プロローグ 見習い天使は舞い降りる

見習い天使はそこにいる!

作者 ゆうすけ

プロローグ 見習い天使は舞い降りる


https://kakuyomu.jp/works/1177354054922344013/episodes/1177354054934806006



 完成度の高い原稿でね。

 これができるとさらにランクアップできるような細かなポイントを拾うことになりそうです。

 また、構成、展開は毎話ごとに書いていきます。

 一話ごとにどのように構成と展開が変化して全体に影響を与えますので、添削は主に「構成と展開」に絞ってもよいくらいです。

 出だしでもし弱点があるとすれば、キャラクターの強さかもしれません。

 語り口が「ですます調」なので、キャラクターのインパクトが若干削がれるのが少し損に見えるかもしれません。ですが、キャラクターが元々強い個性を持っていれば突破できる壁なので、作品を読みながらキャラクターの個性の強さがどこまで出ているかにも注目していきます。



構文・誤字脱字について

>「アリス、君からみんなに何かあるかね?」

>

> 教官は隣で黙って立っていた長い髪の事務官兼秘書に話しかけました。

⇒これ、とくに問題がない文章です。しかし、ワンランク上の文章にしたい場合、少し工夫する余地があります。

 それは「教官が会話文で話している」内容をカギカッコで書いているので、続く文に「話しかけました。」と書くとややスマートさに欠けます。

 スマートさを出すには、たとえば後文を以下のように改めます。

> 教官は隣で黙って立っていた長い髪の事務官兼秘書に目配せした。

⇒こうすると「話す」という行為は直近でひとつだけになり、別の動作が入るため限られた文字数を最適化するのに役立ちます。

 ただ、教官が顔を向けてもおらず、ただ言葉で「アリス、君からみんなに何かあるかね?」と言って、正面を見据えたまま話しているのであれば、「目配せ」は適当ではないでしょう。

 その場合は「長い髪の事務官兼秘書に促した。」としてみましょう。

 こちらは合図ではなく雰囲気で「さあ話して」と伝えているので、この場の雰囲気に合うと思います。

 教官がどのような動作をしたのか。しなかったのか。

 それを受けて適切な動詞を選び出してみましょう。そうすれば「話すこと」を意味するカギカッコの近くに「言う」「話す」「語る』「告げる」「述べる」などの重複表記が格段に減って情報量がさらに増えます。



>事務官兼秘書はメガネを直しながら手元のファイルを開いて、ひとつずつ確認事項を声に出していきます。

⇒ここはイメージの問題です。「メガネを直しながら」「手元のファイルを開いて、」「ひとつずつ確認事項を声に出していきます。」これを額面通りに受け取ると「手元のファイルを、メガネを直しつつ開いて、ひとつずつ確認事項を声に出していきます。」なのか「手元のファイルを開いて、メガネを直しつつひとつずつ確認事項を声に出していきます」なのか。おそらく語順から前者だと思うのですが、今ひとつ決めてに欠けるのは、助詞「を」が一文に3つ出ているからです。

 ただ、これは致命的ではありません。少なくとも最後のひとつは読点の先にあるからです。重文の形ですね。これで前半のふたつの助詞「を」をどうにか処理できれば、よいとわかります。

>事務官兼秘書はメガネを直しながら開いた手元のファイルから、ひとつずつ確認事項を声に出していきます。

 構文としてはこれが最適解なのですが、問題は、これだと文としては完璧であっても、今ひとつリズム感に乏しく感じられると思います。

 そこでリズム感を出したい場合は、原文ママが最適解になります。

 助詞「を」を三回リズミカルに韻を踏むことでリズムを生むわけですね。多少意味がとりづらいところはあるのですが、リズム感がよいので読み手の心にはすんなり入ります。正しい状況からは少し外れますが、とくに問題はないでしょう。

