第149話 運命共同体

 通されたのは、以前とは異なる場所。


 ミランダ王女の自室だった。



「どうぞ、お入りになって」



 初めて訪れたミランダ王女の部屋は、一面が薔薇色の壁紙で覆われ、豊かな風景画が配置よく飾られていた。


 ところどころに生花が活けられ、溢れんばかりの花の香りで満たされている。


 豪華な絨毯も調度品も、絵に描いたような王女ぶりで、フリルやレースがふんだんに使われたものだった。



 フィルメラルナは、眉をしかめていた。


 どことなく違和感を感じずにはいられないのだ。



 この部屋が、作り物めいていて。



「ふふふ。おかしな顔をしているわね。イルマルガリータの遺体を手に入れて、あなたもやっと、あのの暗示が解けてきたのかしら」



 くすくすと鈴を転がすように笑うミランダは、ディヴァンに腰掛け、艶々と美しい鳶色の髪を弄っている。



「立ち話もなんでしょう。座ったら?」



 コクリと頷き、フィルメラルナはミランダの正面の椅子に腰掛けた。


 膝の上に、小箱を抱える。



「それがイルマルガリータなのね。なんてこと、本当にあの娘は死んでしまった! 頭で分かっていても、こうして遺骨を目の当たりにするのは辛いものね」



 紛いなりにも、小さな頃からお互い意識しあって育ってきた仲なのだ。


 ミランダは酷く眉を寄せ、辛そうに小箱を見つめている。



 それは、嘘偽りのない真実の感情なのだと感じられるものだった。



「ミランダ王女、あなたにも、これがイルマルガリータ様だと……分かるの?」


「もちろんよ、わたくしたちは共闘していたの。いわば運命共同体。ただ違うのは、イルマルガリータが死を選び、わたくしは生きているという点だけ――」



 長い髪を弄ぶ手を止めて、ミランダは身を乗り出した。



「ねぇ、そろそろ思い出したんじゃない?」



 好奇心の目が、フィルメラルナを見つめる。



「ええ、そうね。全てかどうかは分からないけれど」


「それで、どう思ったの?」



 さらに身を乗り出すミランダ。


 今日の赤いドレスと見事な赤褐色の髪、そのコントラストが、なぜだか魔女のように感じられてしまう。


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