夕日に影は映らない
夕日に影は映らない。
作者 長宗我部 芳親
夕日に影は映らない
「カクヨム甲子園2022」【ショートストーリー部門】応募作
https://kakuyomu.jp/works/16817139558359818337/episodes/16817139558360303649
構文と誤字脱字など
>家に足を踏み入れると、母ちゃ後ろ姿が畳部屋に映った。
⇒「母ちゃの後ろ姿が」だと思います。
> 俺の家系で俺ほど早く早死した者はいない。
⇒「早」の字の重複で、読み手に伝えたい情報も同一です。
「俺ほど早く死んだ者はいない。」「俺ほど早死した者はいない。」のいずれかですね。
> 小さい頃、俺も母ちゃ温かい背中に身体を預け、夕日の中をこの坂を下ったような気がする。
⇒ここも「母ちゃ○○」と続いているのですが、どこかの方言でしょうか?
ただ方言だと断りもないですし、高校生対象の小説賞だと方言を活かしすぎると採点が厳しめになるので、「母ちゃの温かい背中に」のほうがよいでしょう。
> 泣かせて困らせてしまった思い出がある。
⇒「泣かせて困らせてしまった」だと母を泣かせたように見えますね。母は「困った」はずですが、泣いたのは幼い自分のはず。
であれば「泣いて困らせてしまった」が正しいはずです。
※構成と展開について
まず「俺が帰ってきた年には、戦争は終わっていた。」とあるので「生きて帰ったのかな?」と思わせてのきゅうりやナスの馬が出てくる。これで「死んでいる」とわかるのですが、今の高校生でこれが瞬時に出る人は少ないかな。
ですが、「むさかり婚。里に古くから伝わる伝統だ。若くして未婚で亡くなった故人を思い、あの世で結婚が叶うようにと、故人の横に架空の花嫁を添えて結婚式が行われている様子を描いたものだ。」まで読めば、まず主人公が「死んでいる」とわからない人はいないでしょう。ダメでもすぐに死神が出てくるので、ここまでできっとわかります。
ここでわかった人はもう一度頭から読み直して「なるほど」と独り言ちますね。
料理に手を出そうとして「爺ちゃ」が出てきますね。
「婆ちゃ」が出てくるのでこちらも生きているのかと思いきや。
この作品は前半で人物の生死が曖昧なままで進んでいきます。
これは意図的なので、きちんと評価されれば高評価間違いなしです。
そこから家の外へ出て道を進んでいく。
稚児が在りし日の自分を思い起こさせるのもよい演出です。
ちょっと気になるのが「時代設定がわからない」点です。
一般的に太平洋戦争だとは思うのですが、どこと戦ったのか言及がないので、日清戦争や日露戦争かもしれないし、朝鮮戦争かもしれない。
「戦争」の呼称は、戦後になってから付けられますので、死んだ主人公が「戦争名」つまり「太平洋戦争」「日清戦争」などの呼び名を知っているのは不自然です。
でもどこの国と戦ったのかは知っているはずなので、そこを書いてみましょう。アメリカと戦えば「太平洋戦争」、ロシアと戦えば「日露戦争」とわかりますからね。
ちょっとしたリアリティーですが、あるとないとでは作品の説得力が違ってきますので、ここは「どこの国と戦ったのか」を最初の一文に付け加えられないでしょうか。
> 俺が帰ってきた年には、アメリカとの戦争は終わっていた。
これだけでその後の文章の説得力がまるで変わってきます。
今のままだとただのファンタジーですが、「アメリカ」という具体的なものを出すことでリアリティーが増して「物語性」が強まるのです。
きゅうりやナスの馬が出てくるあたり芸が細かいので、そのリアリティーを補強するためにも「どこの国と戦ったのか」を書いてみてはいかがでしょうか。
ラストは「当然、夕日に影は映らない。」ですが、意図を考えればこのままでもよいかなと思います。
「当然、」を削っても物語としては成立するのですが、主人公が自分の死を改めて受け入れるために、あえて「当然、」を付けるのがこの作品の意図ではないでしょうか。
であれば、「当然、夕日に影は映らない。」は必然の書き方だと言えます。
以上で構成と展開、寸評を終えますね。
今の高校生には難しいお題かもしれませんが、コンテスト応募作ならこのくらいの題材が合っていると思います。
いちおう指摘した部分の確認をしていただいたら、もう一度頭から読み直して、リアリティーを感じるようなら、そのままの形で応募締め切りを待ちましょう。
推敲、お疲れさまでした。
良い結果になることを楽しみにしております。
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