 ですので、完璧な文を作るか、リズム感を出すのか。

 ゆうすけ様の企み次第で選んで結構です。



> 教官から引き継いだ事務官兼秘書の言葉に、見習い天使たちの「おお、エーフォンのプロマックスもらえるんだ!」「やったー!」「教官、太っ腹―!」というどよめきと歓声で教室が埋まります。

⇒ここは「教官から引き継いだ事務官兼秘書の言葉に」と書かなくても意味は通じます。

 今の形はちょっと蛇足を感じてしまいます。とくに「教官から引き継いだ」はすでに説明されているため不要です。直前のセリフが誰なのかが明確でない場合を除いては、「事務官兼秘書の言葉に」も説明が過ぎるかもしれません。

 ゆうすけ様のレベルであれば、ここはあえて省いてしまったほうが、物語がよりスマートになってレベルが上がると判断しました。とくに続く文が

>事務官兼秘書はダンボール箱から箱を取り出して「出席番号順に取りに来てください」と見習い天使たちに声をかけました。

⇒とあり、「事務官兼秘書」の単語が狭いところに頻出するので、少し単調さを感じさせる可能性があります。ちなみに「段ボール箱から箱を取り出し」と書くと「箱」が近いところに出てくるので、ちょっと損していますね。「段ボール箱」は直せないで後ろの「箱」を調整します。たとえば包まれていれば「包みを取り出し」とする方法。「化粧箱」と具体性を高めて差別化を図る方法があります。日本でも学校からの配布物は包みなどに入っておらず、製品の入っている化粧箱ごと配るんですよね。そうすれば「箱」が近いところで目立ってしまっていますが、「段ボール箱から化粧箱を取り出し」とすれば、「段ボール箱から段ボール箱が出てきた」ようなマトリョーシカ状態は回避できます。

 さらに「事務官兼秘書」は名前がアリスであると教官が述べているので、近しいところに「事務官兼秘書」が出てきて嫌な場合は「アリスは段ボールから〜」と書いたほうが良いでしょう。ただ、ここで「アリス」がそれほど重要な役割を担っていないのであれば、「事務官兼秘書」で押し通してもかまいません。


>〜みなさんには天上界直通スマホ『エンジェルフォン13プロマックス』を一台ずつ支給します」

>〜

> 見習い天使たちの「おお、エーフォンのプロマックスもらえるんだ!」「やったー!」「教官、太っ腹―!」というどよめきと歓声で教室が埋まります。事務官兼秘書(アリス)はダンボール箱から化粧箱を取り出して「出席番号順に取りに来てください」と見習い天使たちに声をかけました。



> 教室には今度は「えー」というブーイングすれすれの不満声があふれました。

⇒スマートな文章でいえば以下のようになります。

> 今度は「えー」というブーイングすれすれの不満声が教室にあふれました。

⇒ですが、原文でもとくに意味がおかしくなるわけではないので、少し婉曲でも原文ママでかまいません。



> 見習い天使たちの返事はどこか不満げです。せっかく人間界に降りれたのに天上界に呼び戻されるなんて鬱陶しくていやだ、というのが見習い天使たちの本音でしょう。

⇒「ら抜き言葉」です。「せっかく人間界に降りられたのに」ですね。



>そのスートゥニュ・アントゥールナン・ターンを途中でやめて、〜

⇒Googleさんに問い合わせたところ、基本は「スートゥニュ・アン・トゥールナン・ターン」のようです。しかし「スートゥニュ・アントゥールナン」と記載しているページもあるので、完全に間違いというわけではありません。



 見習い天使たちが人間界へと舞い降りって行った後には、静かな空間だけが残りました。

⇒「舞い降りて行った後には、」ですね。



※構造と展開について

 ですます調で書かれているため、優しさに満ちた世界が表現されていますね。

 まずは天界からスタートし、主人公ユアも天界を旅立つ場面を描写。

 プロローグにしていますので、当面天界を舞台にすることはないのかなと判断できます。

 今はただ純粋で優しい世界ですが、これがどう変わっていくのか。

 人間界の垢にまみれて、変わっていくのかもしれませんね。


 よいスタートが切れたと思いますよ。



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