を使わざるをえません。

 で、これを根本的に解決するには、文を二つに分けます。

(3)> 暗いトンネルを兄はひとり歩く。そんな孤独を受け入れることを、当の昔に決めたのだろう。

⇒とすることもできますが、前の文が確定してしまうと、おそらくアメ様の本来の意図ではなくなってしまうはずです。であれば、

(4)> 孤独を受け入れる。暗いトンネルをひとり歩く兄は、当の昔に決めたのだろう。

⇒これが最適な形だと思います。

 ただし、(2)の文のリズムや韻律のほうが書きたい文の意図である場合は(2)を選んでもかまいません。



>「話しをするのは苦手なんだが」と、前置きしてコーヒーを口に含むと、自嘲するようにほほ笑んだ。

⇒「話をするのは〜」ですね。



> あの強烈な兄の姿は記憶に刻まれている。

⇒「強烈な兄」の姿なのか、兄の「強烈な姿」なのかで語順が変わります。




※構成と展開について

 ジオンから語られる過去とサフィーバ財団の特異性。

 すべては過去から続く血統を絶対視、神聖視する狂信者の仕業。

 であれば「ジオンが死んだ」と確定されれば瓦解せざるをえない組織だとも言えますね。

 だから櫻子の部屋に置かれている「ジオンの骨粉」は最後にして最大の信仰の対象となりかねない。

 おそらくそこまでは気がまわっていないのでしょうか。

 櫻子が部屋に戻ったとき、骨粉の強奪とともに危害を加えられかねないはずです。

 だって「遺骨」がなくなれば、櫻子は探さざるをえないのですから。

 それで自分たちまで捜査の手が伸びたら厄介だ。

 だから邪魔になりそうな人物は消す。

 という思考が展開されても不思議はない。


 おそらくジオンは「遺骨」を寺院に納めればすべてが終わると思っている。

 しかし狂信者がいるのであれば最後の姿「遺骨」でさえもが信仰の対象となりうる。

 これはサリン事件を起こした宗教団体の教祖が死刑となって「遺骨」の行く先を決めるのが難航したことが証左です。

 そのときは後継宗教団体に属していない三女が引き取ることで手打ちになっています。たしか散骨されたんだったかな。

 そういう事件もありますから、ジオンの考えは現実的にはやや「甘い」のかもしれません。


 ということで、ジオンが描く展望と、櫻子が迫られる選択肢。

 物語がどう締まるのか、行く末を決めることになります。

 もうすでに最終話まで書き終わっていると思います。

 とくにラストでこの長編を象徴し、決定づける一文が置かれているかどうか。

 それで『横溝正史ミステリ&ホラー大賞』の選考を左右すると思います。

 最後の一文が最大の効果をもたらすために、最後の最後まで頭を働かせてみましょう。



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