16
臨海22世紀
作者 長宗我部 芳親
夢見るガイノイド編
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https://kakuyomu.jp/works/16817139556713261997/episodes/16817139558152476456
構文と誤字脱字など
> ミオンの目に不安の色が浮かぶ。
⇒ここまで三人称一元視点でミオンを追っていたので、ここだけ傍から見た一文が入っているのが気になります。ただ、気になるだけで、とりたててこれが悪いというわけでもありません。気にはなりますが許容範囲内です。
厳密には「ミオンは不安な心持ちになった。」のようにミオン視点にしなければなりません。ですが原文でもそれほどわかりにくさはないとは思いますし、小説賞・コンテストでもこの表現だけで落とすことはないので、ここはこのままでもかまいません。
(1)> 立ち上がろうとした途端、ぐらっと重心が傾き、彼女はその場で転んでしまった。
(2)> 彼女はめげず、打ち付けた腰をさすりながら立ち上がるが、どうしてもバランスを取ることができなかった。毎度の如くふらついてしまう。
(3)> 平衡感覚に違和感があるようだ。
⇒(1)は初めて転んだ文です。(2)は転んではいませんが立ち上がったのは二度目です。二度目を「毎度の如く」と表現するとちょっと大げさな印象を受けるので、「立ち上がるたびにふらついてしまう」とすれば二度目でも「ふたたび」なので問題はありません。
> そのうち片方は紛失しまってまでいた。この状態では海中を進めない。
⇒「片方は紛失して(しまって)いた。」「片方は紛失までしていた。」と紛失と書くならこのあたり。たとえば「片方は欠損していた。」と書くとアンドロイドらしさが出ます。
ただ「片方」って? という疑問が湧きます。両足にスクリューが付いていたのですから、右足か左足かだろうとわかりますので、「片方」ではなく「左足のスクリューが欠損していた。」のようにきちんと説明してあげれば、読み手がすんなり絵を描けます。
> 優しい声色でミオンは聞き返えされる。
⇒「聞き返される」ですね。
(1)>――アイゼンだ。
>
>「すみません、友達と勘違いしちゃって……。私はミオンって言います。私を運んできてくださったのは、貴方ですよね。助けてくださってありがとうございます」
(2)>「いえ、お気になさらず。ワタシはアイゼンです。以後お見知りおきを」
⇒(1)の「アイゼンだ。」は誰のセリフでしょうか。ミオンが彼女を知っていた? ようには読めないのですが。もし読み手に対して前話まで出てきたアイゼンだと知らせたくても、(2)で自己紹介していますので(1)は意味がありません。
ですので(1)は省いてしまいましょう。
>スクリューの件についてはお力添えになれそうにないですが、その他の修理ならば可能です。
⇒「お力添えできそうにないのですが、」ですね。「お力添えになれそうにないです」だと「助力になれそうにない」となってしまいます。「お力添えになれそう」はおそらく「お〜になる」という相手の行動を尊敬する表現に可能形と推量形を加えたものでしょう。ただ「お〜になる」という尊敬表現の場合、可能形にすると受身形に近くなって「二重敬語」と誤読される可能性が高いのです。
また今回の場合はアイゼン側が謙っているので「お〜になる」の尊敬表現ではなく、「お〜する」の謙譲表現のほうが正しいのです。
そこで「謙譲表現+可能形+推量形」である「お力添えできそう」が正しいということになります。
>「ありがとうございます。なんだか気が楽になりました!」
⇒「気分が楽になりました」ですね。「気が楽になる」は「やましいことがあったけどそれが晴れて」という表現に用います。
>すてん、と受話器の向こうから出し抜けにやって来た声に驚き、アイゼンは思わず尻餅をついてしまった。
⇒「すてん、と」が「アイゼンは思わず尻餅をついてしまった」にかかるので、後ろに送ったほうがよいですね。
>受話器の向こうから出し抜けにやって来た声に驚き、アイゼンは思わずすてんと尻餅をついてしまった。
> その一方でアイゼンにはやり場のない気持ちが心中にあることを、彼女の仕草が示していた。切なげに羨ましそうに、心なしか彼女は微笑んで二人を見ていた。
⇒「やり場のない気持ちが心中にあることを、彼女の仕草が示していた。」と書くのは簡単ですが、具体例がないため「どのような仕草」なのかが読み手に伝わりません。たとえば「眩しそうに目を細め、」のように仕草を書くだけで絵が浮かびますから、そのあたりをきちんと書きましょう。
また「心なしか彼女は微笑んで二人を見ていた。」とありますが、ホログラムが現れるタイプの通信機能なのかが気になります。もしホログラムがないのであれば「心なしか微笑んで二人のやりとりを見ていた。」のように「やりとり」を見ていた形にするべきですね。
※構成と展開について
アイゼンに助けられたミオンが、アイゼンによって修理された。
これで百年前の出来事を出した意味ができましたね。
読み手に「ミオンを助けたアイゼンは、百年前にイツキのそばで働いていたあのガイノイドか」と知らせるのに役立っています。
人によっては一文で「百年前から博物館にいるガイノイドは」のように書く人もいる中で、文字数を割いて百年前を書いた効果が出ています。
ただし、この作品が十万字程度の作品を想定している場合、アイゼンがこれからもミオンたちを助ける役回りを演じないのであれば、百年前のエピソードがあまり必然性を持ちません。
つまりこれからアイゼンがミオンとセーラとともにアストラモス攻略に乗り出さなければ「本筋とはまったく関係のない話を長々と読まされてしまった」と思われかねません。
百年前の地球とアストラモスの侵攻を伝えたいだけでは、あれだけの分量を使う根拠が薄いのです。
そこをどう取捨選択するか。「百年前のアイゼン編」を書いてこれからミオンとセーラの側にアイゼンが加わるのか。「百年前のアイゼン編」を省いてあくまでもミオンを助けて修理したガイノイドがいた、というだけのエピソードにするか。
そのあたりの構成を少し考えておいてくださいね。
この疑問以外は、楽しく読めましたので、物語そのものの面白さは損なわれていませんね。
じゅうぶんに面白い物語だと思いますよ。
これからも、さまざまな挑戦をしながら、楽しんで執筆してくださいね。
※著者様からURLの許可が下りましたので、本話から添削した元URLをリンク致します。
どのような推敲がなされるのか、比べながらお読みいただけたら幸いです。
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