第十四章 目録士ヘンデル・メンデル
第126話 歴代の神妃について
軽やかなノックの音に続いて、神妃の部屋へ二人の男が入室してきた。
「やぁ、久しぶりだねぇ。〈聖見の儀〉以来だろうか。あの時は大変だったね、神妃交代などなにしろ初めてのことだから、民衆もよほど驚いたのだろう。次回はもう少し落ち着いているとは思うけれどね」
相変わらず気怠い物腰で言うヘンデルだが、今回は鉛色の彼の瞳が、どこか喜色を帯びているように感じられた。
「ヘンデルどの、あの儀式は暫くの間行う予定はありません。少し状況が落ち着くまでは」
「あぁ、そうだったね。まぁ、時間の経過が問題を解決し、人の心を落ち着かせるものだから、気長に待つことだ」
慰めらしき言葉をかけて、珍しく部屋のディヴァンに腰掛けた。
侍女に茶の準備をさせると、三人は向き直る。
「なんでも、イルマルガリータの故郷について知りたいんだって?」
「ええ、というか、これまでの神妃について教えて欲しいの。わたしはあまりにも、彼女たちの歴史を知らなすぎだと思ったので」
あからさまにイルマルガリータの故郷リクヴィルについてだけ問うより、この方が自然に思われた。
それに、歴代の神妃について、真の姿を知りたいと思う気持ちが強いのも事実。
蒼玉月との関係も気になっている。
「私も神妃については、イルマルガリータ様しか存じません。彼女のような存在が持つ力と、そして――気性的な危うさについても、ヘンデルどのに伺っておく良い機会だと思ったのです」
エルヴィンも真摯な態度でそう請うた。
二口ほど紅茶を啜ったヘンデルは、ふぅと浅い息を吐いた。
「なるほど。表向きの神妃は正に清廉潔白。神の依代として人々に認知されているからね。実物との差が気になるわけかね」
フィルメラルナとエルヴィンは、揃ってコクリと頷いた。
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