第4話 AI盗作疑惑事件よりも別件が…

「えっ?」

「どーも…っす」

 僕は固まった。

 

 AI盗作疑惑事件対策会議として二人で会おうと決めた。

 そして、朔夜さんも大学は関東の大学に来たという話で、二人で飲食を取りながら、話してもいい本屋さんの前で待ち合わせをしたのだが。


「さくや…さん?」

「そう、朔夜だ…よ」

 彼女が上目遣いで僕を見て来る。僕は男だと思っていたから、そんなにおしゃれもせずに来たが、朔夜さんはしっかりとオシャレをしてきていた。


「かわ…いい」

 思わず声が漏れてしまった。そして、なんか小説のことなんてどうでもよくなった。


「あ~、ダメダメ。ヤメヤメ」

 朔夜さんは綺麗に整えてあったショートヘアーの自分の髪をくしゃくしゃっとする。

「あぁ~ん、もったいない」

「うっさい。早く始めるぞ」


「その目、やめい」

 僕が肩を落として、彼女を見ていると、怒るので、渋々従う。




「こほんっ、ではさっそくAI盗作疑惑事件対策会議を始めるぞ」

「はい」

 飲み物を飲みながら、僕は返事をする。


「我々の取る行動は戦うことだ」

「う~ん、難しいんじゃないかな。一応僕、法学部だけど多分無理だと思うよ」

「なっ、斉藤さん。頭良かったのか」

 朔夜が驚く。驚いた顔もかわいいが…。


「失礼だな、それなりには頑張ってます」

「いや、それにしては、ぶっ飛んだ内容を書いてるなと思ってな。しかし、納得だ。たまに堅苦しい文章が続くのが…」

「ごほん、ごほん。今日は僕の作品についてのディスカッションじゃないだろ?朔夜さん」

「あぁ、すまんすまん。衝撃的なことが起きて…つい」

「いや、僕の方が驚きだからね?朔夜さんがこんなかわいい女の子だったなんてさ」

「かわいいとか、付けるナシ…」

 照れて目線を逸らす朔夜さん。


「その、小さい頃は男子に混ざって悪さばっかりしている女子だったんだが、いつの間にか男子が優しくなりだして、アホナことも一緒にしてくれなくなってな…」

「あーー」

 皆が朔夜さんを異性と気づいてしまったのか。なるほど。


「話を戻そう、じゃあどうする」

「まぁ、嫌なら、他のサイトに移ってもいいけど…」

 僕は周りに目をやると、『初。AIが創り出した最高のファンタジー!!』とでかでかと書かれたポスターが張っており、その本を取っていく人が何人もいる。


「そんな逃げの一手は嫌だ」

「だろうね…じゃあ、勝つしかないんじゃない?なんなら、せっかく二人で会ったし、二人で作品でも作ってみる?」

 僕はストローに口を付けようとする。

「それだっ!!」

「ぶふっ」

 急に立ち上がり、身を乗り出して来る朔夜さん。僕は驚いてジュースをこぼしそうになる。危ない、本は無事だ。



「ほんき…なの?」

「あぁ、本気だとも、斉藤さん。俺とあなたならやってできないことはない!!」

 拳を固めてギラギラした目で上を見る朔夜さん。

 

「どっちも、コンテストも書籍化もダメで、リワード報酬すらぎりぎり取れてき始めたレベルなのに?」

「奴の所持するビックデータよりも、俺は斉藤さんのうじうじした奴らが出てきて、まどろっこしい、時々眠くなる本が好きだ」

「えっ、それは睡眠促進にいいってこと?」

「…」

「えっ、ちょっと答えてよ」

 僕が手を振っても決して、目線を下げない朔夜さん。


「とにかくっ。私と斉藤さんでAIの面白くても心に残らない作品。ぶっつぶそうぜ」

 彼女は右手を差しだして僕を見る。僕を最高のパートナーであるかのように信頼しきった目で。


 僕の得意分野は異世界ファンタジー、朔夜さんの得意分野は現代ファンタジー。

 そして、二人とも短編が得意。

 でも、書籍化するなら長編だ。

 

 AI初の書籍という話題性だけで購入している人もいるくらい強力な作品。

 それに負けない作品。


「やるからには…書籍化して…ファンタジックアヴェンジャーズの売り上げ越すよ?」

 僕は手をの握った。


 でも、きっと僕らなら造れる。

 

 ———最高の作品を。

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