第3話 クリエイターを蝕むモノたち
———数日後。
ピコンッ
『会えなくなりました』
「えっ。じゃあ、再来週でも、っと」
『…リワードが消えました』
『えっ』
『どういうこと?』
焦りながら連続コメントを送る。
『俺…ちゃんと読んでなかったんですけど、リワードって1年で消えるみたいです』
(リワードが…消える?)
僕は急いでヨムカクのサイトを開き、注意事項を見る。
第6条(ヨムカクリワードの有効期間等)
ヨムカクリワードは、付与された日から12か月間に限り、有効とします…
(そんな…)
「でっ、でも…」
『来月なら貰えるんじゃないかい?今月たくさん書けば』
『だめなんです。テストとか、大会とかがある月で…新しいもの書けないんです』
僕は言葉に詰まった。同志であり、後輩のショックで僕に連絡してきたのに、何もできないなんて…。
ピコンッ
『俺の…屍を超えて行ってくれ。斉藤さんは僕の分までリワードを!』
その上、この無能の頼れない僕が慌てふためいてるのを見透かし、元気づけるスタンプが送られてくる。
『わかった。じゃあ、僕がリワード取ってそれでひつまぶし奢るよ!』
目を燃やすスタンプ。
涙を流しながら微笑む女性のスタンプが返ってくる。
『ヨムカクにリベンジだ』
『作品は読ませていただくんで、期待してます』
しかし、僕も言い訳がましいがテストやバイトでトラブルがあったりして、書く気分になれず、ろくなアイディアが出ずに条件を達成することができなかった。僕も朔夜さんに謝ったが、気にしないでってすぐに言ってくれた。
『クリエイトって、アイディアどんどん無くなってくな』
『あぁ、自分の最高だと思ったものを作品、アイディアをどんどんつぎ込んでいくもんね』
『よく、好きなアーティストのCD買ったときにコレジャナイ感の歌が入ってるのもわかりました』
『あっ、僕もわかるかも。僕もだけど朔夜さんもたまにコレジャナイ感の作品作ってるし』
ガビーンのスタンプが来る。
『まぁ、俺らが5分ばっかの作品書きすぎなのかもしれねーけどな』
『そーですね。でもアイディアがどんどん沸いてきちゃうでしょ?』
『なっ!!』
勇者がウインクしてグッドポーズしているスタンプ。
『今回は忙しくて、ダメで斉藤さんに申し訳なく思ってますけど、やっぱり生み出たアイディアたちはしっかりと世に出してあげたいしね。不出来であっても愛する作品だから』
『ふふっ。また、半分丁寧語になってますよ?朔夜さん』
なっ、っとびっくりするスタンプが来る。
『なんか、お母さんみたいですね、朔夜さん』
ピコンッ
『俺は勇者だぞ?子どもたちを大切にする気持ちは母より深い』
僕はグッドポーズしているスタンプを送る。
『でも、朔夜さん。僕大好きです』
『んだよ、いきなり。キッモ』
『朔夜さんが考えるアイディアもだし、登場人物の考え方とか表現。朔夜さんらしさがあって。その必死に生み出した分なんでしょうね、愛情を感じますもん』
凍えそうなスタンプが来るが無視する。
『朔夜さんも僕も文章構成とか下手クソなのさえ、克服すればトップ取れますよ!!』
既読になるが返信が無く、寂しく感じる。僕はしばらく見てたが、スマホの画面を消す。
ピコンッ
『ありがとうな。斉藤さん』
こうして、僕らは小説家としてようやく結果を出せそうになったが、クリエイトの様々な難しさにぶつかった。けれど、これは大きく飛躍するためのステップだと理解した。
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