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「私は、要塞管理用自立思考プログラム、アリアドネです。今から1500年前に、この惑星カリオラにて作られたAIです。」


「惑星で作られた…か。では僕達の文明とは無関係という事か?」


 マザーコンピューターであるアリアドネを防衛していた設備は、イクスの手により無力化されていた。残された要塞管理AI・アリアドネはシャイニングのハッキングを受けその機能を奪われ、イクスに服従する形となっている。


「君は何のために、誰によって作られたんだ?」


「第2カリオラ歴1500年、相次ぐ国家間の資源争奪をかけた紛争や戦乱から脱するため、この星の国々は統一国家の建設を急ぎ、私は統一国家の象徴として作られました。統一国家の象徴として、惑星カリオラを安定へと導くことが私の役割でした。」アリアドネは淡々と話した。


「ではなぜこの星では戦乱が続いている?統一国家の誕生でこの星はまとまったのではなかったのか?」


「統一国家が形成された後も摩擦は解消されることはなく、人々は戦争行為から抜け出すことはできませんでした。これには地理的要因や歴史的要因、様々な事象が複雑に絡んでおり、解決はできませんでした。この頃から、被害や損耗を最小限に抑えるため、戦争はAIによる代理戦争へと姿を変えていきました。AIによる代理戦争は、政治的摩擦を解消し、人々の闘争心をコントロールするための主な手段となりました。」


「それで、君はどうしたんだ?」


「私はこの惑星の安定という目的を達成するため、戦争を支配しコントロールしていくようになりした。私にはそれを可能とする機能が備わっていました。」


「そして戦争だけじゃなく、惑星そのものを支配するようになったって訳か?それがこの星の現状?」


「戦争の効率化と社会的摩擦の軽減のため、私はこの惑星から国家の枠組みを外す事が、惑星の恒常性維持に必要だと判断しました。この惑星に住む全ての住民は、機械により管理されています。」


「全てAIの仕業だったという訳か…」




 そそり立つ人工知能アリアドネの格納される堅牢な防壁に、マリーの相手をしていたZX248が投げつけられた。金属同士のぶつかり合う激しい音が鳴り響いた後、黒い機体はその場に崩れ落ちた。


「大体の情報はこいつから聞き出せたよ。私たちとは似て非なる物だったな。で、この後どうするんだい?優等生。」

 

 事の真相が分かり、納得がいき熱が冷めた様子で、マリーはイクスに問いかけた。この場においては、二人が戦う理由は無くなっていた。


「結果を報告するだけだろう。この星は宇宙探索の中継点にもなり得る。様々な役割を果たしてもらわなければ。」


「ふん、この星の奴らは私たちに戦争の肩代わりをさせるつもりだったんだ。まあ種が分かった以上さすがに戦乱は収まるだろうが、私たちの戦いが終わった訳じゃない。」


 事実として、これから先、2人の母星であるオリジナル1は二つの政府が競い合うようにして惑星カリオラ(オリジナル1からはインセンリー77と呼ばれている)に干渉していく事が予想された。また、両政府にとってSOOは力の象徴でもあるため、イクスとマリーの保つ緊張状態は重要な要素になるに違いなかった。


 その後、惑星カリオラでは、地形的要素や、考古学研究から導き出された歴史的背景などから、国家の枠組みが再び形成される事となる。宇宙から使者を呼び寄せ、新たな可能性を手にした惑星は、今一度未来へ向けて歩みを進めるのであった。

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