第119話 同じ穴のムジナ
「ふふふ、素直な人は好きよ。だから特別に、もう一つ教えて差しあげるわ。誰も知らないことだけど、イルマルガリータとわたくしは、とても仲が良かったの」
「えっ……」
フィルメラルナは瞳を激しく瞬かせた。
神妃と王族は犬猿の仲であり、特に王子と王女は、イルマルガリータに度々嫌がらせをしていたと聞き及んでいる。
「それはそれは驚きよね! 王宮は神殿を公然と保護しているけれど、誰が見たって実際は激しく対立してるんだもの。この世に神妃は必要だけど、王宮より神殿が力を持つなんて許せない、って王侯貴族はみんな思っているわ。そんな中で、王女と神妃が秘密裏に友情を育んでいたなんて、誰も想像しないでしょうから。でも真実よ、同じ穴のムジナなのよ、イルマルガリータとわたくしは」
なんだろう。
何か今、フィルメラルナの感性に引っかかるものがあった。
けれど、それはほんの一瞬だけで、すぐにかき消えてしまう。
「さぁ、ここに隠し扉があるわ。この先に面白いものがあるのよ」
小部屋の片隅に設えられている、鏡を指差す。
全身を映すことができるほど大きな縦長の姿見の端を、ミランダの細く美しい指が押す。
すると、何か引っかかっていたものが外れるような音がして、鏡の片側が前面へと浮き出てきた。
スッと空気が流れるのを感じた。
ここに、隠し通路があるようだ。
「心配なさらずとも、わたくしが先に入るわ。あなたは後ろからついてくるのよ、手を引いて差し上げるわ」
そう言って、ミランダは徐にフィルメラルナの腕を掴む。
そして引きずるように鏡の横に入り込み、内側から扉を引いて閉じてしまった。
中は真っ暗だ。
通路の幅も奥行きも、何も見えない。
しかし、ミランダの進む足に迷いはなく。
フィルメラルナが恐怖を感じるより早く、歩き出してしまう。
ほんの数十秒ほど移動したところで、前を歩くミランダの足がピタリと止まった。
暗がりの中でカチカチと何やら操作したようで、忽然と出口が現れた。
視界に溢れる光に目を細める。
慣れてきた双眸が捉えたのは、一面の「緑色」。
その光源に圧倒されながら辿り着いた場所で、フィルメラルナは絶句した。
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